召喚
時は深夜2時。コンビニに行った帰りだった。
平凡なニートであるところの俺は謎の時空の穴に吸い込まれてしまった。
気が付けば見覚えのない部屋にいた。
そこは暗い部屋だった。ならんだ蝋燭がぼんやりと辺りの景色を映し出している。
「やったわ。ついに召喚することができた……」
その中に一人の少女がいた。
年のころは14歳頃、日本人離れした顔立ち、何より目立つのはその赤い瞳と髪だった。
俺は思った。これはあれだな?いわゆる一つの異世界召喚。
「これでこの領地は救われる……」
領地が救われる?なるほど、これは勇者の召喚か?はたまた悪魔との契約か?
そうとなったらやることは一つだな。
「お前が俺の召喚者か?」
俺はちょっとロールプレイをしている風にそう少女に問いかける。
「……えぇ、そうよ」
「何故俺を召喚した」
「この領地を救ってほしいの、魔人である貴方に」
なるほど魔人と来たか。
「魔人である貴方と契約するのだから代償が必要なのはわかっているわ……」
代償かぁ。代償ねぇ。ありがちですねぇ。
「ほぉ。お前に何が差し出せる?」
「全てを。私が持っているものなら命でも何でも差し出すわ」
えぇ?ドン引き。こんな平凡なニートにそこまでよく差し出す気になるなぁ。
まぁしばらくこのまま魔人ロールは続行で行きますか。
バレた時が怖いが。
「ではお前の所有権は俺のものだということだな」
「!……えぇ、それが契約の条件なら」
「ではマスターお前の願いを教えてほしい。領地を救ってほしいということだが具体的にはどうすればいいんだ?」
「三日後にスタンピードがこの領地を襲うわ。それまでにその魔物の群れをなんとかしてほしいの」
「ほぅ?規模は?」
「約3万」
へぇ、3万……3万ねぇ……どこへ逃げようか?
「ふむ、実は一つ言い忘れていたことがあるんだ」
「何かしら?」
「実は俺は魔人ではないんだ」
「魔人でも冗談を言うことがあるのね。その立ち上る魔力、貴方が魔人じゃなかったら何だっていうの?」
え?魔力。嘘だろ?
そう思って自分の周囲を注視してみるすると何か暗い靄のようなものが見えた。
うわ、なんだこれ?
「何か驚くようなことかしら、私だって魔術師の端くれ、魔力ぐらい見えるわよ」
そもそも召喚したのは私なんだしと何やら少女は不満げだ。
そこで気が付いた、まだ少女の名前を聞いていなかった。
「そういえばまだ名を聞いていなかったな」
「……そうね。私の名前はエリーズ・ド・トゥアール」
「俺の名前は山田令人」
「ヤマタノリヒト……」
こうしてとりあえず自己紹介も終わり何やら俺の隠された力が判明したぽかった。