夜 瑠夏side
今回は初めての瑠夏sideです。
いよいよクライマックスです。
お付き合いください。
肝試しから帰ってきたありさは、どこか幸せそうにふわふわしていた。
瑠夏はその原因に思い当たる。
もしかして・・・
「ありさ、航先輩に告白した?」
しないとは言っていたけれども、もしかしたら雰囲気に流されてしたかもしれない。
吊り橋効果という言葉もある。
あこがれの航先輩と付き合えたからここまでふわふわしているのか、と思いきや。
「え?ううん。してないよ。」
瑠夏はその返事に脱力した。
なんだ、やっぱりか。普段の性格とは裏腹にやるときはやる子なのでもしかしたら、と思ったのだが、違うようだった。
「じゃあ、なんでそんなにうれしそうなの?」
「え~っとね、肝試しの間、ずっと航先輩と手をつないでいたの!大きかった~手。私の手なんか覆っちゃうんだよ。」
ありさはうっとりとした様子で航とつないだ右手を見る。
瑠夏は内心ため息をついた。
なんだ、手をつないだだけか・・・。
実際、瑠夏は幼いころからもてたので、小学校5年生の初彼氏から10人ほどの男と付き合ってきたが、手をつなぐのなんて当たり前だった。
いまどき、小学生でも、付き合っていなくてもそれくらいはする。
「そうなの。・・・で?他にはなかったの?」
「え?うーん・・・あっ!そういえば、途中で先輩が私のことじーっと見たから、どきどきしてるのばれないか不安だった。」
それ、告白を促されていたんじゃないの・・・?
鈍い友人にあきれてしまう。瑠夏だったら、そんなチャンスを絶対に逃さなかった。
というより、ありさは無意識にその雰囲気をスルーしているのかも。
「へ~。あら、もう11時になるわね。ありさ、お風呂先入ってきたら?」
「いいの?じゃあ、お先に~」
ふわふわとした足取りのありさは、着替えとタオルを持って部屋に備え付けの浴室へ向かった。
まぁ、初心者のありさにはそれくらいが妥当かもしれない。
それにしても、そこまで行くなら航先輩からありさに告白すればよかったのに・・・。
瑠夏はありさを待つ間、ベッドに横になって携帯電話をいじっていた。
可愛い洋服が通販であったのよ・・・・そうそう、これこれ。
普通お店で買ったら1万はするはず。そしたらこの7000円というのは破格はのだけど・・・。でも買う決心はつかない。
買うべきか、買わないべきか。
ベッドの上を転がりながら考えていると、携帯電話から陽気なメロディーがながれた。
電話だ。
「・・・・もしもし?ああ、玉城さんですか。こんばんは。・・・・・・・・・いませんよ。今はお風呂です。・・・・・・・・・ええ、知ってますよ?ありさは航先輩に告白する気はないらしいですから。・・・・・・・・もちろんマジですよ。航先輩がどうかしたんですか?・・・・・・・・・ああ、なるほど。・・・・・・う~ん、わかりました。連れていけばいいんですね?はい。・・・・・・・・わかりました。はい。いえ。・・・・・・・では、また。」
ぷちっと通話を終了した瑠夏はほくそ笑む。
ありさ、ここまで周りが応援してあげているのだから、絶対に告白しなさい。
いや、もうこの際航先輩でもいいわ。
どちらかが告白すれば、断ることなんてないんだから、絶対に今夜中に付き合ってよね。
あとは、ありさを待つだけだった。