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最弱の救助劇と、全財産の馬車

町の出入り口。そこには、俺を見送るために整列した兵士たちの姿があった。

「賢者様! 我ら、貴方様の歩む先に栄光あらんことを祈っております!」

一斉に捧げられる敬礼。その熱い眼差しが、今の俺には鋭い針のように突き刺さる。

(……頼むから、そんな目で見ないでくれ)

本当なら「重いから荷物を持ってくれ」と泣きつきたい。

だが、期待を背負いすぎた「偽りの賢者」に、そんな泣き言は許されない。俺は必死に膝の震えを抑え、深遠な笑みを浮かべて頷くと、孤独な一歩を踏み出した。

仲間が欲しい。

だが、ALL 1の俺の仲間になる「奇特な強者」なんて、この広い世界にいるはずもなかった。


それから三日後。

俺の旅は、意外な形で停滞を迎える。

「おい……大丈夫か? いや、大丈夫じゃないよな、これ」

街道の脇、草むらに一人の少女が倒れていた。

顔色は青白く、呼吸も浅い。放っておけば命に関わるのは明白だった。

普通の冒険者なら、ここで彼女を軽々と背負い、町へと走り出すのだろう。だが、俺は違う。筋力1の俺が彼女を抱き上げようとすれば、助けるどころか、俺の背骨が先に「グシャリ」と悲鳴を上げて共倒れになるのがオチだ。

「……待ってろ。今、最高の方法で助けてやる」

俺はそこから、数キロ手前にあった宿場町まで死に物狂いで引き返した。

宿屋の主人を捕まえ、これまでのハッタリで蓄えた「全財産」をテーブルに叩きつける。

「馬車を。一番馬力の強い馬と、寝心地のいい寝台付きの馬車をくれ。……釣銭はいらん。急げ」

賢者の気迫(必死さ)に気圧された主人は、すぐさま最高級の馬車を用意した。

再び現場へ急行し、俺は倒れている少女の横に馬車を寄せた。

抱き上げるのは無理でも、梃子てこの原理を応用し、木の棒を使ってゴロゴロと転がすようにして、なんとか彼女を車内へ運び入れる。

「……ふぅ。これで、歩く必要も運ぶ苦労もなくなったわけだ」

財布は空っぽになったが、これで「重い荷物を背負って歩く」という拷問から解放される。

そう考えれば、これは未来への投資だ。

俺は慣れない手つきで手綱を握り、馬車を走らせた。

 車内で眠る、正体不明の少女。

彼女が目を覚ました時、俺の運命は再び大きく動き出すことになる。

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