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うちの店にはろくな客がいない

作者: 木村俊太郎

 うちの店には、ろくな客がいない。

 うちの店にいるのは詐欺女、ナンパ男、うんちくオジサン。


 飲食店にとって客は自分を映す鏡だとは言うけれど、俺はそんなろくでもない奴らとは違う。むしろこの六本木に店を構え、もうこの春で五年になる。三年で七〇%がつぶれると言われている飲食業界の中では、なかなかの好成績だと自分では思っている。

 さらにうちの店があるのは、六本木通りから一本外れた細い道に面している見るからに怪しいビルの五階である。一階は不動産会社が入っているが、最上階である六階には風俗店、二~四階は何も看板が付いていないが、元気のよさそうなお兄様方の出入りが多い。こんな場所で五年も続けられていることが自分でも驚きである。


「マスター、私の話ちゃんと聞いてますか? だからアイアイはマダガスカルでは悪魔の使いと恐れられているらしいんですよ。そんなマダガスカルに私もいつか行ってみたいと思っているんです。マダガスカルは……」


 カウンターに座るコンさんは今日も舌好調

 である。小さい頃にみんな口ずさんでいたであろう動物は、現地では悪魔の使いと言われているらしい。案外面白い話だなとは思うが、問題なのはこの話を今までに五回は聞いた覚えがあるということだ。うんちくオジサンであるなら、新しい話も是非仕入れてもらいたいものだ。

 今日のコンさんは入荷したばかりのマダガスカル産のビール、スリーホースビールを飲んでいる。このお酒を俺がオススメしてしまったせいで、このアイアイの話が始まってしまったのだ。これは俺の注意不足による自業自得だと割り切るしかない。

 そしてコンさんと離れてカウンターに座っているのはトミーさん。今日は若い女性を連れて、ラフロイグ十年をオンザロックで飲んでいる。連れの女性が注文したのはイチゴを使用したフルーツカクテルだ。ピューレ状にしたイチゴとスパークリングワインを合わせた、連れの女性に似合う華やかなカクテルである。うちのイチゴは福岡のあまおうを使用していると説明している最中に「あまおうの由来を知っているか」とコンさんが彼女に絡んできたが、トミーさんの非の打ち所がない対応により、コンさんはまた一人寂しくビールを飲んでいる。


 トミーさんがいつも飲んでいるラフロイグは、スコットランドのアイラ島で造られているウイスキーで、スモーキーな香りが特徴的である。バーでラフロイグを飲むトミーさんはなかなか絵になる。


 このトミーというあだ名は本名とは全く関係なく、以前女の子からアメリカ出身の芸能人に似ていると言われ、それ以来気に入って使用している名前だ。あまりテレビで見かけることはないが、確かマイコ―とも呼ばれていた芸能人だったと思う。

 そして小さな店内に一つだけあるテーブル席には、今日も花梨さんが初老の男性と座っている。花梨さんはいつものコスモポリタン、その男性はヘネシーのナポレオンをストレートで飲んでいる。


 マダガスカルのビールを飲み終えたコンさんは、明日に迫った娘の大学入試に備えて、今日は珍しく一杯だけで帰っていった。

 コンさんが帰ると次はトミーさんからお会計が入った。連れの女性はもう眠ってしまう寸前であり、このままどこかで休んでいこうという作戦なのであろう。俺はコンさんの場合は、協力せずに黙認することにしている。

 テーブル席を見ると、丁度花梨さんが男性から大きなダイヤのピアスを貰ったところだった。俺は彼女がプレゼントを貰っているところはよく見るが、それを付けているところは見たことがない。

 うちのバーには、探偵なんていない。

 いるのは詐欺女、ナンパ男、うんちくオジサンだけだ。


 今日も、うちの店にはろくな客がいない。

「マスター。マダガスカルってどの辺か知ってる?」

 またマダガスカルの話か。今日は普通に国産の瓶ビールなのに、何でそうなってしまったのだろうか。まだコンさんのうんちくデータベースは更新されていないようだ。早くアップデートしていただかないと、こちらの容量(我慢)オーバーになってしまう。

