背広の重圧
これは私の実体験に基づいて描いた作品です
これから出てくる言葉よりも酷い事を言われたりもしましたが 、自分に逃げ道を作れたから今があります
辛かったら逃げましょう
鎧は無くなるものではないですし作る事が出来ますから
真琴は、毎朝の通勤電車の中で自分の気持ちを整理するのが習慣になっていた
紳士服店での仕事は、期待と重圧が交錯する日々
スーツは、彼女にとってもある種の鎧であったが、同時に心の中の不安を隠すための秘密の道具でもあった
「この会社の社員なのだから、良い売り上げを出すのは当たり前、全てはお客様の為」
と上司の藤井は言う。
彼の言葉はいつも冷たく、真琴にとっては重圧そのものだった。
特に、私の指摘が続くと、周囲の視線が一層痛く感じられた。
真琴は心の中で何故こんなに苦しいのかと問い続けていた
売上が伸びない日は、藤井からのパワハラじみた言葉が響く。
「お前の売上は、まだ足りない。この店の足を引っ張るつもりか」
「お客様の事を第一に考えつつ売上!売上!」
そんな言葉を聞くたびに、真琴の接客への自信はすり減り、どんどん自分を責めるようになった。
心の中で何かが壊れそうだった
スーツを着た自分を鏡で見ると、笑顔が消えた暗い影のような自分が映っている
"こんなはずじゃない"と思う一方で、周囲になんとか合わせられれば少しでも評価されるかもしれないという期待を抱き続けていたのだ。
月が変わり、真琴の心はますます不安定になった
日常の業務に対するやる気を失い、業務中に何度も焦点がぼやける瞬間が増えた
周囲からのプレッシャーが重くのし掛かり、
耐えきれない状態になっていた。
彼女は仕事を終えた後、訳もなく急に涙が溢れた
"私には、何もできる事がないのかもしれない"
次の日病院で適応障害と診断された
数週間が経ち真琴はついに転職を決意した
スーツを着た自分が好きで、それを手放すことは彼女にとって勇気のいる決断だった。
心の自由を取り戻すためには必要な一歩だった。
紳士服店での経験は、彼女に多くのことを教えたがその中には耐えなければならない苦痛がいくつもあった。
月日が経ち新しい職場が決まり晴れて就職する事になった。
業種が異なるフラットな環境だった
クリエイティブな分野で働くことは、真琴にとって未知の経験だったが、少しずつ気持ちに余裕が出来ていくのを感じた
彼女は、自分の価値を新たに見出すことで少しずつ自信を取り戻していくのだった
今振り返ると、真琴の心に残るのはスーツの重圧だけではなかった。
自分がどれだけ頑張っても評価されない現実、そしてそれに耐えることで失ってしまった自分自身。
新たな環境に身を置くことで、彼女はもう一度自分を取り戻す旅に出る事が出来た。
新しい道は、険しいかもしれないが、少なくとも自分の心に少しは正直に向き合うことが出来るようになっているだろう
居場所が見つかることを願いながら 真琴は電車に乗った