第4話 邂逅
引き算を教えたお礼として武器屋のおっちゃんから貰った剣や鎧を装備して森に入り、スライムのようなモンスターと戦ったオレはハルに殺され、リエスママに蘇生されていた。
「ったく……、次は乱入して殺したりしないでくれよ?」
オレがそう言うとハルは残念そうにしながら頷いた。ひとまずよし。………残念そうにされるのは納得いかないが。
「ん?なんの音だ?」
なんだかメキメキという音が聞こえてくる。まるで森の木々をへし折りながらこっちに向かって来てるかのような………と思った次の瞬間、視界の端にモンスターの姿が入った。牛のような顔と角、肉食獣のように鋭い牙、そして人間のような胴体。しかも胴体は筋肉の塊とでも言うべきゴリマッチョ体型だ。
「ミノタウロス……みたいなもんか?」
「オデの……ナバエ……アステリオス………。マオーグン、イチイン。オデ、オバエ、タオス、キタ………。」
要約すると、コイツはアステリオスって名前の魔王軍のメンバーで、オレを倒すためにここまで出張ってきたってことか?
「オバエ…、ウマソ、ダナ………。」
オレを見てお菓子を目の前にした子どものようにニタァ……と笑った。
「悪いが、お前に大人しく食われてやるほどオレは優しくないんだよ。」
「イタダキマァス……!」
それだけ言うとアステリオスはオレに向かって大口を開けて突進してきた。本気でオレを食べるつもりなのだろう。
「あいにくだが、オレにはチートスキルがあるんだよ!」
そう、オレには勇者として召喚された際に与えられたチートスキルがあり、その効果で身体能力が強化されているのだ。
「メシィ!チョコモコ、ニゲルナァ……!!」
ちょこまかと言いたいのか?まあ、いい。このパンチでアイツをワンパンで倒してやるぜ!
「『ムイレフ』!!くらえ、焔のチートパンチ!!」
炎属性の初級魔法『ムイレフ』によりオレの拳は巨大な青白い炎に包まれた。そして、その拳はアステリオスに当た―
「コイツヲミロォ!」
なんだ!?アステリオスが急に、左手に持った何かをオレに見せてきた。
「そいつは………!?」
それは、全裸にされた人間の少女だった。
「た、たすけて………。」
「ソォダァ……!コイツ、ニンゲン!オバエ、オデ、ナグッタラ、コイツ、シヌ!コイツヲタテニスレバ、オデ、ムテキ!オデ、テンサイ!!」
「テメェ………」
「ちょ、イッセー!これじゃまともに攻撃できないよ!」
「そんな……一体どうすれば………」
気づいたらオレはブチギレていた。しかし、ただのブチギレではない。すごく冷静だ。まるで怒りで頭をキンキンに冷やされてるみたいに。
「そうか、確かにお前は天才かもな……。」
「イッセー君……!?」
「ギャハハハハ!ソォダロ!?ソォダロ!?」
そう言いながらヤツはオレを殴ってくる。だがあいにくオレはチートスキルで強化されてるおかげでこの程度のダメージなら痒いだけだ。
「おい、天才。」
「ウン?ナンダァ?イノチゴイカァ?ギャハハハハ!」
「テメーはオレを、怒らせた。」
そう言うとオレはアステリオスが反応できないほどの速度で右ストレートを顔面に叩き込み、歯を全部へし折った。
「ベブゲラバァ………」
「悪いな、チートなんだよ、オレは。」
アステリオスは倒れ、左手に捕まっていた全裸の少女は解放された。
「で、何者なんだ?この女の子は……。」
アステリオス戦が終わり、全裸の少女を連れて宿に戻ったオレたちだったが、夜になってようやく目を覚ました。しかし……
「?」
様子がおかしい。
「えーと、君の名前は……?」
「わかりません。」
さっきからこの調子で何を聞いてもわからないというのだ。最初は初対面であるオレたちを警戒しているのかとも思ったが、この国の国教で崇められている女神であるシュガーと2人きりにしても同じらしい。
「記憶喪失ってやつか……?」
「記憶喪失?忘れてるってこと?」
だとしたら厄介だな。名前も住所もわからないんじゃ家に帰しようがない。……誘拐扱いされたりしないよな?
「しかし、名前もわからないってのは不便だな。」
そんな話をしていると彼女はオレに抱きつき、こう言った。
「あの…お兄さんのこと、パパ様って呼んでもいいですか?」
うーん、なんだか事案の匂いがしてきたぞ。あと、なんだか女神3人組が怖い。
「えっと……、どうしてオレのことをパパ様と呼びたいの……?」
「本当のパパ様とママ様のことを思い出せないので……一緒にいる間だけでもパパ様って呼ばせてくれませんか?」
やべぇ、めっちゃ可愛い。いや、別にオレはロリコン的な意味でそのような感情を抱いてるわけではないですよ?ただ、兄目線、父親目線的な意味で……
「「「イッセー(ちゃん・君)?」」」
やべぇ、3人とも目がマジだ。
「ちょっと落ちついて聞いてくれ!」
「「「何を?」」」
「まず、オレはリエスママの子どもなわけだ!」
「はい。その通りです……。」
オレがそう言うとリエスママは嬉しそうに頬を赤らめた。
「そして、シュガーお姉ちゃんの弟でもある!」
「う、うん。そうだよ……。」
今度はシュガーお姉ちゃんが嬉しそうにしている。
「そして、ハルの夫でもあるわけだ!」
「う、うん。その通りだよ、ダーリン………。」
ハルも真っ赤になりながら頷く。
「ならばこの娘がオレの娘ポジションになっても問題ないんじゃないか?リエスママがオレのママで、シュガーお姉ちゃんがオレのお姉ちゃん、ハルがオレの嫁でこの娘がオレとハルの娘。それでよくないか?」
言ったあとで気づいたけど、大分無茶苦茶だな。
「「「確かに………!」」」
納得するのかよ!言ったの、オレだけど!
「ところで名前はどうしようか。一時的とは言え、名前がないんじゃ不便だしな……。」
「好きに名前をつけてください!」
「じゃあ……、オレの姓が秋山だから秋山とハルの子どもで……そうだな、ナツとかどうだ?」
「ナツ!ありがとうございます、パパ様!」
ナツが無邪気にオレに抱きついてきた。事案の匂い………。
「ナツちゃん。僕のこともママって呼んでくれていいんだよ?」
ハルがナツの頭を撫でながら言う。
「はい、ママ様!」
無邪気な笑顔………。やべぇ、可愛すぎじゃね?いや、別にオレはロリコンじゃないけどね?




