ブロック3
「D.J.コウのクリスマスナイトショーウ! さきほどのハルとアキさんですが、やはり文句を言い合っているというか、状況は変わっていないようですね……まあ、いつものことなんでほっときましょう。
では、気を取り直して。次の方、どうぞ」
「……こんばんは」
「…………」
「あの、すみません?」
「……はっ! あ、失礼。思わず見とれてしまいまして。いや、なんというか服装がキラキラしていて……凄いお嬢様が来てしまった感じです。あの、お名前聞かせていただいてよろしいでしょうか」
「あ、はい。薪口と申します」
「薪口さん……って、なんだかどこかで見たようなお名前のような気がしますが……えっと、まさかとは思いますけど、住宅街のど真ん中の、まるで要塞のごとく構えている家の方では……」
「そ、そうかもしれないです。すみません」
「いや、謝ることではないですが……そうですか、やはり私の見る目に狂いはなかったようです。さすがかわいらしいですし……と、個人的にブースからの刺すような視線に耐えられなくなってきましたのでこれくらいにしておいてですね、何か悩みがあるのでしょうか」
「私、今ある男性と……その、デートっていうんでしょうか、してるんですけど」
「うわ、なんといううらやまし……もとい、幸せな男でしょう。今の発言によって後で私がシバかれることが確定した以外、何の問題もなさそうですが」
「いいのかなって」
「え、何がですか」
「もともと私が、その人とどうしたらお話しできるかなって思って、その人の家だけにお仕事の募集という形でチラシを入れてみたんです。そうしたら来てくれて」
「なんともお嬢様っぽい考え方ですね」
「あ、もちろんその人とお話ししている間にこんなのいけないって考え直して、私の気持ちも伝えたんです。それでも、こたえてくれて」
「ほう、ますます何にも問題ないと思いますが」
「私のお願いはお話ししてくれることだけだったのに……いろいろしてくれるんです。手、にぎってくれたりとか、私が熱っぽくなった時も、額同士をくっつけて心配してくれたりとか、私ばかりが幸せでいいのかなって。何も返せていないのに」
「ノロけているようにしか見えません。更に問題ないと思うんですが」
「彼が何も望んでこないんです。最初は契約みたいなものから始まってますし……報酬っていうのも変ですけど、私が何をお返しすればいいかわからないんです」
「な、なんでしょうこれ。お嬢様・健気・一途・純粋・鈍感のロイヤルフラッシュですか? ……はは、あまりにまぶしすぎて自分でも何言ってるのかわからなくなりました。えっとですね、薪口さん」
「はい……」
「今薪口さんが彼にしてくれたことを話してくれましたけど、あなただけではなく、おそらく彼もしたいと思ってやっていることですよ? みんなその話を聞いたらそう言うと思いますが」
「そうなんでしょうか……でも、やっぱり」
「わかりました。それでも納得していただけないのなら、クリスマスだしこう言えばいいと思います。『今夜は私をプレゼントしたいの、どうか受け取ってください!』なんてね!」
「………………」
「え、えっと、誰か反応してくれる人はいないんですかね。ベタだしさすがにお前が言うと引くわ、みたいな顔が並んでいて泣きそうなんですが」
「わ、わかりました。あの、やってみます」
「え! あ、いや、薪口さん? 今のはほんの冗談のつもりで」
「私がんばります! 今までいろいろしてもらったので……今度は私の番なんですよね!」
「こ、これでよかったんでしょうか。なんだか私だけ、いろんな意味で損しかしていない気がします。というかこれ以上彼女が何をするのか考えただけでも身悶えしそうですが……薪口さんには私の身を削りまくったアドバイスをプレゼントしました、ううっ。
では、何度目かわからないですが気を取り直して……ほとんど自分に言い聞かせていますが、次の方お呼びしましょう。こんばんは」
「こんばんは……」
「ちょっと消極的っぽい女性ですが……名前と年齢を」
「あの、名前は伏せさせてください。高校二年生です」
「何をするにもいい時期ですね。でもここにいるということは何かお悩みですか」
「あの、わたし。一応彼氏持ちなんですけど」
「はい」
「アイツがずっと邪魔してくるんです。このままじゃ彼に会えないです……もうどうすればいいのか」
「おおっと……このクリスマスナイトショウ始まって以来の重たいテーマがついにきてしまったようです……それで、邪魔してくるヤツっていうのはどういう?」
「彼のことをまともに見られなくなるくらいにまで……きっと、わたしが汚い手を使っていたから……うう……」
「え、ちょ、泣かれてしまうと困ります! あ、いや、どうしましょう?」
「ご、ごめんなさい! 全部わたしがいけないんです。今さら薬を使ってもすぐには治らないのはわかっていますから……自業自得なんです」
「へ? 薬?」
「目の上に……ものもらいが」
「……誰かいい薬あったら彼女に渡しておいてください、はあ……」
「え? え? 何かわたし呆れられてしまうようなこと言ってしまったんでしょうか……」
「いえ、気にしないでください……え、もうお別れの時間ですか? なんだか今回はあまり充実感がないような気がしますが……気のせいなんでしょうか。いろんな意味でもう時間がないから締めろって……なんて無理矢理なんでしょう。わかりましたよ、では今夜のクリスマスナイトショウ、提供はフェアリードレス、DJは」
「みおみおと!」
「え……ここで入ってきていいのかな。る、るりるりが」
「「お送りしましたー!」」
「またそのまま終わらされそうになるパターンかよ……」
「えへへ、これはお約束ってやつだよ? あうあう、そんなにへこんじゃだめだよ……」
「ま、また来年お会いできたらお会いしましょう!」
「最後のセリフまで取られた……俺っていったい……では、またお会いしましょう。See You!」
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でお送りしました。