 そんな俺を横目に、トミーさんは今日もコンさんと離れてカウンターに座っている。今日は珍しく一人で静かに本を読んでいる。手元にはラフロイグ十年のソーダ割りが置いてある。グラス内の氷は溶け出しており、紙のコースターにはたっぷりと水が含まれてるようだった。

 そしてテーブル席にはコスモポリタンを飲む花梨さんと、ギムレットを飲む見知らぬ男性。

 いつもと変わらずうちの店にはろくな客がいない。

 唯一いつもと違うところがあるとすれば、花梨さんが連れてきているのが、まだ二十歳そこそこの男性であることだ。なかなか端正な顔立ちではあるが、花梨さんの獲物としても、ギムレットを飲むにしても早すぎる。


「今回は随分若い子に手を出しましたね」


 俺は男性がトイレに立つ時を見計らい、テーブル席に水を運びながら話しかけた。


「ガキは嫌いよ。ただのちょっとした知り合いなだけよ。あんたは早くカウンターに戻りなさい」


 そう野良犬でも追い払うように花梨さんは言うと、藤色のスカートの裾を直し、背筋を整えた。俺は仕方なくカウンターに戻り、コンさんの話を聞いているフリをしながら、テーブル席の会話に集中することにした。


「アイアイは悪魔の使いだから……現地の人は……」


「だからそれは無理って何度も言ってるじゃない……そう……一応貰っておくわ」


 男性の声は思いの外低く、花梨さんの声が断片的にしか聞こえない。コンさんの声はやはり邪魔でしかない。

 時折トミーさんが本から俺の方に視線を移してくる。トミーさんもテーブル席の会話に聞き耳を立てているようだ。

 そうしているうちに、男性は用事を済ませたかのように立ち上がり、財布から一万円札を取り出してテーブルに置いた。花梨さんは珍しく断っているようだが、男性はそれでもお構いなしにお金を置いたまま急ぎ足で店を後にした。男性が店を出ると、花梨さんは手荷物を整え始めた。

 うちの店は細長い造りになっており、六席のカウンターの奥のスペースにテーブル席が配置してある。入口よりのカウンター席はコンさんの特等席で、逆側の端はトミーさん。そして真ん中は花梨さんが座ることになっている。三人に詰めて座ってもらえればもっとお客さんを座らせることができるのだが、繁盛店ではないので今までそれで困ったことはなかった。

 花梨さんが真ん中の席に座ると、いつもの薔薇のような香りがバーカウンターに広がる。強い香りの香水をつけているお客様を歓迎しないバーは多いが、俺は全く気にしていない。お酒の香りを楽しみに来るような客はうちの店に来ないし、どんな客でも彼女が横にいると顔がほころぶことを知っているからだ。

 以前この四人で飲みに行った時に聞いた話だが、彼女は「綺麗な薔薇には棘がある」という言葉が好きで、薔薇の香りがする香水をつけ始めたらしい。その時に俺が「サボテンも棘があって綺麗な花を咲かせますよ」と言ったら、思いっきり頬をビンタされたのは忘れられない出来事である。彼女は街ですれ違ったら十人中九人は振り返るほどの美人ではあるが、すぐに手が出るし手を出す。色々な意味で、である。


「今回はどんないざこざ何ですか?」


 彼女がカウンターに移るや否や、俺は聞いた。一瞬彼女にきつく睨みつけられたが、機嫌が悪いわけではないようで、彼女は淡々と話をしてくれた。


 花梨さんが一年間ほどお相手をしていた男性が、病で亡くなったらしい。その男性は亡くなる前に、もう一度ある女性に会いたいと家族に漏らしていたそうだ。その女性がなんと愛人であった花梨さん。家族は踏ん切りがつかず、なかなか花梨さんに連絡をとることができないでいたが、そうしているうちに男性の容態が急変してしまい、帰らぬ人となってしまった。

