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第四章 進君と嘘の噂話の関係 2

本日4話目の投稿です。

よろしくお願いします。

進と舞香の災難はこれで終わりではなかった。

 屋上での出来事の後、二、三日は二人の関係に変化はなかった。

舞香はなるべく接触を避けようとしたが、巡回の報告の為に会う事は止められなかった。だが、会ってもお互い気まずくて最小限の報告以外には口を聞かなかった。

「あいつはね、お兄ちゃんの子分だから、舞香も色々と手伝ってもらっているの」

 そう友達連中に説明するなど、舞香は噂を揉み消す為に色々工作していたみたいだが、『人の口に戸は立てられない』とはよく言ったものであまり効果は無かった。進の方は、『人の噂も七十五日』ということで、余計な事はせず噂が沈静化するのを待つ事にした。

 そんな週末の日曜日、進は家で勉強をしていた。

勉強ができる進は某市学院の特待生の資格をもらっており、授業料は無料である。ただし、この特待生の資格は成績が悪いと剥奪される可能性がある。そして、子沢山の岩清水家の家計では高額な某市学院の学費を賄う事が難しい。だから、彼は勉強を頑張って好成績を維持しなければならなかった。

朝早くから勉強していた進は、午後になり昼食の時間になる頃には今日の計画分の勉強を終えていた。

「さて」

 昼食を食べた後、進はこの後何をしようかと考えながら背伸びをしていた。すると、プルプルと携帯電話が鳴り始めた。進が電話に出ると、

「岩清水か?俺だ」

 電話の相手は龍之介だった。進は驚いた。こんな休日に龍之介の方から電話が掛かってくるなんて初めての事だったからだ。

「会長、一体、どうしたんですか」

「折角の日曜日に悪いんだが、ちょっと俺の家まで来てくれないか。話したい事があるんだ」

 会長に家に誘われた進は、

「いいですよ」

 と、気軽に了承した。どうせ家に居ても本を読むかテレビを見るかくらいしかする事が無かったし、市内では有名な会長の自宅の中を是非一度見てみたいと思ったからだ。

 進は部屋着から外行きの服装に着替えると、居間でテレビを見ていた両親に、

「ちょっと、生徒会の先輩の家へ行って来る。もしかしたら、遅くなるかもしれない」

 そう言い残して家を出た。

 ハイな気分の進は、「フン、フン、フン」鼻歌を歌いながら会長の家へ向かったが、その気持ちは会長の家へ着くとともに急速に凋んだ。

「どちら様でしょうか」

 大名屋敷を思わせる立派な造りの正門の所で、そう言って進に応対してきた門番がすこぶる怖かったからである。

「最初に会った時は、あっちの人かと思いましたよ」それは、進が後で龍之介に漏らした彼ら柳家屋敷の門番に対する偽らざる感想である。

 門番は三人いて、それぞれ、オールバック、角刈り、スキンヘッドという髪型をしていた。三人とも強面の上背が高くがっちりとした体格で、全員いかついサングラスとダークスーツで身を固めていた。

 三人のうち進に話し掛けて来たのはオールバックだ。これでも進から見て三人の中で一番ましな感じがした人物である。

「僕は岩清水と申します。会長に呼ばれて来たのですが」

 進はビクビクしながらも用件を告げた。進は普通に会長に呼ばれたと用件を伝えたつもりだったのだが、会長と聞いたオールバックは不審人物でも見るかのように進を睨みつけ、問い詰めるように話し掛けて来た。

「『会長』だと?バカも休み休み言え。会長がお前のような若造を家に呼んだりする訳が無いだろうが」

「えっ」

 問い詰められた方の進は反応に困った。

 ――そんな事を言われても……というか、若造って何だ。会長とは一つしか歳が離れていないはずなのに。

 困った顔をした進を見て、オールバックはいよいよ進の事を不審者だと確信したのか、

「それで、本当は何の用で来たんだ。正直に言わないと、このまま警察に突き出すぞ!」

 脅すように怒鳴りつけて来た。強面の門番に怒鳴られた進はすっかりビビッてしまい、この場から逃げ出したくなったが、逃げたら余計ひどい事になると思い直し、もう一度用件を言ってみる事にした。

「いや、だから、その、僕は、正真正銘、生徒会長に呼ばれて来たんですが」

「『生徒会長』だと!」

 生徒会長という単語を聞いた門番たちはお互いに顔を見合わせてざわめき立った。

「少々お待ち下さい」

 すぐにオールバックが門脇にある詰所に行き、どこかへ電話を掛けた。その表情には焦りの色が色濃く滲み出ていた。

 電話が終わると、オールバックは急いで詰所から出て来て、

「これは大変失礼致しました。若様のお友達でしたとは。どうかご無礼をお許しください」

 先程までとは打って変わった慇懃な態度で、三人揃って進に対して深々と頭を下げるのであった。

「いえ、分かっていただければそれでいいです。別に気にしていませんから」

「どうもありがとうございます。そう言って下さると助かります。どうぞ、お通り下さい」

 進が通されたのは門から大分離れた所にある母屋の玄関だった。

「岩清水、急に呼び出して悪かったな」

 玄関では太めの黒猫を抱きかかえた龍之介が進を待っていた。

「いえ、とんでもないです。こちらこそ呼んでくれてありがとうございます」

 その後目的地に続く長い廊下を歩いている間、龍之介は進に色々話してくれた。本当に色々話してくれたのだが、その中でも特に進の印象に残ったものをピックアップしてみる。

「門番に何か言われなかったか。あいつら仕事熱心でいい奴ら何だけど、ちょっと人相が悪いのがたまに傷何だ。まあ、不審者対策にはバッチリだがな」

 ――そうでしょうね。あの人たちに睨まれて生きた心地がする人何ていないでしょうからね。

「こいつか。この猫の名前はニャン太。子猫の時からかれこれ十年以上飼っている。もう結構なお爺ちゃん猫だ」

 ――そうですか。

「ニャン太何て変な名前だろ。舞香がつけた名前何だが、あいつは昔から自分の持ち物にちょっと変わった名前を付けて可愛がる癖があるんだ。持っているヌイグルミなんかにも変な名前を付けているしな」

 ――それはもう知っています。僕もイスム何て変なあだ名を付けられました。というか、可愛がられているのか?

「ニャン太は、な。若い頃は落ち着きが無くてイタズラ好きの猫だったが、最近ではすっかり丸くなって、イタズラもあまりしなくなって、いつもこいつのイタズラの後始末をしていたお手伝いさんが、『寂しい』とか言っているくらいだ」

 ――へえ、この猫暴れん坊さんだったんですね。というか、お手伝いさんが居るんですか。さすが金持ちは違うな。

 そうこうしているうちに、

「ここだ」

二人は目的地に着いた。進は龍之介の部屋にでも行くんだろうと漠然と思っていたのだが、着いた先は客間だった。しかも、龍之介は、

「岩清水……すまん!」

 突然進に謝ると、猫を抱えたまま逃げるようにどこかへ去って行ってしまった。

「あれ?一体何なんだ?」

 進は突然の事に事態を把握し切れないでいたが、取り敢えず客間の扉を開けてみる事にした。

「どうも、こんにちは」


本日残り1話投稿します。

22時ごろです。

どうかよろしくお願いします。

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