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第一章 進君とオカルト大好き人間)の関係 1

本日2回目の投稿です。

よろしくお願いします。

桜が咲き乱れる春の東京近郊。人口四十万人強の某市。

ここに私立某市学院はある。某市学院は小学校から高校までの小学校兼中高一貫校で、全国でも有名な進学校である。某市学院の敷地は広大で、市外から入学してくる生徒の為の学生寮や数十万冊の蔵書量を誇る図書館などの設備も充実している。尚、一貫校ではあるが、中学、高校の各時点で入学試験を実施し、外部から若干の生徒を募集している。

進もそんな風に高校生になり外部から入って来た生徒の一人であった。

妖精さんに助けられた時はまだ小さかった進も高校生一年生になり、背も伸び、紺のブレザーに赤と白の縞模様のネクタイという制服が似合ういっぱしの青年になっていた。

そんな進が今居るのは、某市学院の部室棟である。

「世の中には科学で説明できない事がある」

 その部室棟の中のオカルト研究会の部室で進にそう持論をぶつけているのは、進より一つ先輩の荒川博士あらかわひろし先輩である。

――博士(はかせ)と書いてひろしと読ませる何て、親もベタベタな名前を付けたものだな。

進は荒川の名前についてそんな感想を持っていた。確かに彼の名前はベタだった。それも筆ではなく、壁にペンキを塗る時に使う刷毛で塗った様なベタな名前である。

「例えば、日本ではあまりメジャーではないがミシガントライアングルというものがある。ここはアメリカ五大湖の一つミシガン湖の中の流域で、今までに多くの航空機や船舶が行方不明になっている。バミューダトライアングル何かは海で急な嵐とかで行方不明になったのかもしれないが、ここは内陸の穏やかな湖だ。だから、ここはガチ、だと俺は思う」

 荒川は今日も元気に世の中で起きている不思議な出来事について進に熱く語っていた。

入学式当日。

「岩清水君、オカルト研においでよ」

 中学の科学部で仲の良かった荒川にそう誘われてオカルト研に入部して以来、進は毎日伝説のムー大陸はだとか、黒魔術はだとか、UMA(ユーマ)はだとか、といったオカルト話を延々と聞かされている。

「世の中の全ての事は科学で説明できる」

「例えば、アインシュタインの相対性理論が量子力学の世界では破たんすると言う話を聞いた事があるだろう?あれは、点という定義上面積を持たないモノを物質の極小の単位として考えているからで、極小の単位をヒモだと考えれば解決する可能性が高いらしい。そして、それを超ヒモ理論という」

 中学で科学部生だった時はそんな風にまだまともな事を喋っていたのに、

「俺には夢がある。世界の隠された真実を解明する事だ」

今ではこの有様である。そんな荒川は学内では、『頭の良い変人』と呼ばれている。

学年二位という優秀な学業成績にもかかわらずそんな戯言(たわごと)を所構わず言っていればそう呼ばれるのも無理はないのだが、本人は、「『頭の良い変人』いいね」と逆に気に入っている模様である。

――一体、高校に入って一年足らずの間に何があったのだろうか。

進はこの仲の良い先輩の変貌ぶりを心配せずにはいられないのであった。

「ヒイ君と岩清水君。お茶淹れたんだけど飲む?」

「おう」

「はい、いただきます」

 荒川の話に少々飽きて来た進だったが、隅田川葉月すみだがわはづき先輩の声を聞くと忽ち水を得て生き返った魚の様な顔になり、大きな声で返事をした。

 隅田川は進より二つ先輩で進あこがれの人であり、岩清水的美人ランキング不動の一位でもある。胸まであるストレートの黒髪がとっても素敵な清楚系美人であり、ほんのりと施された薄化粧がその美しさを更に引き立てている。

「将来の夢は公務員になり安定した生活を送る事だ」そう公言している進が毎日大して興味がない荒川の御高説を黙って聞いているのもこの人に会いたいがためなのである。

 ただ、隅田川に関しては一つだけ残念なことがある。

何とこの人。荒川の彼女なのである。しかも人前でも憚る事なくイチャイチャする様なラブラブのバカップルである。ついこの間も、学校内で荒川の腕に隅田川が巻きつくようにして抱きつきつつ甘い言葉を交わしている二人の姿を進は見たばかりだった。

 御世辞にもカッコいいとは言えない鬼瓦の様な四角い顔の所有者である荒川のどこを彼女が気に入ったのか進には分からない。聞いてみたいと思ってはいるが、シャイな進にはそれを聞くだけの勇気はない。でも、これだけは思っている。

 ――ああ、もったいない。もったいないったらありゃしない。よりにもよって荒川先輩の彼女だなんて。

 隅田川は進たちにお茶を淹れてくれた後、

「ヒイ君、白衣が破れている様だから直してあげるわ」

「ああ、お願いするよ」

 荒川から白衣を受け取ると裁縫道具を取り出し、白衣のほつれを直し始めた。進たちもまたオカルト話を再開したが、しばらくして、

「あ、そろそろ生徒会へ行かなきゃ」

 と、進が言い出した。進はオカルト研の他に生徒会の書記もやっているのだ。

「失礼します」進は中座した。

「それじゃあ、行ってきます」

 先輩たちにそう言い置き、進は生徒会室へと急いだ。


本日、もう少し投稿続きます。

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