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第五章 進君と恋愛大作戦の関係 4

本日1話目投稿です。

お楽しみいただければ嬉しいです。


「助けてください」

 その時、薄暗い路地の奥から小さな悲鳴が聞こえて来た。

「イスム、行くわよ」

 助けを求める声を聞いた舞香は、反射的に、声の方へ向かって走り始めていた。

「ちょっと、待てよ」

 脱兎のごとく飛び出して行った舞香の後を進は慌てて追った。

「金出せよ。カ・ネ!」

「そんなあ。僕お金持っていないです」

「いいから出せよ」

 路地の奥では、中学生らしき男子学生(雰囲気的に)が、不良が多いとして有名な市内の高校の高校生たち(こちらは制服で分かった)に絡まれてカツアゲされようとしていた。

「あんたたち、弱い者いじめはやめなさい!」

 舞香は敢然と不良たちの前に立つと、鋭い声でそう言い放った。

「何だあ。お前は」

 舞香に言われて腹が立ったのだろう。不良たちは中学生の事を放置すると舞香の方へ向かって来た。

「こいつう。お水の分際で一丁前に正義の味方気取りか。お水はお水らしくスナックで客の相手をしていればいいんだよ」

「あたしはお水じゃない!」

 折角の気合いの入った衣装を不良たちにお水呼ばわりされた舞香は、顔を真っ赤にして怒ると、更に舌鋒鋭く不良たちに喧嘩を売った。

「それに……あたしは自分のことを正義の味方だなんて思っていないわ。ただ、一人を相手にするのに集団でする様なクズが大嫌いなだけよ。気に入らない奴は、ぶっ飛ばす!それがあたしの流儀よ」

「クズだと!それは俺たちの事か」

「他に誰が居るって言うのよ。このクズ!」

「このアマ。こっちが女だと思って優しくしてやれば調子に乗りやがって。構わねえ。服をひんむいて駅前にでも晒してやれ!」

 クズと言われて頭に来た不良たちはいきり立ち、舞香に襲いかかって来た。

「まず、一人目!」

 だが、舞香は恐れ気も無く不良たちの中へ突っ込んで行くと、そう叫びながら、不良たちの攻撃を上手く回避しつつ、一人目の不良のみぞおちへ思い切り蹴りを入れた。

「ぐふっ」

 一人目の不良はそう短く声を上げると、体をくの字に折れ曲がらせながら、その場に倒れ伏してしまった。

「こいつ!」

 仲間を倒された不良たちは数を頼みに次々に舞香に挑んできたが、舞香はうまく立ち回ってなるべく一対一の状況を作り上げると、

「ふん」

「ぐえ」

 そんな風に、不良たちを一人ずつ確実に倒していくのだった。

 進は最初舞香の戦いぶりを心配しながら眺めていたのだ。

――そういえば、こいつ、忍術の修業をしたって言っていたな。

 だが、その事を思いだすと、大分気持ちに余裕ができて、安心して舞香の戦いを見守り始めた。そして、見守っているうちに何だか情けない気持ちになった。何が情けないのかというと、舞香に加勢してやれない自分に対してである。

 ――こいつは、自らの危険を省みず不良たちに立ち向かっていっているというのに、僕は……情けない。

 進は悔しがった。悔しがって、何度か舞香に加勢しようと試みたのだが、足がすくんでしまって結局何もできなかった。

 ――人の為に体を張る事ができる。こいつ、意外に熱いものを持っていたんだな。単に嫌なだけの奴じゃなかったんだ。普段の悪行と合わせると、相殺して善悪の差し引きはゼロ、いや、まだマイナス何だろうけど、いい事はいい事として見直してやらなきゃな。

 この事が進の中で舞香の評価を、それはほんのチョビッとだったが、変えた。進の中で舞香の立ち位置が変わるきっかけになったのだ。

 それはともかく、ものの五分も経たない内に、

「ぷぎゃあ」

 最後にはそんな情けない悲鳴を残し、不良たちは全滅し、全員地にひれ伏した。

「ふん」

 不良たちをやっつけた舞香は鼻息を荒くしながら、パンパンと手を叩いて埃を払った。

「それじゃあ、イスム。行くわよ」

 不良を片づけた舞香はさっさとその場から立ち去ろうとした。そう、彼女にはこの後にまだやる事があるのだ。

「ちょっと待ってください」

 立ち去ろうとする舞香たちに中学生が慌てて駆け寄って来た。

「何、こう見えても、あたしは忙しいの」

「あの、助けてもらって、ありがとうございます」

 中学生は頭を下げながら舞香にお礼を言った。だが、舞香は、

「お礼なんか別にいいから早く向こうへ行きなさい。舞香、こいつらみたいなクズを見るのも嫌いだけど、あんたみたいなグズを見るのも嫌いなの」

 中学生を邪険に扱うと、さっさと向こうへ行けとばかりに、ヒラヒラと手を振った。

「ありがとうございました」

中学生は先程よりも大きな声でもう一度お礼を言うと、これ以上邪魔をしてはいけないと思ったのだろう、ペコっと頭を下げるとさっさと走ってどこかへ行ってしまった。

舞香と中学生のやり取りを見ていた進は、

 ――何か、どこかで見た光景とどこかで聞いたようなセリフだな。

 そう思ったがこの場では思い出せず、その上、次に起こった悲劇的な出来事の為、これから当分の間この記憶は忘却の彼方へと追いやられる事になった。

 その悲劇的な出来事というのは……。


本日あと1話投稿します。

20時の予定です。

よろしくお願いします。

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