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ゴキブリの逆襲

 俺って嫌われ者なんだ。見た目は黒光りしていて、触角は長いし、歩く時はカサカサッて音立てるし、たまに飛べば、ほとんどの人間が悲鳴をあげる……。


 別に何も悪気はないのに、ただ食べ物を求めて歩いているだけなのに、俺を見つけると人間は、逃げるか変な薬をかけるか、何か物で叩きつぶそうとする。俺って結構しぶといから、即死というのはめったにないんだ。だから、どうせ殺すなら瞬殺してほしい。それがせめてもの救い。


 俺の死に方に餓死というのは、ほぼないんだ。人間の髪の毛一本で約三ヶ月ぐらいは生きられるからね。でも、やっぱり油が一番大好き。だから、台所がよく行く所。ここはなぜか油が多いんだ。死んだ親父が教えてくれた。


 親父は死ぬ間際に、俺にこう言った。


 「お母さんを頼むぞ!」


 そのお母さんも昨日、人間に殺された。


 俺ってなぜ嫌われているのかな?



 「汚いからじゃないの?」


 その声がする方を見上げると、若い人間が立ち尽くしていた。


 「俺の言葉がわかるのか?」


 俺は初めての体験に少し動揺した。


 「その台詞はどっちかというと、こっちの台詞だけどな」


 人間はそう言って、しゃがみ込んだ。


 俺はその不思議な若者にこう言った。


 「お前は、俺が怖くないのか?」


 「全ての人間がゴキブリを怖がっていると思うなよ」


 人間は少し苛立っていた。俺はこの際だから、この人間に言いたいことを言うことにした。


 「俺からしたら、人間の方がよっぽど汚いし、醜い部分がたくさんあると思うけどね」


 人間は頭をかきむしりながら、椅子に座り、何かを書いていた。


 「人間の掌の方が、俺の体よりもたくさん雑菌が付いているんだぞ!」


 人間は何も言わずにひたすら何かを書いている。


 「俺の甲殻は放射能も防げるんだぞ! 凄いだろ!」


 「…………」


 「おい、無視かよ」


 「ダジャレか?」


 「ダジャレってなんだ?」


 そんな感じの他愛のない会話が数回続き、俺は最後の質問をした。


 「どうして、お前ら人間たちは俺達を毛嫌いするんだ?何が気持ち悪いんだ?答えてくれ」


 人間はまた何も言わずに何かに没頭している。


 俺はイライラしてきた。ゴキブリだからってなめるなよ。そんな怒りの気持ちが、だんだん抑えられなくなり、俺は久しぶりに羽を使った。そして、人間の方に向かって行った。その瞬間、人間が俺の視界から消え、横に顔を向けると人間が何か長いモノを持ちながらこう言った。



 「それが気持ち悪いんだよ!」


 ーパンッ


 完

なんだかんだ言っても、気持ち悪いものは気持ち悪いです。ごめん。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして人間と和解するハッピーエンドかと思ったら、やっぱりこうなるんだと笑っていしまいました。とても面白かったです。
[一言] 彼らに悪気はないのかもしれませんが 勝手に住居に侵入しては人々を怖がらせ、私事ですが朝起きたらズボンの上へ這い上がっていた時は思わず悲鳴を上げました。 目の前に現れなきゃ殺しはしないんです…
[一言] 面白かったですが、ヤツらには容赦などしない。だって噛むんですもの。
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