魔王を倒した聖剣の欠片を包丁にして妻にプレゼントしたら、切る度に食材に9999のダメージが入っています……
浮気ダメ絶対!
──トントントン……
「今日の晩ご飯はなんだい?」
「今日はお鍋よ♪」
──トントントン
ニンジンが軽快な音と共に輪切りにされていく。
──ザクン、ザクン……
今度は白菜が大きな音と共に細切れにされていく。
「ねぇ貴方。上着洗濯したいからそこに置いといて欲しいな」
「オーケー」
──サクサク……
今度は大小様々なキノコが程良い大きさへと分解されていく。傘の大きいキノコには飾り切りまでされている。
──グツグツ……!!
鍋が煮立ち、妻は灰汁を丁寧に掬っている。
「上着、置いとくよ」
「ありがとう。お鍋出来たから先に食べてて」
テーブルに置かれた鍋は色取り取りの食材がぎっしりと詰まっており、とても美味しそうだ。
「頂きます!」
──ホクホク……
「美味しい!」
熱々の鍋を口に入れ、神の恵みに感謝を述べる悦びを感じた。
「ねえ貴方……?」
「なんだい?」
「最後の晩餐は如何かしら……?」
「!?」
──シュッ!!
風を切る音と共に鋭い切っ先が此方へと向けられた!
それを間一髪で避けるが、前髪が少し切られてしまった。
「な、何をするんだ!!」
「それはコッチの台詞じゃボケェ!!!!」
激しく怒り狂い、かつて耳にしたことが無いほどに粗暴な言葉遣いを発する妻に俺は戸惑いを隠せなかった!
―――が、妻が左手に持っている小さなカードを見て血の気が引く音がした……。そのカードには『激安ニャンニャン王』と書かれており、裏には指名した嬢の名前が手書きで書かれていた。それも御丁寧に『テクニシャンだね♡』とまで…………
(これは言うまでもなくヤバイ!!!!)
「死に晒せぇぇぇぇ!!!!」
──ビュン!!
尋常じゃ無い切れ味の包丁(元聖剣)が俺の喉元をギリギリで通り過ぎ、隣に置いてあった棚の角が切れてコロリと落ちた。
(やはり『激安』がマズかったか!? いや、『王』か!? それとも『テクニシャン』か!?)
「クソボケが!! 『ニャンニャン』に決まってるだろがぁ!!!!」
「な、何故心の声を読める!?」
「デカデカと顔に出てるわドアホがぁ!!!!」
──シュッシュッ!
「あっぶね!!」
恐ろしい程の二段突き! 俺が元勇者でなければとうに死んでいるであろうその切れ味! まさに聖剣!!
「スマン!! 騎士達と飲んだ勢いでつい性剣を奮ってしまったんだ!!」
「騎士は独身だからいいけど、お前は既婚者だからダメに決まってんだろがぁぁ!!!!」
「エルフのお姉さんが『王がテクニシャン』だって言うから……!!」
「なんちゅう言い訳晒しとんじゃクソがぁぁ!!!!」
──ガシッ!!
「!?」
キッチンの棚から現れし新たなる包丁…………その名も出刃包丁!!
「殺してやるぅぅ……!!!!」
二刀流の構えでジリジリと俺を追い詰めようとする妻。俺としては早く切り札を出してしまいたいのだが、恐らくぶっ殺されるのがオチだろう…………。
「二度と行かないから!! 生きませんから許して下さいぃぃぃぃ!!!!」
「許 さ な い !!」
更に棚から現れし聖剣……その名も柳刃包丁!!
お手玉のように聖剣達を操り、器用にクルクルと回していく。
(三刀流だと……!?!?!?)
──ニヤッ……
妻が更にキッチンの棚へと手を伸ばす…………そして現れし新たなる聖剣……その名もパン切り包丁!!
まさかの無限四刀流!!!!
これは間違いなく俺を確実に抹殺しにきている!!
「死ねぇぇぇぇ!!!!」
──ビュンビュン!!
「グワァッ―――!!」
俺は躱しきれず脇腹と肩に傷を受けてしまった!!
(クソッ! こんな物受け止め切れるかよ……!!)
「我ら生まれた日は違えど、死すときは…………勝手に死ね!!!!」
──ブオンッ!!
「ぬわーーーーっ!!!!」
俺は聖剣の錆となり死んだ…………。
読んで頂きましてありがとうございました!!
(*'ω'*)
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