表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/50

第六章 進君と魍魎退治の関係 2

本日1話目の投稿です。

本日は3話投稿します。

よろしくお願いします。

三番乾ドック。

こここそが今回魍魎が現れたという場所だった。

乾ドックは水を抜いた状態で船の建造・修理を行えるドックの事で単にドックと言えばこの乾ドックの事を言う。このドックの中にも水は無く、巨大な貨物船が一隻係留されていた。ドックに入ったばかりなのだろう。船底にはまだ貝殻がびっしりと付いていた。

この乾ドックの周囲には規制線としてビニールテープが張られていたが、龍之介たちはそれを乗り越えると中へ入って行った。

中へ入った所で、初めて本格的に魍魎退治の現場に臨む進に龍之介が声を掛けて来た。

「ようこそ、世界の裏側へ」

「世界の裏側って……脅かさないで下さいよ」

「別に脅してはいないんだがな、本当の話さ」

 龍之介が言った『世界の裏側』という言葉。それは脅しでも何でもなく単なる事実で、龍之介はそれを言っただけに過ぎなかった。

 だが、進にとっては恐ろしい事に違いはなく、ビビった進は、「ですよね」と弱々しい声で言った。

「まあ、いい。それよりもこの仕事の状況を説明するから、しっかり聞いておけよ」

「はい」

「三日前の事何だが、夜中にドック内をJKKの警備員(ガードマン)が巡回していたんだ」

 JKKとTHIは元々別の系列の会社だったのだが、現在ではJKK・THIホールディングスという共通の持ち株会社を作り企業グループを形成している。だから、グループ内の企業という事でJKKが格安で警備を請け負っているのだった。その代りに、JKKはTHIに警備資材の製造に使う資材を安く卸してもらっていたりするのである。

「その警備員は普通に見回りをしていた訳だが、この三番乾ドックから人の声の様なものが聞こえたらしい。それでこっちへ様子を見に来たという訳だ」

「で、ここで何かあったと」

「そういうことだ。その警備員は、ここで転落事故を起こしたんだ。表向きは足を滑らしたという事になっているが、実際は……」

「魍魎に襲われたってことですか」

「そういう事だ。岩清水、お前も大分分かって来たじゃないか」

「それほどでも」

 ――本当は、分かりたくはなかったけどな。

「幸いなことに警備員は骨折するなどして大怪我は負ったが、命には別条がなくて、状況を聞く事ができた」

「へえ、それはよかったですね」

「だな。で、その警備員は『誰かに突き落とされた』と証言している。その時間にここに誰も居るはずがないのにな。警察が調べたが鍵がこじ開けられたとかいった様な人が侵入したという痕跡は無かった。で、俺たちにお鉢が回って来たという訳だ」

 そこまで言うと、龍之介は荷物の中から布袋を一つ選び出すと、中から小剣を取り出して進に渡した。

「これは?」

 と、聞く進に答えてくれたのは、

「それは『(ほう)(ぜん)()』に使う小剣だよ」

 舞香だった。舞香の説明はさらに続く。

「そもそも魍魎が活発に活動する場所は地脈が乱れている事が多いの」

「地脈?」

「そう。地脈とはこの世界の目に見えないエネルギーの流れのことね。この流れが正常な状態から外れていると、魍魎が跳梁跋扈するの。乱れた地脈のエネルギーというのは魍魎にとって利用しやすいものだから」

「へえ、そうなの」

「その乱れた地脈を元の正常な状態に戻す儀式が封禅の儀なの。まず魍魎を退治して、それから地脈を正常に戻して魍魎が活動できない様にする。それが舞香たちの魍魎退治のやり方ってわけ」

「ふ~ん」

「で、あんたが持っている小剣は儀式に使う道具ってわけよ。だから、イスム。まず、あんたは舞香が言う通りにその小剣を地面に突き刺して行きなさい」

「分かった」

 進は舞香に言われた通りに小剣を地面に突き刺して行った。

三番乾ドックの地面はコンクリートで舗装しているので一見小剣など刺さりそうにないのだが、一体この小剣は何でできているのか、まるで豆腐に針を突き刺すかのようにサクサクと刺して行く事ができた。

進が作業を終えると、きれいな五傍星の形をした魔法円が出来上がった。舞香はその魔法円の中心に立つと、

「これ」

 そう言って、進に一振りの短刀を渡してくれた。短刀と言っても結構長い物で普通の刀の半分くらいの長さがある物であった。

「これは?」

「平流、源流で使う護身用の短刀よ。あんたの役割は一応『防』だけど、無理して戦う必要はないからね。自分に襲いかかってくる魍魎だけをそれで追い払いなさい」

「ぼう?」

 またしても聞き慣れない言葉を聞いた進の顔に?マークが浮かんだが、その疑問に答えてくれたのは綾香だった。

「魍魎退治には三つの役割があるんだよ。まず、『(こう)』。これは魍魎に積極的に攻撃して行くのが仕事。今回、と言うより、私たちのチームでは龍君がこの役割を担っているの。そして、次が『(せい)』」

「せい?」

「そう。制は封禅の儀を行って地脈を制御して正常に戻すのが仕事なの。地脈を正常に戻して行くとその途中でもどんどん利用できるエネルギーが少なくなって魍魎が弱って行くから、すごく大事な作業ね。これが舞香ちゃんの担当。舞香ちゃんね、地脈を制御するのが天才的に上手いの。そして」

「そして?」

「さっきも言ったけど、私と岩清水君が担当するのが『(ぼう)』」

「そうだ、それはどんな仕事なんだい」

 自分の仕事がどんなものか気になって仕方がない進は、急き立てるように綾香に聞いた。

「そんなに慌てなくてもいいよ。気持ちは分かるけど。

「ご、ごめん」

「別にいいよ。……それで、防の役割はね、襲いかかってくる魍魎から制の人を守る事なの。封禅の儀を行っている最中の制の人はすごく無防備だから」

 これで綾香の説明は終わった。

 となると、いよいよ、である。

「それじゃあ、舞香。そろそろ、始めろ」

「オーケー、お兄ちゃん」

 こうして進の初めての魍魎退治が始まった。


本日あと2話老侯の予定です。

14時と20時の予定です。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