海を抱く
全部忘れてしまおうか
この瞬間だけに身を投げ捨てる
ただ僕たちしかいない
どんどん全てが溶けて、解けて、融けて
落ちてゆく、堕ちてゆく
夜の底が海になった
泡沫に手を振って
水面が遠のく
月の光に淡く包まれる
そのおかげで白い肌が見える
いずれ見えなくなってしまうから
こちら側に抱きとめる
じんわりと胸が暖かくなる
あなたのにおいがした
海が体温を奪っていく
何故か心地が良い
海に抱かれてる
海に抱かれてる
そして僕たちも海を抱いている
ついに月の光が届かなくなった
腕のなかにあなたはいるだろうか
抱きとめてやれてるだろうか
見失わないように
とけあわないように
めいっぱい抱きとめる
返事があって
もっと包み込むように
ふわりと
いることを確認するみたいに
きゅっと
海に攫われないように
抱きとめなきゃ
抱きとめなきゃ
だから
海を抱く