第一章 進君とオカルト大好き人間の関係 2
本日3回目の投稿です。
よろしくお願いします。
そもそも、新一年生の進がなぜ生徒会書記をしているのかというと生徒会書記は新一年生の中から選ぶという伝統が某市学院にあるからなのである。
では、どうやって選ぶのか。
某市学院では入学式の一週間前に中等部から進級してきた学生と高校から新しく入って来た学生を集めて実力テストを行う。その実力テストで学年一位の成績を取った者が生徒会書記になるのである。
つまり、進は学年一位の学業成績だったから生徒会書記に選ばれてしまったのである。生徒会書記=学年一番の生徒という事なので、名誉と言えば名誉なことであったが、反面、忙しいことも確かであり、進にとってはありがた迷惑なのであった。
さて、進は生徒会室へ行く前に学校の事務室に寄った。ここで生徒会室の鍵を借りるためである。
某市学院の場合、各教室、その他部屋の鍵は職員室ではなく全て小中高共通の事務室に置いて一括で管理しているのだ。教師だって教室を使うためには一々事務室に鍵を借りに来なければならない決まりなのである。
多少面倒臭いシステムではあったが、学校の理事会の方針として、鍵の管理を徹底して不審人物が侵入できないようにするという事になっているのでこうなっている次第である。
進はいつものように事務室の前に行き、入口のドアの横にある木枠で囲っている四角い小さなガラス窓をコンコンと叩いて、
「すみません。高等部の生徒会室の鍵を借りたいんですが」
と、中へ声を掛けた。進が『高等部の』という形容詞を付けたのは、某市学院では初等部の児童会室、中等部の生徒会室、高等部の生徒会室と生徒会室だけで三つもあるからだ。
「はーい」
進が声を掛けると中から事務のお姉さんが出て来て進の顔を確認すると、
「ここに名前を書いてね」
貸し出し名簿に名前と貸し出す鍵を記入させ、
「どうぞ」
最後は笑顔で進に鍵を渡してくれた。
「ありがとうございます」
進はお礼を言うとさっさと踵を返して生徒会室へ向かった。生徒会室は二階にあるが、事務室からすぐの階段を上がれば目の前にあるのでそんなに離れている訳ではない。
時間にして一分ぐらいで生徒会室に到着した進は古くなりガタが来ている鍵を、ガチャガチャという音を立てながら開けると、中へ入った。
中へ入った進はおもむろに生徒会室の中を見回した。無論、誰も居ない。誰も居ないが、中はさっきまで誰かが居たかのように散らかっていた。
「また、会長が後片付けをせずに帰ったんだな」
進は嘆息しつつも、机の上の資料やら本やらを棚に戻し、ゴミをゴミ箱に捨てると、カバンを机の上に置いた。そして、いつも自分が座っている座席に腰を下ろすと、
「さて、始めるか」
今日中にしなければならない次の全校集会で使う資料の作成を始めるのだった。
本日中に1章分投稿します。
あと4話あります。