第二章 進君と電気工事の関係 3
本日最後の投稿です。
楽しんでいただければさくしゃはうれしいです。
この夜の三日前、会長である龍之介が生徒会の仕事をサボったあの日の出来事である。
「ここか。問題の場所というのは」
「そうだよ。お祖父ちゃんがここだって言っていたよ」
生徒会室を出た三人が来たのは校内にある祠だった。植物が鬱蒼と生い茂る数メートルの高さの小山の頂に置かれた祠は、龍之介が山の麓から見上げてみると、その神聖さを主張するかのように太陽の光を浴びて輝いていた。
「でも、魍魎が朝っぱらから出現するとはなあ。普通出てくるのは夕方位からなのになあ」
やる気が今一無いからなのか。そう愚痴る龍之介に対して、
「まあ、しょうがないじゃない。魍魎にだっていろいろいるんだし。いつも舞香たちが思っているようには行動してくれないよ」
「そうだよ、龍君。舞香ちゃんの言う通りだよ。一々、魍魎がなぜそんな行動をしたのか何て考えても、人間に魍魎の行動が理解できる事なんかあり得ないのだから、無意味だよ」
女の子二人は龍之介のやる気を少しでも引き出そうと必死なのであった。その甲斐あってか、二人の説得を受けた龍之介は、
「まあ、しゃあない。今朝お供え物を供えに来た当番の初等部の女の子が襲われたという話だし、これ以上の犠牲者を出さないためにも、一丁やるか」
「そうだよ。龍君。その意気だよ」
何とか少しだけやる気を取り戻し、詳しく調べるために渋々ながらも祠のある小山を登ったのだった。
「それで、舞香。お前の見立てで肝心の地脈の状態はどうだ。先に俺の意見を言っておくと、ここはひい祖父ちゃんが学校の要として祠を建てた場所だけあって元々地脈の力が強い所だ。そして、その強い地脈の力が随分乱れている。という風に感じているんだが」
「う~ん。大体お兄ちゃんの見解で合っていると舞香も思う。ただ、それに付け加えると、ここの場合、先に何らかの原因で地脈が乱れて後から魍魎が来たんだと思う。というのも、ここの地脈の乱れ方は最初にドカッと乱れたけどそれからは大して変化していない感じだから。それにここに巣くっている魍魎も乱れの大きさの割には大した事ないみたい」
「ふ~ん、舞香ちゃんはそこまで分かるんだ。私は大きく乱れているのまでは分かるけど、そこまで細かい情報は分からないな。やっぱり、舞香ちゃんはすごいや」
舞香の意見を聞いた綾香は従姉妹の事をそう褒めそやすと、何気なく祠の屋根を触り、ついていた埃をはらった。あまり掃除していないせいか祠の屋根には埃がたまっており、ちょっと綾香が指で触っただけで、結構な量の埃が取れた。
「まあ、調査の結果魍魎自体は大したことのなさそうな奴らだと分かったが、問題はこの仕事をいつやるかだ。校内だと人目に付く可能性が高くどう隠蔽するかその準備が大変で時間が掛かるだろうが、かと言って早く始末しないと次の犠牲者が出る可能性もある」
そう危惧を表明する龍之介に答えを出したのは綾香だった。
「それは、大丈夫。龍君のお母さんが傘下の工事会社にすぐにでも電気工事をしろと命令してくれているらしいよ」
「成程。電気工事にかこつけて校内から人を追い出そうという訳か」
「そういう事。これだと誰も不審に思わないだろうし、中々いいアイデアでしょ」
綾香はそう言ったが、実際には荒川博士という頭の良い変人がその事に感づいてしまい、トラブルになるのだが、この時点でそれは三人の感知する事ではなかった。
「今の所、三日後の木曜日になりそう何だって」
「木曜日か」
木曜日と聞いた舞香が露骨に不満そうな顔をした。
「平日に仕事すると寝るのが遅くなっちゃってお肌が荒れるのよね。最悪だわあ」
そう愚痴を零した。それを聞いた龍之介は、
「まあ、いいじゃないか。祖父ちゃん、仕事が終わったら小遣いたくさんくれるって言っていたじゃないか」
と言って、妹をなだめようとした。だが、
「でもねえ」
舞香の機嫌は中々直りそうになかった。そんな舞香の機嫌を直したのは綾香だった。どうやって直したのかというと、簡単な話で、魔法の一言を放ったのである。
「仕事が終わったら、三人でどこかにご飯食べに行こうよ」
「うん、行く」
綾香の提案を聞いた舞香は満面の笑みを浮かべた。彼女は、どこであれ、兄と出掛ける事ができるのがすごく嬉しいのだった。
「じゃあ、これで大体決まりだな。魍魎め、腹括って待っていろよ」
明日も3話投稿の予定です。
1話目は9時ころの投稿になります。
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