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ひとまず落ち着こう。落ち着いて、現状に至った理由を振り返ってみよう。うん。
いわゆる【転生】というものをしたらしい、と気付いたのは、生まれた時だったと思う。
急な不安感や息苦しさ、眩しさを感じ、しかし目は開かないし、体も自由に動かせない。ただ、色々な音が聞こえてたような気がする。
何て話してるのかはわかんなかったけど、いくつかの人の声や物音。それから、フワッと体が浮いた感じがして驚いて、人に抱っこされてることに驚いて、優しく語りかけられた(ような気がした)ことで、何故か何となく自分が赤ちゃんになってるんだって感じた。
今思えば何でそんな荒唐無稽なこと思ったのか分かんないけど、何となく感じたんだ。自分が赤ちゃんになってて、今抱っこしたり顔に触れたりしてる人達は、私のママとパパなんだって。自分でも不思議なんだけどね。
それからのことは、実はよく覚えていない。なんせ生まれたての赤ちゃんだったから、すぐ寝ちゃうんだ。起きるのはお腹空いた時と排泄した時位。自分で言うのもなんだけど、すっごく手の掛からない子だったと思う。
目が開くようになっても視界はぼんやりで色もよく見えないからちょっと怖かった。ちゃんと見えるようになるのかなって。言葉も分かんないから、おそらくママパパだろう人達と、その他によくお世話してくれる人達を、話しかけてくる声や調子だけで判別してたんだ。
(あ、ママ。もうお腹いっぱいなので、結構ですよー。ごちそうさまでしたー。)
初めは慣れなかったおっぱいを飲むのも少しずつ慣れてきて、若干起きてる時間には沢山構われて周囲の愛を感じる日々。
幸せな赤ちゃんライフがスタートしたんだと思った。
でも、ある日大きな音や緊迫した声が続いた後、おもむろに抱き上げられた。いつも優しく抱っこしてくれる人達とは違う匂いや荒々しい乱暴な扱いに、思わずか細い声で泣いたら大きな手で顔を塞がれた。こちとら生まれたての赤ちゃんなので、当然鼻も口ももろともに全部。苦しくて苦しくて死んだと思った。けど、生きてた。生きてたけど、明らかに周囲がおかしかった。
肌に感じる風。風で揺れる木々や草の音。遠吠えや小動物?の動く音や声。ぼんやり見える視界は暗くて確かじゃないけど、多分森。てか、何となくわかるけど、明らかに森。危ない感じの。
勝手に口から泣き声が漏れる。ふみゃふみゃと小さな声。でも、遠くでまた遠吠えが聞こえて、びっくりして止まってくれた。代わりにしゃっくりが出てきたけど。
(何があったんだろ? 強盗? ママやパパはどうしたのかな? 他の人達は? ・・・・・・・私、このまま死んじゃうのかな・・・)
怖くて、不安で、でも身動ぎすらできないどうしようもない現状に、また泣きそうになった時、ふと、また前世を思い出した。
前世の私は自分が嫌いだった。どうしようもない自分が。できないことや不幸なことばかり数えて、でも頑張ろうとしない自分。結局そのまま死んでしまった。もっとやれることがあったはずなのに。もっと頑張れたはずなのに。
(また諦めるの? また後悔したまま死ぬの?)
(死ぬ間際に思ったじゃん。もっと幸せになりたかったって。もっと頑張れば良かったって。)
(でも私に何ができるの? 動くことすら無理なのに・・・)
(そうやってまた自分に言い訳して逃げるの? それで良いの?)
前世の自分が問いかけてくる。・・・良いわけない。良いわけないよ!
だって私はもっと生きたい。もっともっと幸せになりたい。今回の人生では、愛されて幸せになれるんだと感じてたから。諦められないよ!
(じゃあ頑張って。諦めないで。 『私』の分も生きて・・・今度こそ幸せになろう!)
心が決まった瞬間だった。そうだ、私は生きたい。生きて、幸せになりたい。その為に、やれることはやろう。幸せになるために、最後まで諦めないで頑張ってみよう。




