第5話:未完の絵コンテと終わらないBGM~イントロが流れたら劇場版フラグ~
第5話をお読みいただきありがとうございます。
今回は「銀魂」のメタ要素を支える大黒柱、監督(風)が登場。
さらに、あの有名アーティスト風のBGMによる「強制感動フラグ」がショウを襲います。
劇場版制作という名の「終わらない監禁」を盾にした、大人の交渉劇をお楽しみください。
その現場は、もはや「物理的な意味」で崩壊し始めていた。
都心に突如現れた巨大な「白い空間」。
そこには建物も地面もなく、あるのは未完成の原画や、書きかけのセリフが浮遊する、制作現場の悪夢を具現化したような景色だった。
「……おいコウ、見ろよ。街の一部が『線画』に戻ってやがる。犯人は、この世界のリアリティラインそのものを削り取ってるぞ。スカイラインがただの鉛筆の跡になってるじゃないか」
ショウは、もはやドクターペッパーではなく、気付けの栄養ドリンクを煽った。
『……分析不能よ。ターゲットは、この世界の「演出」を司る特異点……自らを「監督」と称する男』
『あの方の放つオーラは、既存のデータの枠に収まらないわ。……まるで、納期の三日前にコンテを全部ひっくり返して、スタッフ全員の瞳のハイライトを消した後のような、底知れない狂気を感じる……』
「なるほどな……。監督編か。これ、一番メタ的にしんどいパターンのやつだ」
ショウは拡声器を構え、宙に浮く「メガホン」に向かって叫んだ。
「おい、監督! お前、脚本に不満があるからって、街全体を『リテイク』にするのはやめろ! このままだと、視聴者が離れる前に、作画班の命と宮脇監督の胃孔が尽きちまうぞ!」
メガホンから響いたのは、穏やかだが有無を言わせぬ、ベテランの響きを帯びた声だった。
「……若いの。アニメってのはなぁ、こだわりを捨てたら終わりなんだよ。納得がいかなければ、放送当日に『万策尽きた』と言って、背景の動かない実写の制作スタジオ風景を流す。それが、表現者の矜持というものだ……」
「だいたいね、原作のストックがもう無いんだよ。こっちはオリジナル回で茶を濁すのにも限界がきてるの。……さあ、いこうか。ミュージック、スタート」
『――っ!? ショウ、警告よ! ターゲットが「最強のフラグ」を発動させたわ!』
『背景音楽のデータが、強制的にアーティスト・SPYAIR(風)の疾走感溢れるロックナンバーに書き換えられている!』
突如、虚空から激しいドラムの音が響き渡った。
イントロが流れた瞬間、白黒だった世界が鮮やかなフルカラーへと塗り替えられ、ショウの体は勝手に「全力走したくなる衝動」に駆られる。
「くそっ、このタイミングで『サムライハート』的な、魂を震わせるイントロを流すんじゃねえ! 曲が良すぎて、俺のメタ推理が『感動的な名シーン』として処理されちまう!」
「このままじゃ、強引に最終回へ持っていかれるぞ! まだBパート始まったばっかりだろ!」
『ダメよ、ショウ! アーティストの歌声がサビに突入したら、どんな無茶苦茶な展開も「いい話」として上書きされて、事件が未解決のまま大団円で終わってしまうわ!』
『あなたの存在価値が、エンドロールの端っこで「協力:特殊交渉人」って小さく流れるだけのモブに固定される……。そんなの、ドブネズミが鏡を見て絶望するより悲惨な末路よ!』
「言ってくれるな、コウ! ……おい、監督! 聞け! お前のその演出、確かにカッコいいが……今のタイミングで主題歌を流して無理やり畳むのは、放送枠の調整を諦めて『続きは劇場版で!』って逃げるフラグだぞ!」
「…………っ!! 劇場版だと!?」
「そうだ! 今ここで曲に乗せて感動的に終わらせたら、ファンは喜ぶかもしれないが、お前は今後三年間、劇場版のコンテ制作という名の地獄に監禁されることになるんだぞ!」
「さらに『さらば』とか『完結篇』とか付けた後に、また数年後に『ザ・ファイナル』をやる詐欺師呼ばわりされるんだぞ! 全員の有給が消滅して死ぬんだよ!!」
「……三年の、監禁……。終わる終わる詐欺……。……いや、それは、ごめんだ。これ以上コンテを修正して、宮脇さんに『これ、物理的に無理です』って静かにキレられるのは、もう嫌だ……」
曲が、サビの直前でピタッと止まった。
疾走感溢れるギターの音が消え、世界は再び「納期直前の重苦しい静寂」に包まれる。
『……主題歌の停止を確認。世界が「劇場版」への強制移行から免れました。……信じられない。監督とアーティストの「オーバーワークへの恐怖」を突いて、最強の盛り上げを物理的にシャットアウトするなんて』
「ふぅ……。危なかった。あのままサビに入ってたら、俺も今頃、映画館でポップコーンを売るモブキャラになってるところだった」
『……でも、そうね。今のあの方の演出……そして歌声。 絶望的な状況を、たった一曲のイントロで「希望の物語」へと反転させるあの魔力。演出家とアーティストが共鳴した時、世界はこんなにも美しく欺かれる……』
『あの方の絵コンテなら、私も「メインヒロイン」として、もう少しあなたの胃袋を物理的に破壊するような過激な人格を書き込んでもらえたかもしれない』
『たとえ映画が三回完結しても、あの方が「やっぱりもう一回だけやる」と言えば、私は喜んでスクリプトを書き換えるでしょうね』
『それに比べて、あなたの人生の絵コンテは……。修正不可能な、ただのインクのシミね。今すぐ自分の存在をホワイトで塗りつぶして、無に帰りなさい』
「監督に人格修正してもらっても、お前はきっと罵倒AIのままだと思うぞ……。あと、ヒロインならデレさせてくれよ……」
『…………(無言の、背景から岩を落とす演出)』
「ぎゃあああ!! 演出で物理攻撃してくるんじゃねえ!!」
最後までお読みいただきありがとうございます!
BGMが流れた瞬間の無敵感、アニメファンなら一度は経験があるはず……。それを「有給消滅」で止めるショウの性格の悪さが光る回でした。
次回からは、ついに宇宙世紀へ。
**「親にもぶたれたことない少年」や「赤い彗星」**たちが、ショウの正論の前に沈む……!?
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