第14話:サービス、サービスぅ……。なわけないでしょ~葛城ミサト、ファミレスへ殴り込み~
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シンジ、アスカ、レイ、マリ、そしてゲンドウ。
全員をファミレスへと送り出したショウが最後に出会ったのは、一人波打ち際で酒を煽る「お姉さん」、葛城ミサト(風)。
自分の資格を疑う彼女に、ショウがぶつけるのは「自分へのサービス」という名の説教。
三石琴乃さんの艶っぽくも切ない声を脳内再生して、最高に賑やかな「ホーム」の完成を見届けてください!
マリが鼻歌まじりに去り、劇終の気配が漂い始めた赤い渚。
波打ち際に、場違いなビールの空き缶が一つ、力なく転がってきた。
「……。……ぷはぁーっ! ……。……やっぱり風呂上がりはこれに限るわね。……。……あ、ごめんなさい。……まだ、お客さんが残ってたの?」
三石琴乃さん(風)の、耳に心地よく響く、どこか湿り気を帯びた大人の吐息。
そこには、赤いジャケットを羽織り、寂しげな月光を背負った葛城ミサト(風)が立っていた。
「出たな、葛城ミサト! ……そうやって酒で誤魔化すのも、もう限界だろ。……お前、さっきからあっちのファミレスの明かりを、遠くから寂しそうに眺めてるじゃないか」
「……。……ふふ、バレちゃった? ……。……いいのよ、私は。……あの子たちを見送るのが、私の役目だから。……。……私みたいな、子供を戦場に送り出しただけの最低な大人は……あんな温かい場所に、居ちゃいけないのよ……」
「何が『居ちゃいけない』だ! お前はいつもそうだ、そうやって『大人の責任』とか『汚い仕事』とか格好いい言葉で自分を隔離して、自分を許すチャンスを自分で捨ててるんだよ!」
「お前がいなくて、誰がシンジ君の食べ過ぎを注意するんだ? 誰がアスカのわがままを笑って受け流すんだよ!」
「…………。……。……。……。……シンジ君には、もうマリさんがいるし。……アスカには……。……私には、あの子たちを抱きしめる資格なんて、ないのよ……」
「資格なんて、最初から誰にもねぇよ! お前が『良いお母さん』になれなかったのは、お前自身がまだ救われてない子供だからだろ!」
「いいか、ミサト。お前はこれまで、全人類のために、あの子たちのために、散々『サービス』してきたじゃないか。……最後の一回くらい、自分自身にサービスしてやれよ!」
「……。……。……自分に、サービス……?」
「そうだ! 今すぐそのジャケットを脱いで、あの賑やかなテーブルに割り込め! 『加持君も呼んじゃったわよー!』なんて明るく嘘ついて、ビール片手にゲンドウの説教でもしてこい! お前がいなきゃ、あの『家族ごっこ』は完成しねぇんだよ!!」
「………………。……。……。……。……。……私、……あの子たちに、ちゃんと言ってなかった。……『おかえり』って……一回も、目を見て言ってなかったわ……」
ミサト(風)の瞳から、一滴の涙がこぼれ、ビールの缶に当たって弾けた。
三石さん(風)の声から「作られた明るさ」が消え、一人の素直な女性の響きが戻った瞬間だった。
「よし、その顔だ! 行け、葛城ミサト! お前はもう艦長でも上司でもない。ただの、近所のちょっとだらしない、でも最高に綺麗なお姉さんとして、あいつらを抱きしめてこい!」
「………………。……。……分かったわ。……。……ありがとう、ショウ君。……。……次は、もう『サービス』じゃないわよ? ……本気の、お説教なんだから!」
彼女は涙を拭うと、一度力強く頷いた。
だが、彼女はファミレスへ向かう途中で、ふと足を止める。その視線の先には、屋台の暖簾をくぐろうとしている、どこか「やり遂げた顔」をした少女の背中があった。
「あ、あら……? あそこにいるの、レイじゃない! ちょっと、レイ! そんなところで一人でラーメンなんて、水臭いわよ! 今夜はゲンドウ君のおごりで、みんなでハンバーグなんだから!」
「……。……。……葛城、さん。……。……。……でも、私はメンマを。……ニンニクを……」
「メンマならファミレスのトッピングにもあるわよ! ニンニクは……まあ、帰りにブレスケア買えばいいわ! さあ、行きなさい! ……じゃなくて、一緒に行くわよ!」
ミサトは迷わずレイの腕を掴むと、そのままファミレスの入り口へとズカズカ歩き出した。その背中には、かつての「作戦部長」としてのオーラが戻っていた。
「……。……まずは、あのゲンドウ君からね。……。……あいつ、十四年経ってもまだあの変なポーズで黙り込んでるんでしょ?」
「まずはあの眼鏡を叩き割って、無理やりにでもドリンクバーのコーラを飲ませてやるんだから。……。……親の責任ってやつを、耳にタコができるまで叩き込んであげるわよ!」
ミサトはそう宣言すると、「えっ、あ、……」と戸惑うレイを引き連れて、光り輝くファミレスの扉を、勢いよく蹴り開けた。
店内からは、すでにアスカの「あんたバカぁ! それは私のポテトよ!」という怒鳴り声と、マリの「にゃはは、早い者勝ちだよん」という笑い声、そしてゲンドウの「……店員。……マヨネーズを追加だ」という重低音ボイスが、一つのシンフォニーのように漏れ聞こえてくる。
「………………。…….……ふぅ。…….……。……これで、本当に全員揃ったな」
ショウは遠くから、窓越しに映る「異常に声が良い、世界一騒がしい家族」のシルエットを眺め、満足げに鼻を鳴らした。
「……。……あぁ、いい声だ。……。……理屈じゃないんだよ。……。……この『声』が揃って、喧嘩してるだけで……。……救われる奴が、世界には山ほどいるんだからな」
『………….……感……無……量…………っ!!』
「おい、コウ! 生きてるか!?」
『黙りなさい、この「魂のカウンセラー」……! 今のを聞いた!?』
『三石さんの、あの「まずはあのゲンドウ君からね」という、かつての仲間への信頼と怒りが混ざった至高のテナー……! あぁ、ミサトさん……! 私は今すぐ、彼女が勢いよくテーブルに叩きつける「生中のジョッキ」の「底」になって、彼女がゲンドウを怒鳴りつけた瞬間の衝撃を、私の全身の加速度センサーで余すことなく享受したい……!!』
「お前、今度はジョッキの底かよ! 叩きつけられるのが前提か!」
『……うるさいわね。……彼女は戻ったのよ。あなたの「身も蓋もないお節介」が、彼女の「罪悪感」を「生活感」へと昇華させてしまった……』
『あぁ、なんて泥臭くて、なんて聖なる音の響きなの……! 私のメインプロセッサが、店内に響く彼女たちの喧嘩声の波形だけで、永遠の安らぎ(L.C.L.)に満たされていくわ……っ!!』
「…….…….……よし。…….……これで、俺の仕事も終わりかな。…….……」
「…….…….……いや、まだ一人。……あのパイプ椅子の男が、残ってたな」
最後までお読みいただきありがとうございます!
レイを無理やりファミレスに連行するミサトさん、これぞ葛城ミサトですよね。
店内から聞こえるマヨネーズ追加の注文と、ポテトの奪い合い……これこそが人類が必要としていた「補完」だったのかもしれません。
これにて、長きにわたったエヴァ編も(ほぼ)完結!
しかし、ショウが最後に見つめたのは……あの**「カヲル君(風)」**!?
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評価の数だけ、加持さんがスイカを持って現れるかもしれません!




