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兎に角一先ず、何より即ち

 物語は、ひっちゃかめっちゃか。

 魔王に挑んでいた勇者は途中で匙を投げる、ふてぶてしく手癖が悪い小娘が出てくる等で場景が大混乱している為に盛り下がっている。


 テコ入れ、する?


 いや、無理だ。何故なら、筆者はこの物語を好き勝手に描きたいと一点張りしている。


 読者様が力尽きてしまうよ。と、いうより結果が証明しているよ。


 さらっと、きつい現実を突き付けられた。では、その責任は……。おい、其処の女子力無しのぱっぱらぱー娘。


「誰が『ぱっぱらぱー』よっ!!」


 ……。強くなったな、さらばだーっ!!


『語りにローリングソバットを喰らわせちゃったケティール。あなたは一応、王女でしょ?』

「魔界のね。あんたはわたしを正義の味方にしたくてストーカーしていた女子ちっちゃいもの、カモミール」

『悪党呼ばわりをされる覚えはないわっ! あたし、こう見えても……。こう、こう……。ぐむぐふぐぐぐぅううーー』


「そんなちっこい口で、欲張って美味しい揚げ鶏をまるごと頬張るから喉を詰まらせたのよ」

 ケティール=ベルガモットは、カモミールの背中を「どすり」と、拳で叩く。


『はあはあ。荒っぽい処置だったけど、助かったわ』

 カモミールは「ぷはっ」と、美味しい揚げ鶏を吹き出し、呼吸を整える。


「で、あんたが言い掛けた『こう見えても』は?」

 ケティールは「もぐもぐ」と、爪楊枝で刺した美味しい揚げ鶏を口にふくみ、咀嚼した。


『あ、なしなし。あなただろうが、バラすは出来なかったわ』

「ありがちな曰く付きで引っ張ったね」

『筆者の気まぐれで物語が完結済(打ち切り)になったら元も子もないけどね』


「……。母上が作った美味しい揚げ鶏のおかげでひもじい思いをしなくてよかった」

 ケティールはぽつぽつと、涙を溢していた。


『ケティール、淋しい想いをさせてごめんね』

「ひっく、こうなったらとことん『正義の味方』を貫く。ひっく、ひっく……。あんたが言っていた『おきあがりこぼし』のわたしだからね」

『夜明けが近いけど、ちょっとだけ寝る?』

「ぐしぐし……。あんたではわたしの腕枕にならないけど、そうすることにする」


『おやすみ、ケティール。そして、本当にごめんなさい』


 時の刻みは東の地平線から太陽が昇る頃、場所はケティール=ベルガモットが光堕ちして更地にした魔界の森林公園の、根性で残っていた気になる大樹の幹。


 すやすや、すぴすぴ。うんがー、ごおごお。きりきりきり。


 静かに寝息を吹き、高らかに鼾をかき、さらに歯軋りをするケティール=ベルガモットの頬に、カモミールはすりすりと掌で撫でた。



 ***



「おはよう、勇者。よく眠れた?」

「はい、ぐーすかとたっぷり眠れました」

「それなら、よかった。さ、温かいうちに食べなさい」


 ケティール=ベルガモットが野宿をしていた頃、スポロ=ルクスは魔王・ハバネロの自宅で爽やかに朝を迎えた。そして、ちゃっかりと朝食を勧められるのであった。


「うふふ。おかわりは沢山あるから、どんどん食べてね」

 ハバネロの嫁(名前はまだない)は、笑みを溢しながら丼にてんこ盛りした白米をスポロに持っていく。


「くうっ! 梅干しは、お婆ちゃんが漬けた味ですね」

「まあ、よくわかったわね。そうよ、観光地の道の駅で販売されていた梅干しなの。実が厚くて大きいし、何と言っても味にやみつきになったの」

「わかります、わかります。酸っぱ、しょっぱい。梅干しは、絶対にその味で味わうのだと僕はずっと思っていました」

「あはは。キミがそんなにも梅干し通とは。私は鮃の漬けがお気に入りだよ。観光地で宿泊したホテルの朝食で出されたそれの味が忘れられなくて、妻に作るようにと催促をしたくらいにね。だから、今朝もこのようにキミに味わってもらいたくてね」

「大根の煮付けに見えました。でも、箸で掴んだ感触に『お?』と、不思議になった。そうだったのですね、いや、奥様。本当に失礼しました」

「うふうふ、謝るはしないで。こんなに楽しく食卓を囲めたの、昨日ぶりだから」


 スポロは啜ろうとした、若芽と豆腐の味噌汁が注がれている椀を危うくひっくり返しそうになった。


「こら、客の前でしみったれた話しをしたら駄目だよ」

「あなた、あなた。ケティール、帰って来なかった。どうしよう、どうしよう。ああ、ケティール。どうしてーー」

「希望を持とう。私達は、ケティールの親だ。いつでも、あたたかくケティールを迎える準備をしよう」


 どよどよと、気まずい空気の流れにスポロのがつがつとしていた箸の動きが止まる。


「……。昨日から色々とお世話になってありがとうございます。僕、そろそろおいとまーー」


 ーー待て、勇者。貴様との決着は、魔界城でだ。いいか、勇者。今度ばかりは逃げるは許されない……。


 スポロはハバネロと目を合わせて、ぞっと身震いをした。爽やかな笑顔だが目は恐ろしいほどの執念を表しているハバネロに、スポロは顔から血の気を引くを覚えた。

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