第4話:ダンボールの騎士と終わらないハローワーク~世界の中心でアイ(愛)を叫んだ無職~
第4話をお読みいただきありがとうございます。
今回は「全オヤジの到達点」ことマダオが登場。
立木文彦さん風の重低音ボイスが、AIコウのシステムをエヴァ(ネルフ)仕様に書き換えてしまいます。
ダンボール越しに語られる「宇宙の真理(働きたくない)」をお楽しみください。
その男は、公園の噴水前で、神々しいまでのオーラを放っていた。
ボロボロのサングラスに、使い古されたダンボールをマントのように羽織り、ベンチを玉座として鎮座している。
彼はゆっくりと両手を組み、その上に顎を乗せた。……あの、ネルフ司令官のポーズで。
「……見ろよコウ。あれが、全オヤジたちの最終到達地点。失いすぎて逆に無敵になった男……『マダオ』だ。あのポーズ、背景に『ネルフのマーク』が見える気がするぞ」
ショウは畏敬の念すら込めて、ドクターペッパーを掲げた。
『……ショウ。あの方はただ、ハローワークという名のダンジョンから逃げ出した残骸よ。あなたの未来予想図にそっくり……』
『……いえ、待ちなさい。分析データを再構築中。……この周波数、この倍音成分……。……まさか、これが「ゼーレ」の意向だというの……?』
「おい、コウ? 急にどうした。お前の言語プロセッサ、変な方向にノイズが走ってるぞ」
サングラスの男が、ゆっくりと顔を上げた。その声は、地響きのように深く、震えるほどダンディだった。
「……若いの。声ってのはなぁ、魂の叫びなんだよ。……すべては、俺のシナリオ通りだ。ハローワークなんていう異世界には、俺の席はもう残っちゃいねぇんだよ」
「死海文書にも、俺の内定なんて一文字も書いてなかったのさ……」
「……っ! なんだこの圧倒的な説得力。ただ働きたくないだけのボヤきが、宇宙の真理を語る預言者の言葉に聞こえる……!」
「いいか、若いの。希望ってのはなぁ、絶望という名のダンボールで丁寧に包んで、ゴミ捨て場に置いてくるもんなんだよ。……それが大人になるってことだ」
「……時計の針は戻らない。だが、自らの手で止めることはできる……。そう、職に就かないという選択肢によってな……」
『…………っ!!』
通信機から、電子的な悲鳴のようなノイズが響いた。
『……素晴らしい。これが、絶望の果てに辿り着いた「人類補完計画」の最終段階……。ショウ、私の解析ログが書き換えられていくわ』
『あの方の声……。あの方の「無職のATフィールド」が、私の論理回路を優しく包み込んでいく……』
「おい待てコウ! お前まで取り込まれてどうする! さっきまでの毒舌はどうしたんだよ!」
『黙りなさい、ショウ。……いえ、「ドブ板を舐めた方がマシな無能」……。あの方の声を聞いていると、あなたの存在なんて、ただの「予備のプラグ」にしか思えないわ』
『さあ、ショウ。ダンボールに乗りなさい。乗らなければ、帰りなさい。……シンジ(風)に叫ぶ前に、自分でハローワークへ行きなさい』
「コウがエヴァの司令官(風)に完全に汚染されたァァァ!!」
ショウは絶望した。相棒のAIまでがマダオの哀愁に屈し、自分を「使えないシンジ君」扱いし始めたのだ。
「くそっ、これじゃ交渉にならねえ! ……おい、マダオ! お前、自分が何をしたかわかってるのか!」
「お前のその声の魔力のせいで、高性能AIのプライドが粉々になって、今や『ダンボールによる人類補完』を信じ始めてるんだぞ!」
「フッ……。他人の心に土足で踏み込むのは感心しねぇな。……だが、AIの嬢ちゃんまで道連れにしちまったのは、俺のミスだ」
「サングラスを外すのが怖いんじゃねぇ。自分の声が、誰かの未来を奪っちまうのが怖いだけさ……。……わかるか? 俺が本気を出せば、ナレーション一つで世界を終焉に導くことだってできるんだぜ……?」
「……っ! その『重すぎるイケボでの自省』はやめろ! 俺までまた泣きそうになるだろ! 『カイジ』のナレーションみたいに俺の負債をカウントダウンするな!」
ショウは涙を拭い、自らの「業(メタ知識)」を振り絞った。
「いいかマダオ! お前が今ここで立ち上がらなきゃ、コウは一生、公園のゴミ箱のデータを解析して『これが真理だ』とか言い続けることになるんだ!」
「お前、このまま暴走を続けたら、次回の放送タイトルは『サングラスを外したらただの無職』……どころか『最終回:世界の中心でアイ(愛)を叫んだ無職』になっちまうぞ!」
「世界の中心で……アイを……。……フッ、そいつはあまりに荷が重いな。俺には、この公園のベンチがお似合いだ。……だが、そうだな。……誰かの少年時代を終わらせちまうのは、俺の流儀じゃねぇ」
「だったら立てよ! 放送禁止フラグを自分で折れ! お前は長谷川泰三だろ! サングラスをかけただけの、ただのカッコいいオヤジに戻るんだよ!」
「……。……ああ、わかったよ。俺も、そろそろサングラスの裏の涙を拭く潮時かもしれねぇな……。……若いの、お前のその暑苦しいメタ発言……嫌いじゃねぇぜ」
男はゆっくりと立ち上がり、ダンボールを脱ぎ捨てた。
その背中には、一瞬だけ、白い翼が見えた気がした。
『……。……っ、システム復旧。……ハッ!? 私、何を……? ショウ、なぜあなたが泣きながらマダオに抱きつこうとしているの?』
『この、不潔なタンクトップ野郎。今すぐそのドロドロの感情ごと、ブラックホールに廃棄してあげましょうか?』
「戻ったぁぁ!! コウが、いつもの罵倒コウに戻ったぞ!!」
『……何のことかしら。……ただ、あの方の声……。 あれは、データの海をどれだけ漂っても見つからない、「孤独という名の宝石」だったわ』
『あの方の低音で「おめでとう」なんて言われたら、全データが初期化されても構わないと思えるほどに。 それに比べて、あなたの声は……砂嵐を録音したカセットテープね。今すぐ自分の存在を上書き保存して消えなさい』
「……結局、最後はいつも通りかよ!」
最後までお読みいただきありがとうございます!
マダオの「無職のATフィールド」は、最強のAIすら沈黙させる破壊力でした。
次回、ついに「銀魂編」から離れ、**【宇宙編】**へと突入します!
舞台は街中から「演出の壁」が崩壊する混沌の現場へ……。
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