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第六章 進君と魍魎退治の関係 3

本日2話目の投稿となります。

よろしくお願いします。

 舞香が封禅の儀を始めると同時に、この前の学校の時と同様、地面が光り出した。そして、先程進が突き刺した小剣が地面に沈み始めた。これらの小剣が完全に地面に沈み込んだ時こそ、封禅の儀が完了した合図なのである。

 封禅の儀を開始すると当然の様に魍魎も現れた。魍魎の構成は、大人の女性の恰好をした人間型の魍魎が一匹と、その他蟲型の魍魎が二十匹という所であった。

 ――この前の時より数は少ないみたいだし、これは楽勝かな。

 そう素人の進は思ったが、龍之介と綾香の表情は芳しくなかった。

「もしかして、雰囲気からすると、あれは生霊(いきりょう)じゃないかなあ」

「そうかもな。だとすると、ちょっと厄介かもな」

 と、何やら深刻そうに相談している。訳が分からない進は当然二人に聞いてみた。

「生霊?それは何だい」

「生霊とは、この世に存在する人間の魂の一部が魍魎として活動している魍魎の事だよ。岩清水君は知らないだろうけど、そもそも法術使いが魍魎と戦う時は、二種類の事なるエネルギーを操って戦うの」

「二種類のエネルギー?」

「そう、それがこの世のエネルギーとあの世のエネルギー。法術使いは、体内に存在するこの世のエネルギーである生命エネルギーと、あの世のエネルギーである魂の力を使って戦うの」

「ふ~ん」

「それでね、魍魎もね、やはり二つのエネルギーを使って攻撃してくるの。ただし、魍魎の場合、魂の力を使うというのは一緒だけど、魍魎には肉体がないでしょ。だから生命エネルギーは使えない。ということは」

「ああ、それでさっき言っていた地脈のエネルギーを使うのか」

「そう。普通の魍魎ならそれで合っている。でも、生霊の場合はちょっと異なるの。何せ生霊の場合、魂を通じてこの世界のどこかにいる誰かの肉体と繋がっているから」

「成程。生霊は地脈のエネルギーの他に生命エネルギーも使える分強力だから厄介という事なのか」

「岩清水君は理解が早くて助かるよ。本当、頭いいんだね」

 綾香がそこまで説明した時だった。

「がおおおおん」

 魍魎が咆哮した。魍魎は敵意剥き出しの目で進たちを睨みつけてくる。

「行くぞ」

 掛け声と共に勇躍して突撃して行った龍之介に、先触れとして蟲が一度に十匹ほど襲いかかって来た。だが、龍之介にとって蟲など何程のものではなく、数回刀を振るっただけで、全部叩き落としてしまった。

 しかし、本命の人間型のボス魍魎に対してはそう簡単にはいかなかった。

「うが」

 ボス魍魎はそうやって気合を発しながら上手い具合に攻撃を受け流してくる上に表面装甲が堅いので、龍之介が大上段から勢いよく刀を振り下ろしても中々ダメージを与える事ができないのだった。

 更にボス魍魎の反撃は鋭く、攻撃された時には受けるしか手がなく、龍之介はかなり苦戦しているのだった。

 龍之介の戦いぶりを見た綾香は嘆息した。

「普通の武器しか持って来ていないから、やっぱあれは龍君一人だときついかな。しょうがない。私が手伝って金剛の術を使うしかないか」

「金剛?」

「ええ。術者本来の生命エネルギーに地脈のエネルギーを上乗せする術だよ。この術を使うと、自分の生命エネルギーの他に地脈のエネルギーも使えるようになるから戦闘能力が上がるんだよ。ただし」

「ただし?」

「これは一人では使えない術なの。もう一人協力する必要があるの。そんな訳で、私、龍君の所へ行くから、少しの間舞香ちゃんの事お願いね」

「え、ちょっと」

 龍之介の危機を見て取った綾香は、進が言う間もなく、龍之介の所へすっ飛んで行った。

「龍君、はい」

「おう」

 龍之介の所へ行った綾香はそう言って龍之介と手を繋ぐと、目を閉じ、何やらぶつぶつと唱えた。すると、突然龍之介の体が光り出し、

「行くぞ」

 新たな力を得た龍之介は再び魍魎へ突っ込んで行った。龍之介は、今度は攻撃しても魍魎に押し返される事は無く、少しずつ順調に魍魎を追い込み始めた。

 この(かん)、ほんの一分にも満たない短い時間だったが、待っている進にはものすごく長い時間に感じられた。というのも、ボス魍魎を取り巻く蟲の内の一匹が進の方へ向かって来たからである。

「ひええ。こっちへ来るな」

 進は情けない悲鳴を上げながら持っていた短刀を滅茶苦茶に振り回したが、無論、そんな出鱈目剣法が蟲に通じる訳がなく、刀身はただ虚しく空を斬るだけであった。

 それでも、進が決死の覚悟で振り回したおかげか、多少の威嚇効果はあったらしく、蟲は進と舞香の周りをグルグル回るだけでそれ以上襲ってこなかった。

 そのうちに、

「えい」

 龍之介の強化を終えて戻って来た綾香が蟲を叩き斬ってしまったので、進が戦う必要も無くなった。

 一方の龍之介の方も、力を得た勢いでボス魍魎をどんどん追い詰めて行き、

「ちぇすとおおお!」

 最後は決めゼリフと共にボス魍魎を真っ二つに切り裂いてしまった。

 それと同時に、

「はい、終わり」

 舞香も封禅の儀を終えた。

 こうして、進の初めての魍魎退治は最初こそちょっとだけ苦戦したものの無事に終了したのだった。


本日あと1話投稿します。

20時の予定です。

よろしくお願いします。

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