 その男性の家族としては、生きているうちに会わすことができなかったことを負い目に感じているようだ。それでせめて告別式には参加してくれないかという話であった。その話を男性の息子が直々にしにくるなんて、一体どんな気持ちなのだろうか。


「花梨ちゃん。亡くなった男性というのは何者なんだい?」


 トミーさんが目を輝かせながら聞く。


「大したことない、ただの成金よ。父親の代から細々と工場をやっていたんだけど、自分の代で作った新製品が爆発的に売れちゃったのよね。確かテレビの便利グッズ特集か何かで取り上げられたのよ」


「ご家族は?」


 今度はコンさんが間髪を入れず質問する。うちには本当にろくな客がいない。


「確か奥さんと一人息子だけね。遊びまくっていたから、愛人は何人もいるけどね。だから隠し子は沢山いるかもね」


 彼女はさもありふれたことのように言う。


「愛人の存在に奥さんは気付いていたのかな?」


 人妻には手を出さないと誓っているトミーさんでも、そういった不倫関係の話はやはり気になるのだろう。


「さすがに気付いていたと思うけど、仕事やお金に関しては奥さんに口を出させてなかったみたいだから、案外気付いてなかったかもね」


「それで告別式には行くんですか?」


 俺もやはり質問攻めに加わってしまう。やはり客は自分を映す鏡なのかもしれない。


「行かないわよ。息子でさえこうやって会うのは気まずいのに、奥さんとはどんな顔をして会えばいいのよ。そいつの好きなところでも言い合えばいいわけ? それにもし襲い掛かって来られたら修羅場よ、修羅場」


 花梨さんは終始面倒くさそうな態度で質問に答えていた。でも彼女がこんなに真面目に答えてくれるなんて、珍しいこともあるものだ。


「でも、数多くいる愛人の中から花梨ちゃんを指名したんだろ? やっぱり彼にとって花梨ちゃんは特別な女性なんじゃないかな。行ってあげたら?」


 確かにトミーさんの言う通り、彼は花梨さんに対して、ただの愛人のうちの一人としてだけでない思い入れがあったのだ。「指名」という言い方はトミーさんの人間性が滲み出てしまっていると思うが、たまには色男も良いことを言う。

 彼女は何も言わず、手もとにあるカクテルグラスをただ見つめている。グラスには飾りつけに使用したクランベリーが一つ、残されている。彼女はいつもこの飾りのクランベリーには手を付けなかった。以前それを聞いた時には「だってこれは飾りの為でしょ? 飾りは飾ったままが1番よ。飾っても良し、食べても良し、は都合良すぎるわよ」と言い返された。


「花梨さん、行きましょう! 心配なのであれば俺が付いていきますから」


 静寂を破るように俺の口から出た言葉は、彼女の決心を後押しすることが少しはできたようだ。


「でもあんたと行っても全く心強くないのよねぇ」


 一呼吸置いてそう意地悪を言う彼女は、次はスパークリングワインを注文した。

 俺はなんだか今日は話がやけにスムーズに進むなと思い、花梨さんから視線を右に移すとコンさんが既に夢の世界に行っていた。きっとアイアイと手を取り踊っているに違いない。


 告別式当日、俺と花梨さんは店で待ち合わせ、葬儀場へと向かった。葬儀は練馬区にある葬儀場で執り行われる。葬儀場へは六本木から都営大江戸線で練馬に行き、そこからタクシーで向かうことにした。

 彼女の口数は全体的に少なく、時折目を瞑り何かを考えているようだった。練馬駅から乗り込んだタクシーの運転手は、「練馬葬儀場まで」と俺が伝えると、一度もそれ以来話しかけてくることはなった。俺は薔薇の香りが広がる車内で、窓から緩やかなスピードで遠ざかっていく電柱を、ただ繰り返し眺めていた。


