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お誘い

こんにちは、楽しんでもらえたら幸いです。

「あの、よかったら一緒にバーベキュー行きませんか?!」



ありさはすべての勇気を振り絞って言った。




「え?俺?・・・・・う、うん。行く。行くよ。」




ありさに声をかけられたコウもまんざらではない様子。


ありさたちの通う大学にはアウトドアサークルというものがあり、それに入っている者が入っていない異性をサークル活動に誘うと、それは自分と付き合うことを考えてほしいというサインになるのだ。

そこの大学に通う者はみんなそのことを知っている。だから、そのサークルに入るというのは、彼氏彼女を作りやすい、という意味になるのだった。


しかしながら、ありさは別である。

友達の瑠夏に誘われ、アウトドアが好きだからという単純な理由で入り、そのあとその裏の意味などを知った。


航は一つ上の先輩で、フットボールサークルに入っている。

ありさは入学してから航にずっと憧れてきた。

そこで、勇気を出して誘ったのだった。




「ありがとうございます!じゃあ、これを!」



ありさはポケットの中からチケットを取り出すと、二枚分航に渡した。

一人で来るのが気まずいという人用に二枚渡すのが普通だからだ。

ありさは航に軽く頭を下げると、ルンルン気分でそこを後にした。




---------------------------------------------------------



「ありさ~、渡せたの?」



ありさの親友、瑠夏がにやにやしながら問う。

ありさが相当の奥手で、渡せていないという返事が返ってくるのを見越して言った言葉だ。

それなのに、



「うん!来てくれるって!」



なんとありさは渡していて、その上了解の言葉までもらっていた。

瑠夏は驚いて口に入れようとしていたチョコレートを机の上に落とす。



「えっ?何?」


「だから、来てくれるって!」




どうやら聞き間違いではないらしい。

瑠夏はありさの顔をじーっと見た。


ありさは背中の中ほどまであるこげ茶色の髪の毛の先をお嬢様風に大まかにパーマをかけていて、洋服はOL風。顔は相当な美人でもものすごく可愛いというわけでもない中の上といった感じで、でもどこかしら色気がある。


しかしながら、体型が非常に残念だ。

本人運動することがあまり好きではないらしく、少し太っている。

もちろんドラム缶のような体ではないが、他の日本人女性と比べると、大柄だな、と感じる程度だ。

ありさの周りにいる子たちはそんなところが可愛いと思って一緒にいるのだが、いかんせんありさ本人はそのことを気にし過ぎて消極的。

男子には自分からは絶対に話しかけないし、放しかけられたら一応対応するものの、目もあまり合わせずびくびくしている。(そのことが男子の中で可愛いと思われていることも本人は知らない。)




「本当に?ありさ、誘えたの?無理って言っていたじゃない!すごいわね!ありさよく頑張った!!」



ぷくぷくしているありさを抱きしめるのは、細身でモデル体型の瑠夏。

ありさとは大学に入ってから知り合った、同じ学部、同じサークルの一年生。

小学校のころから美容に興味があり、自分磨きに専念すること10年余り。自分に自信を持っている、合コンで一番もてるタイプの子だ。

対照的な二人だが、二人ともお互いを何でも話せる親友のように感じていた。



「えへへ。」



ありさがもっちりとしたほっぺをピンク色にしながらほほ笑む。

瑠夏はそれを指でぷにぷにと触った。



「ならよかったわ!バーベキュー、がんばって告白するのよ?!一世一代の大舞台よ!」



瑠夏がえいえいおーと手を挙げるが、ありさは首をかしげた。



「え?告白はしないよ?」


「・・・は?」



行き場のない突き上げた手を下し、じゃあ、なんのためにバーべキューに誘ったの、という質問を瑠夏は飲み込んだ。

きっと、この消極的な友人はあこがれの先輩を誘ったという事実だけに満足しているのだろう。



「私、誘えただけでいいの。あんまり、付き合いたいとか思わないし。」



まぁ、確かに恋愛経験値0のありさがあのモテ男を最初の彼氏にするのはハードルが高い。きっと瑠夏以上の美女がたくさんいて、自信のないありさなんてすぐに蹴落とされてしまうにきまっている。

瑠夏は、そっと溜息をついた。



「そう、それならいいけど。でも、彼氏がほしくなったら、ちゃんと私に言うのよ?私が選別した男を見つくろってあげるからね。」



はたからきくと、なんて上から目線なのだろうと思われる言葉も、ありさにとってはありがたかったらしい。

ありさはありがとう、と笑ってお茶を飲んだ。

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