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第2話 湯気

おっす!オラ イッセー!今オレは非常に追い詰められている。人生最大級のピンチと言ってもいい。それは何故か……強いスキルや魔法がないから?否、むしろスキルはかなり強いものを貰ってある。戦闘中の敵モンスターが予想外に強くて命の危険を感じているから?否、そもそもここは宿の一室だ。モンスターも魔王軍もいない。一緒に旅をしている仲間の1人―ハルに殺されそう?否、今この部屋には現在オレ1人である。

では何が原因でオレはピンチなのか?それはオレが部屋のベッドに手足を縛り付けられて身動きが取れないから……そして、その状態で尿意を感じているからである。

どうしてこんな状況になっているのか……それは遡ること数時間前のこと。オレと3人の女神たちは宿に宿泊し、朝を迎えた。ヤンデレ女神どもの押しに負けて4人で1つの部屋に泊まることになったが、それでも特にお楽しみ的なことはなかった………のだが、彼女たちはそれが不満だったらしい。朝、目を覚ましたら手足を縛り付けられていた。そして3人から口移しで朝食を与えられた後、昼食の確保と言って全員出ていってしまった。……縛られたオレをそのままにしてである。(女神はどうか知らんが)人間というものは一説によれば2~3時間に1回のペースで尿意に襲われるらしい。

そして現在オレは起床後1度もトイレに行けないまま、数時間拘束されている。もう、お分かりだろう。オレの膀胱は現在、連日大雨が降った時のダムのように決壊寸前なのである。そして、手足の拘束を自分で外せない以上、オレは女神たちが帰ってくるまではトイレに行くことができない。だからと言って漏らしてしまったら証拠隠滅もできない以上、美少女3人にお漏らしを目撃された挙句お漏らしの後始末をされるという昨日の往来の真ん中での赤ちゃんプレイに匹敵する屈辱を味わうことになってしまう。つまり八方塞がり……絶対絶命なのだ。それも拘束されているから動いて尿意をごまかすことでできないというオマケ付きで。


「「「ただいま〜♪イッセー(ちゃん・君)♡」」」

彼女たちが帰ってきたのは昼過ぎだった。そして、その時オレは既に尿意との格闘を終えて冷静さを取り戻していた。足元の温かい水溜まりで湯気を立たせながら………。勘違いしないでもらいたいがオレは決して戦いを放棄して下半身を濡らす道を選んだ訳ではない。しかし―敗北したのである。オレの膀胱は尿意という名の押し寄せる津波に勝つことができなかった。まして、オレは起きてから1度もトイレに行けていなかった。昼過ぎまで耐えられるわけがないのだ。これがもし、オレが赤ちゃんプレイの趣味でもあればリエスに「リエスママ〜、おもらちちちゃった〜」とか言ってこの状況を楽しめたのかもしれない。だが、あいにくオレは(少なくとも今のところは)そのような趣味に目覚めてはいない。よって、この状況はオレにとって屈辱以外の何も与えないのである。

「「「イッセー(ちゃん・君)………」」」

ハハ……さすがのヤンデレ女神どももこの光景にドン引きしているようだ。まあ、これでヤンデレ女神どもに取り合われ、殺されるということがなくなるのなら案外悪くはないのかも―

「「「か……」」」

ん?

「「「可愛い!!!!」」」

はい?今、なんと………?

「帰宅したら歳愛の息子が赤ちゃんのようにお漏らしをしていて最高に可愛かった件について!」

息子じゃねぇ!!あと、なんでラノベのタイトルみたいな反応の仕方なんだよ!?

「お、お漏らし……イッセーのあそこから出た聖水……じゅるり」

卑猥!R18指定されそうだからやめろ!!その辺で止まれ!!

「イッセー君、大丈夫?キレイにしてあげるから一緒にお風呂入ろ?ね?ね?何もしないから、ね?」

目が怖い!絶対何かしようとしてるやつの目じゃねーか!あと、ヨダレ拭け!!

「待ってください!イッセーちゃんのイッセーちゃんはママである私がキレイにします!」

だからママじゃないよね?リエスさん、オレのこと産んでも育ててもいないよね?

「ちょっと!イッセーの○○○○はお姉ちゃんであるアタシがキレイにするのよ!?」

いや、シュガーさん……アンタも姉じゃないよね?あと放送禁止用語やめて?

「何言ってるの?イッセー君はお嫁さんである僕と一緒にお風呂入りたいよね?そしてあわよくばあんなことやこんなことも……デュフフ………じゅるり」

自称ママや自称姉のあとだから納得しかけたけどお前も嫁じゃないだろ!?籍入れてない!あと心の声ダダ漏れなんだが!?そしてヨダレ拭け!(2回目)

「私が!」「アタシが!」「僕が!」

……………どうでもいいから早く手足の拘束外してほしい。こちとら小便が冷えてズボンとパンツが冷たいんだが。


結局、オレの「そういうことは魔王を倒したあとの楽しみにとっておきたい」という言葉でオレ1人で入浴することになった。………魔王倒した後どうしよう………。

「はあ……つーか、オレラーメンしか持ってない状態で召喚されたから替えの服ないんだが………」

「「「イッセー(ちゃん・君)!」」」

うおっ!?な、なんだ!?今オレ全裸なんですけど!?

「キャッ!?か、可愛いです……」

「小さくて可愛い………」

「…………(無言でガン見)」

………神様……オレが何をしたって言うんですか……もし、いるなら出てこい!ぶん殴ってやる!!……ってこいつらが女神か……ちくしょう!!

「その……リエスママたちでイッセーちゃんの服を買ってきたので、着てみてもらえませんか?」

「うん!すっごくオシャレなの選んだから!イッセーなら絶対似合うよ!」

「ほら、早く着て♪」

この世界基準のオシャレとか、目の前の美少女の服装が生ハムドレスよりアバンギャルドなせいでファンしかないんですが………


「着てみたけど……これでいいのか?」

下はノーパンでスカートにハイヒール、上はノースリーブのシャツに帽子………もはや、ただの女装だな。目の前の女神たちや街中の人たちのアバンギャルドな服装に比べればわりと普通とはいえ、男のオレが着ていると考えると職質されそうで落ち着かない。

「イッセーちゃん…すごく似合ってます!とっても可愛いですよ♪」

リエスママ…もとい、リエスが頭を撫でながら言ってくる。いや、これが似合うってどういうことだよ。ノーパンとか変態じゃねえか!

「イッセー、かっこいい!お姉ちゃんも鼻が高いよ!」

いや、可愛いのかかっこいいのか、どっちだよ。あと、お姉ちゃんではない。

「おーっと、手が滑ったー!」

いや、絶対わざとやん。そして、なんで触るところがほっぺたなんだよ?

「ちょっと、ハルさん!そんな、異性のほっぺたを触るなんてセクハラですよ!?」

「そうだよ!胸ならまだしもほっぺたは……イッセーも!ほっぺた触るのはセクハラなんだから嫌なら嫌って言わなきゃ!」

ああ、この世界でほっぺたを触るのは地球基準で胸を揉むようなもんなのか?ファッションセンスといい、つくづくよくわからん……価値観違い過ぎじゃね?オレ、この世界でやっていけるか不安になってきた………。勇者ってなんだっけ……異世界ってなんだっけ………誰か教えて………………。

「ご、ごめんね、イッセー君!お詫びにイッセー君も僕のほっぺた触っていいから!」

いや、いいよ。別にほっぺたフェチじゃないし………。

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