「花梨さん、着きましたよ」


 タクシーが葬儀場の敷地内に入ると、既に葬儀場の入り口で彼が待っていた。うちの店に来ていた男性である。身に付けている喪服はタイトな造りとなっており、店に来た時にはわからなかったが、ただ綺麗な顔立ちであるだけでなく、体つきはスマートで引き締まった印象である。彼の顔立ちから、きっと花梨さんの相手をしていた父親はダンディなオジサンだったのだろうと俺は妄想を膨らませていた。愛人がたくさんいたなんて、うちにいる憎めないうんちくオジサンとは正反対なタイプかもしれない。

 彼は俺と彼女に軽く挨拶をすると、喪服をまとっている彼女の頭のてっぺんからつま先まで嘗め回すように見ている。無理もない。喪服であっても花梨さんのスタイルの良さは隠すことができないに決まっている。

 しかし彼女は彼の視線が意味することに気づかないフリをしているようだった。そして俺達は彼の後に続き、葬儀場の中へ入っていった。俺はまるで年の離れた弟であるかのように、彼女から離れないようについていった。


 葬儀場の中に入ると、左右に広がった長方形のロビーが目に入る。ロビーには四人掛けの丸テーブルが規則的に並んでいる。彼は俺達にここで待つように飄々とした様子で言い、奥の部屋へと消えていった。

 俺と花梨さんは一番入り口に近いテーブル座り、彼女はスマホのチェックを始めた。俺はなんとなくスマホを出す気分にはなれず、近くにあった自動販売機を眺めていた。

 その場で十分ほど待っていると、彼は一人の女性と一緒に戻ってきた。年齢は五十代後半ぐらいだろうか。肌や髪に相当気を使っている女性に見えるので、正確な年齢は捉えづらかった。

 その女性は息子に連れられて俺達の前に来ると、細い肩を震わせ、目に涙を浮かべながら花梨さんのことを見つめている。何も言わず軽く会釈をしているようにも見える。

 この女性が……。

 そう俺が思った瞬間、花梨さんは踵を返し葬儀場を後にしてしまった。


「花梨さん! 待って!」


 俺はロビーに響くような大きさで何度も彼女の名前を呼んだが、彼女は一度もこちらを振り返らなかった。

 今、花梨さんと俺は葬儀場の横にある小さな公園のベンチに座っている。俺はすでに三十分ぐらい誰も乗っていないブランコと、横にある桜の木を交互に見つめていた。桜の木は半分ぐらい緑に染まっている。


「私ね。この成金と何度も本気で駆け落ちしようとしたことがあるの」


 彼女はゆっくりと、心に整理をつけるように話をしてくれた。

 短い付き合いではあったが、彼を本気で好きだったこと。

 相手をしている間に貰ったお金は今も全部使わずに残してあること。

 自分がただの愛人の一人から抜け出せないと感じ、別れを決意したこと。

 亡くなる前に自分を思い出してくれて、嬉しかったこと。

 俺は黙ってただ頷きながら話しを聞いていた。彼女の話は時々止まりながら、しかしゆっくりと自身の足場を確認するかのように進んでいく。


「でもやっぱり、私は葬儀に来るべきじゃなかった。それに亡くなる前に会わなくて良かったと思う」


 彼女は続ける。こんなにしおらしい花梨さんを俺は初めて見た気がする。普段からは想像ができないほど、慎重な口調だ。


「私とあの人の世界はあの当時大切なものであって、今に残すべきものじゃないから。それに過去の世界に会いたいと願いながら死ぬなんて、残されたものにとってはただ苦痛や後悔が残り続けるだけ。私の存在は、あの奥さんにとって酷なだけよ」


