ブロック2
「D.J.コウの! クリスマスナイトショウ!
この番組は、食事もウエイトレスさんも質と量たっぷりでお届け! ファミリーレストランフェアリードレスでお送りしております。
……ええ、なんでCM開けたらお前がいるんだガッカリだよというのはもっともですが……まあ一応説明しますと、なかなかお二人が本題に入ってくれないとのことで、急遽変われと言われまして。私だって今日はこんなつもりじゃなかったんですよ、できるだけ彼女のそばにいたかっ……
あっとすみません、スタッフからお前も進んでねえじゃねえかコラという視線が飛んできたので先に行きます。ほんの一言だけグチっただけでこの扱い……男は辛いものです。はいはい、やりますからその刺すような視線をやめてください。では最初の方、お呼びしましょう。こんばんは」
「こんばんは」
「お、さわやかそうな青年ですね。隣にちょっと気の強そうな女性がいらっしゃいますが、カップルなんでしょうか。何か悩みでも?」
「ええ。あの、時々彼女が何を言っているのかわからなくなるときがありまして」
「ほう、どういう風にですか」
「いや、なんとも表現しにくいというか。最初は意を決してラブレターを渡した時ですかね。ボロクソ言われたんですけど、それもなんだか無理矢理作った言葉な感じで。しかも、一応その言葉を聞く限りフラれたんだなと思っていたのに今こうして一緒にいられている意味も分からないんですよね」
「あなたがアプローチをかけると、よくわからない返事をされる。でもなぜか彼女はあなたのそばにいると」
「そういうことです。どうにかなりませんか」
「うーむ、とりあえず彼女の内心がどうなのかわからないと、どうにも答えようがないわけですが……そうですね、まずは私が聞いたらどう答えるか試してみましょうか。あの、彼のことどう思っていますか」
「わたしをもっとその気にさせないといけないと思います。これならいっそのこと大嫌いって言われた方が下手に好意を持たれるよりマシです。だってそんなに彼は格好よくないし、とてもそりが合うようには思えません。こうして一緒にいる時も、スカートのすそを踏んづけたって気づきもしないし。こんなきそもできていないのに、告白をしようとするなんて無謀にもほどがあります!その前に考えなきゃいけないことがたくさんあるでしょ?」
「……なるほどさっぱりわかりません」
「ですよね。いつも最後に考えてから出直せだとか……言われっぱなしです」
「確かに大変ですね。『その前に考えなきゃいけないことがある』ですか、逆に言えばそれを解決できたらいいんじゃないですかね」
「それができたら苦労しないですよ」
「まあ、確かにそうですね。その前にってのが何を指しているのかわからないと……その前に……『そ』の前……ん? ははあ、なるほど」
「何か解決策が思い浮かんだんですか?」
「いやいや……結論から言うとですね、何も問題ないです。このまま一緒にいてあげてください」
「え、なんですか急に! なんの根拠が」
「はは、彼女が嫌そうな顔をしているのでここで言うのはやめておきます。じゃあ最後は彼女に」
「な、なんですか」
「いつその気になるかはわからないけど、見たそのままの彼を大事にして、いいタイミングで握手をかわそうか。来るその時はあるから。もうすぐ正月だし、おとそでも飲みながらいそいそとしたりさ。いいなその前にたっぷり考えてから実行するんだぞ」
「うう、あなたまで言っている意味が分からなくなりました。自分がおかしいんでしょうか」
「はは、彼にはやっぱり伝わっていませんか。というか今作ったので私もかなり苦しい感じがします。でも、彼女には伝わったみたいですよ? というわけで、今回はどちらかというと彼女に、になってしまいますかね。エールをプレゼントいたしました。余計なこと言うな、と彼女ににらまれた気がしますが、彼に嫌われない程度におさえてくださいね。では、次の方お呼びしましょう」
「よう! 今年はヘマなくやってるか?」
「おお、ハルか。久しぶりだな、元気してるか……っと、すみません。リスナーの方を置いてきぼりにしてしまい失礼しました。この方は私の知り合いでして……まあそんな個人的なことは省略しましょう。ところで……ハルにはそれはそれは仲のよろしいアキという相方がいらっしゃるはずなんですが、どうしました?」
「アキは確かにいるっちゃいるが、いつもセットで動いてるみたいな表現すんな、しかもラジオで何言いやがる」
「事実だろうが。しかもクリスマスだってのにそんなこと言いやがって……お前らいい加減くっつけよ」
「けっ、彼女持ちが余裕ぶっこきやがって。DJ口調がぶっ壊れて素が出てるぞ。それに知ってるだろお前も。それとなく伝えても全然いい返事が返ってこないんだぞ」
「冗談っぽくしているお前が悪いんだよバカ。はあ……わかった、とりあえずアキ連れてこい」
「わーったよ。おーい、アキ!」
「バカ! 大声で呼ばないでよ恥ずかしい」
「さて、アキさんにもお越しいただいたところでちょっとハルと話を……今年お前と二人で海にバイク転がしに行っただろ、それで思い出したんだけど夏が暑かったな」
「急にどうした。まあ、思い出すまでもなく今年は夏が暑かったな」
「そのまま過ごしてたらあっと言う間に夜になって、今度は明かりがきれいだったな。しばらく忘れられないな」
「ああ、まあな。キラキラしてて、脳裏に残るくらいだったな」
「……ナツって誰よ」
「……は?」
「ナツがアツかったとか、男二人でナンパ? アカリが綺麗だった? 何よそれ、一日で二人もなんて信じらんない」
「え……いやいやいや! 今年の夏が暑かったことだし、明かりってのは夜景が綺麗だったって意味だし!」
「ふーん、どーだか」
「勘違いするなって! ちょっと考えればわかることだろ、というかそんな考えになるなんてひねくれてるぞ」
「……私にも同じようなことしたくせに」
「くっ……あ、あれは違うだろ、ああやって緊張をほぐしながらも俺の気持ちをだな」
「じゃあ今度はちゃんとストレートに言えば? そうすれば私もひねくれた考えしないであげるけど?」
「なんだよそれ、つーかおいそこのDJ、ニヤニヤすんな」
「お互い素直になれないのってほほえましくてね。ハルのマネしてみた甲斐があったかなと」
「てめぇ、ハメやがったな」
「さあ、なんのことやら。彼女さんが勝手に解釈しただけでは?」
「だからまだ彼女じゃねえっつーの!」
「ははは、というわけでハルには『まだ』彼女じゃない人へアタックできるチャンスを差し上げました。そこに誰にも邪魔されない別室があるので思う存分どうぞ」
「うるせえ、余計なことすんな! 急にDJ口調に戻るな!」
「そう言いつつ別室へ向かっていくのを見ると、ますますほほえましいぞこのヤロウ。さて、ここで一旦CMです」
ブロック2は、
言葉に秘める想い(N7311M)
秋の香り(N0946O)
でお送りしました。