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お題シリーズ4

その少年が生きのびた理由

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/07/27



 誰かと誰か、国と国が争いを初めても、ただの一般人にできる事はない。


 無力だ。


 中には、力が強くて兵隊になったり、頭が良くて軍師になったりする事が出来る人間がいるかもしれない。


 しかし大勢の、ありふれた人間達はそうではない。


 特に争いから遠い田舎だと、その事で悩む事すら少ないかもしれない。


 しかし、世界のどこか隅にいたとしても、争いの気配はつたってくるものだ。






 村を離れていた数時間の間に、全てが終わっていた。


 生き残っていたものは、誰もいない。


 燃えた死体や、欠けた人体。あらぬ方向へまがった人間の手足。


 壊れた建物、炭になった建物。


 目に映るすべての景色が、俺をうちのめそうとしてきた。






 なんでもない一日が大切な一日だって。


 その日に、俺はそう気が付いたんだ。


 けれど、そう分かった時には、何もかもが遅かった。


 目にしているこの景色は、残酷な光景だ。


 今日、日常の全てが失われてしまった。


 ありふれた日々のありがたさは、ありふれた日々の中にいるままでは気が付かない。


 それがなくなってから、ようやく気が付くのだ。


 村が焼けている。


 故郷がなくなった。


 家族も、友人も。


 みんないなくなった。


 生き残ったのは俺だけだ。


 俺だけが死ななかった。


 この日、村では祭りがあったのに。


 たくさんの人達でにぎわっていたのに。


 天邪鬼な俺は、嫌な事があった俺は、祭りには参加しなかったから。


 村を出て、一人であちこちぶらぶらしていたから。


 家族との仲がよくなくて、友人とも喧嘩している最中だったから。


 それで、生き延びた。


 なんて皮肉なのだろう。


 家族も友人も大事にしなかった俺が、生き延びるなんて。


 死んでほしいわけじゃなかった。


 それほど嫌っていたわけじゃなかった。


 もしかしたら、好きになる未来があったかもしれないのに、仲良くなれる未来があったかもしれないのに。


 全部の可能性ごと、ねこそぎ奪われた。


 神様は、一人一人を見ているわけじゃないんだろうな、と思った。


 良い人間は報われる、なんてそんなことない。


 悪い人間には必ず罰が下る。なんてそんな事もない。


 それだったら、なんで俺みたいな人間が生き残っているのか分からなくなる。


 俺が生き延びた理由に、善人だったから、なんて項目があっていいわけがない。







 その日、村が壊滅した日から、俺はそうずっと思って、生きてきた。


 文明が発達し、争い合っていた国々が交流し、昨日の出来事が過去になって、時を経て昔となり、教科書に綴られる歴史になった頃まで。


 けれどある日、酒のはずみで過去を話した女が持論を言ってきた。


「自分の悪さを知って、それを後悔して、顔の知った相手を死を悼む事ができる人間が善人でないわけがないだろう」と。


 考えたこともなかった。


 そんな事は。


 そうなのか?


 神が運命が、だとかそんな事を考えていたけれど。


 正直そんな事はどうでもよくて。


 心の底では別の事を考えていた。


 俺は救われていい人間だったのか?


 俺は生き延びても良かった人間だったのか?


 そうだとしたら、救われるのに。


 このずっと痛み続けていた心が。


 死ぬべきだった人間が生き続ける事に罪悪感を抱いていた俺は、少しだけ胸の奥のつかえがとれるかもしれないのに。



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