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第八章 進君と果し合いの関係 5

本日予定を変更して2話投稿します。

よろしくお願いします。

放課後、例の河川敷公園で進は龍之介の事を待っていた。進はかなり気合いが入っているようで、頭に日の丸が入った鉢巻きを巻いていた。

「待たせたな」

 時間になると、龍之介がやって来た。空はまだ蒼く色が赤くなるまで大分時間があった。

「まさか、お前が俺に戦いを挑んでくるとは、な」

 開口一番、龍之介はそう言った。

「それで、俺に止めて欲しい事とは何なんだ。果たし状には何も書かれていなかったが」

「えっ」

 龍之介の発言を聞いた進は一瞬ドキッとした。彼は肝心の要求について書き忘れたのだった。自らのマヌケさに進は落ち込んだが、気を取り直すと、

「いますぐ綾香ちゃん以外の女の子とフラフラ遊ぶのを止めて欲しい」

 自分の要求を龍之介に突きつけた。お気に入りの後輩が突然そんな事を言い出した事に龍之介は困惑した。

「俺に女の子とつき合うのを止めろ。って……何で急にそんな事を言い出したんだ」

「それは、あなたのせいで女の子……たちが泣いていると聞いたからだ。生徒会役員として、生徒会長がそんな非道な事をしているのを許している訳にはいかない」

「はあ」

 進の話を聞いた龍之介は嘆息した。

「あのな、岩清水。お前、もしかして俺が遊びで女の子とつき合っていると思っているのか」

「当たり前でしょ。というか、それ以外考える余地はないし、会長は昔から色々な女の子と仲良くして来ているというお話ですしね」

「確かに、昔はお前の言う通りだった。だが、今は違う。俺がたくさんの女の子たちとつき合うのには別の目的がある。と言っても、信じてはくれないと思うが」

「当然でしょ。信じて欲しいと言うのなら、まず、その目的について話して下さい」

 龍之介は首を横に振った。

「悪いがそれは言えない。家族にだって理由を話した事がないんだ。だから、将来妹婿になるかもしれないお前にも話してやる事はできない。ただそれではお前も納得できないだろうから、少しヒントを与えるとすると、俺は将来平流と源流の法術の他に柳流忍術の当主も継ぐ事になっている」

「それは聞いています」

「俺が女の子とつき合うのはそれに関連する事で、決して遊びでつき合っている訳じゃないんだ。もちろん本気になった事は一度もない。俺が本気なのは綾香だけだからな」

「遊びでも本気でもない?それは相手の女の子に対して失礼ではないのですか」

「確かに失礼なのかもしれない。だが、俺は、平、源、柳の各一族の(おさ)となる身で、一族数千人の将来の繁栄について責任があるんだ。だから、私情を挟んで女の子たちとつき合うのを止める訳にはいかないんだ」

「でも、相手の女の子は会長と恋人になりたくて会長に近付いて来ているんでしょ。それでは相手の女の子があまりにも憐れではないですか」

「そうかもしれないが、な、岩清水。俺は女の子とつき合う前に、『俺には許嫁がいて、将来その子と結婚するから、君とは友達にしかなれないよ』と断ってから、それでもいいと言う女の子としかつき合っていない。それが俺の最低限の良心何だ。だから、俺が利用している女の子はそれでもいいと言う子ばかり何だよ」

 龍之介が女の子たちとつき合うのは一族の繁栄の為である。その上、龍之介とつき合う女の子たちは、龍之介とは友達以上の関係になれない事を承知の上でつき合っている。

龍之介はそう衝撃の事実を告白した。

――世の中には、そんな奇特な条件でも会長とつき合いたいという女の子がいるのか。その上、会長は一族の為に行動している?本当かどうか分からないけど、もしそうだとすると、会長が一方的に悪いとは言えないじゃないか。

それを聞いた進は少なくないショックを受けた。だが、進はその事実を突きつけられても自分の考えを変える事は無かった。

 ――ああ、舞香。君のお兄さんはそう言っているけれど、それでもお兄さんが君を泣かしている事には変わりがないのだろう?だから、やはり僕は闘う事にするよ。

 それどころか、逆に覚悟を決めた。そして、自分でも言ったのが分からなかったくらいの小さな声で、全然そんな気はなかったのに、「舞香」と進はポツリと呟いてしまった。

 それは本当に小さな、小さな声だったのだが、龍之介には聞こえてしまった。そして分かってしまった。

進が果たし状に書いていた『女の子たち』というのが、たった一人の女の子しか指していなかった事を。

進の目的が龍之介と女の子たちを別れさせる事では決してなかった事を。

 寧ろ、進にとってはその子以外の女の子の事などどうでもよく、その子を悲しませる龍之介が許せなくてこうして龍之介に挑戦して来た事を。

 けいちゃんたちが進に指摘したように、龍之介も妹が自分の事を好きだという事は知っていた。ただ、妹が自分の事を異性として愛している事は龍之介の想像の埒外であり、単に懐いているという認識であり、龍之介が他の女の子と仲良くすることに対して可愛らしいやきもちを焼いているという理解であるのもけいちゃんたちの想像通りであった。

 その妹の軽いやきもちが進をここまで動かした事だけが龍之介にとって意外だったが、逆にたったそれだけの理由で体を張る進の事を「天晴れとな奴だ」と思い、内心賞賛した。

 だから、龍之介は、

「問答無用。さあ、僕と勝負しろ」

 そう挑戦してくる進に対して、

「分かった。お前がそこまで言うのなら仕方がない。さあ、かかって来い!」

 進のその心意気を買い、全面的に進の挑戦を受ける事にした。

「うおおおおお」

 そう威勢のよい咆哮と共に進は龍之介に向かって行った。

しかし、進と龍之介では実力に差があり過ぎた。そもそも龍之介と舞香では龍之介の戦闘能力の方が上である。だが、その舞香は不良グループを一人で壊滅させる実力の持ち主である。そして、進はその舞香にすら全然歯が立たなかった。

以上の事実から、龍之介と進の間にかなり実力の開きがある事が分かる。

しかも、進の心意気を買っていた龍之介は、急所こそ狙わなかったものの全然手加減をしなかった。だから、

「ほあ」

 龍之介の掛け声と共に、進は簡単に吹き飛ばされた。しかも、

「岩清水、まさかこれで終わりじゃないだろうな」

 龍之介は進に対して全く容赦がなく、挑発的に振る舞った。進もそれに応じて、

「冗談でしょ。まだまだ」

 意気軒高で、

「うおおおおお」

 再び龍之介に立ち向かって行くのだった。

 そんな事が延々と繰り返された。


本日もう1話投稿します。

20時の予定です。

よろしくお願いします。

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