膝枕への情熱
タイトル詐欺ではないです!!!!
あとから、きちんと登場します!!!!
その星では、貴重な存在である金や銀をふんだんに使った建物が描かれている絵を見て、少年は思った。成金主義であると。
地球から少しばかり離れた星では、ある生命体が文化的な暮らしを営んでいる。その生命体は、自身のことをtokellha星人(tokellha星の言語は一つではないので、この星で最も流通している言語の発音を参考にした。)と呼ぶ。さて、このtokellha星人にもいろいろな人種がいる。今回の主役はjeihwfo人(片仮名ではジェイホ。こちらは現地で公用語を参考にした)である。
jeihwfoの宗教は三神教である。何故かは知らない。jeihwfo人に聞いたところで、真実か分からない聖典の内容を語ってくるだけだからだ。そもそもそんな疑問を持てるのは、jeihwfoの宗教を信じていない私達、宗教を理解できていない少年達くらいだろう。jeihwfoでは影響を持った発言ができない人たちばかりである。
jeihwfoの教えによれば、現世で欲を我慢する(現地の言葉でいうとprejuth。片仮名ではプレジャス)と、来世にて、自分が我慢した欲が霞むほどの娯楽を享受できるらしい。三柱の神の力は偉大なのだ。更に、来世で生きている時間は、現世よりも圧倒的に長いという考えも一役たっていた。こちらの考えは、jeihwfoの宗教が成立する前からあったらしい。jeihwfoの大人たちは、現世での無欲主義に従い、背くものを非難し、未来のjeihwfo人、すなわちjeihwfoの子どもたちに教えを継がせようとしていた。
少年Bは、jeihwfo出身の子どもである。他の子どもよりも知的好奇心が強く、なぜ大人たちが皆全く同じ考えを持っているか、なぜ自分たちがしたいことを我慢するのか、そして、なぜ自分たちに好きなことをさせてくれないのか疑問に思っていた。
――きらびやかな建物の絵を見るまでは
金と銀が素材である一目で分かる建物だった。美しく、堂々と建っていた。中には何がある変わらないが、きっと贅沢なものが並べられているのだろう。充分な食糧、温もりを感じられる寝床、そして金や銀の建物なのに傷ひとつないから平和な場所だと分かる。どうしても欲を我慢できない人のために、これを見せて我慢させていたのだろうか。
その絵は、jeihwfo人が想像する来世を表しているようだ。もっとも、欲を我慢した人にしか訪れることができないのだが。少年Bは、どうもその絵を好くことができなかった。金と銀が嫌いなわけではない。ただ、欲を我慢して訪れる未来が思ったよりもみすぼらしかったのだ。こんな建物に住んでも、すぐ慣れてしまうだろう。そもそも、急に我慢するなと言われたところで、たくさんのことを思いつくことができるのだろうか。
それならば、現世で思いついたことを実践したほうが楽しいのではないか。
きっと大人たちに反対されるだろう。邪魔をしてくるのだろう。それでもやめるつもりはない。三柱に導かれるつもりもない。もしかしたら、太古の昔に神は他に大勢いたのかもしれない。しかし、その三柱が他の神を蹴落としてjeihwfoの宗教ができたのかもしれない。そして、三柱は欲を我慢することを義務付けた。
一度始まった少年の想像は止まることを知らなかった。
知的好奇心が高まるにつれて、神への疑問が生まれてくる。そうなると、jeihwfo人に信仰されなくなる。それを危惧して知的欲求を消そうとしたのが、欲の我慢の全ての始まりかもしれない。そういえば、欲を我慢しないとどうなるのだろうか。とても気になってきた。金や銀が使われていない建物に行くことが出来るのだろうか。
そのように思考していると、時間が長く感じられる気がする。今は、ただ、自分の欲望に従っていたい。楽しい時間が長く感じられるのだから。
建物の絵に、もう少年は興味を示していなかった。
後日、膝枕されながら少年Bは質問に答える。
—―何か良いことをあった?ほどほどにしときなよ。
――でも僕は長生きしたいんだよ。
――どういうこと?
――だろうね。
膝枕されてみたいです。