 俺と花梨さんは無意識のうちにあの時の女性を思い出していた。

 喪服に包まれた小さ肩は小刻みに震え、今にも泣き崩れる寸前だった。亡き夫の愛人との対面に、慣れているはずはなかった。


「でもついてきてくれてありがとう。この場に来ることができて、なんだか色々と吹っ切れた気がするわ」


 彼女は憂い顔で空を見上げていた。

 俺はポケットから粗雑に煙草を取り出し、彼女にも一本差し出す。俺は彼女が今までどれくらいの恋をしてきたのかはわからない。今回の恋がどれくらいの強さだったのかも、本人にしかわからない。でもその一つの恋はようやく今決着がついたのだと思えた。花梨さんはこれからどういう風に変わっていくのだろうか。

 火葬場の煙突から溢れ出た煙は、煙草の煙と重なりながらじわじわと夕焼けの空へと広がっていった。

 葬儀場から六本木に帰ってきた俺は花梨さんと別れ、店をいつも通りの時間に開けることにした。

 そんなことがあった当日なので、彼女は飲みには来なかったが、トミーさんが女性連れで早い時間に来店し、コンさんは閉店間際に一杯だけ飲みに来た。二人とも俺には何も聞いてこなかった。


 今日もうちの店にはろくな客がいない。

 今俺の目の前に座っている男性は所謂バーホッパーだ。バーホッパーとは、一晩の間に何件ものバーを梯子するようなバー好きな人達のことである。今俺はそのバーホッパーの男性から注文を受け、ギムレットを作り提供したところだ。六月に入り暑くなってきたので涼しげなモヒートをオススメしてみたが、その男性は注文を変えなかった。


「さっきのマティーニはまぁまぁ飲める味だったが、このギムレットはイマイチだな。もっとシェイクの時に手首の返しを意識すると氷が上手く回ってしっかり空気が入るかもしれないぞ」


「ありがとうございます。精進致します」


 俺は深々と頭を下げる。一年間のアルバイトしか飲食経験のない俺のカクテルが、他の店よりも旨いわけがない。

 男性はイマイチなギムレットを二口で飲み終えると、さっさと会計を済まし、店を後にした。またこの後違うバーへ向かのだろう。

 やはりうちの店にはろくな客がいない。

 飲食店での話に限らず、日本人は客の立場を利用して言いたい放題な奴が多い。どこかの誰かが言った「お客様は神様」を真に受けている「お客様」が多すぎるのだ。

 しかもこういう時に限っていつもの三人は誰も飲みに来ていない。近くに誰か味方がいてくれると、心強いものなのだが。

 俺がそんなことを考えながら一戦を終えた余韻に浸っていると、それを見計らっていたかのようにいつもの三人が揃って入店してきた。全くなんてタイミングだ!

 偶然ビルの入り口で出くわしたという三人は、カウンターに座りいつものようにどうでもいい話に花を咲かせている。花梨さんの様子を見ると、もう何ともないようであった。

 あれ以来花梨さんは一人で来ることがなかったので、話をする機会がなかった。一人ではないと言っても、一緒に来ていたのは女性とだけだった。もしかしたら詐欺女は卒業するつもりなのかもしれない。


「今日は私が奢っちゃうわよー!あんた、一番高い酒を持って一緒に座りなさーい!」


 真剣に付き合うことができる彼氏でも見つけたのか、彼女はどうやら機嫌が良いらしい。

 

 さぁ今日の夜は激しくなるぞ。

 俺は二日酔いになる覚悟を決め、もう他の客は入ることができないようにしようと、俺は店の看板を消しに入口ドアへと向かった。

 その時、一人の男性が入店してきた。


 成金の息子だ!


「花梨さんひどいじゃないですか! あの夜から何も連絡くれないなんて。僕とは遊びだったんですか?」


 コンさんとトミーさんは顔を見合わせている。

 僕は何の言葉も出てこない。

 その時、ものすごいスピードで彼女の右腕が動き、息子の左頬を握りこぶしで殴っていた。驚きながら吹っ飛ぶ息子。

 彼女は殴った右手を摩りながら言う。

「だからガキは嫌いなんだよ!」

 

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