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突然ですが

春節でーす!


時間がたくさん出来ました!


更新すっぞd( ̄  ̄)


ところで前回のミツルの手紙がお分かり頂き難かったようなので、


後書きで説明を付け加えました。


まあ無理やりというか....ヘボなのをスルーしていたというか。


もう少し上手い文を考えたら差し替えるかも(°▽°)しれません

福沢先生が新聞社を設立した。突然ですが。


実は先生以前からこの事を考えておられたのだけど、あまりの忙しさにというか、何にでも首を突っ込む性格が災いし、全く実現する様子がなかった。

ところが国会開設が決定し、政党設立の動きが全国で始まったこの時期に、ジッとしてられなくなったのだろう。


突然ですが設立するぞとなった次第。


「なんとも福沢君らしい話じゃのう、ヤルとなったら突然やってしもうた。」

栗本先生は半ば呆れている。

「ともあれ厄介な商売敵が出来たものよ。福沢諭吉が書く新聞なんぞ、面白くないわけがない。」


正式に主筆を任された矢野さんもビビる。

「むう、勝ち目は無い.....。」

清々しいほどの負け犬っぷり。


「お祝いに伺いましょう。」

俺は項垂れる義兄(やのさん)を連れ出し、京橋南鍋町の時事新報社へ。


夕暮れ迫る夏の街。

南鍋町は銀座にほど近い場所にある。

銀座は商業華やかな街だが、京橋は昔ながらの職人街だ。

時事新報社はその境目あたりで事務所を構えていた。


社主を務めるのは甥の中上川さんだ。


「やあ矢野さん、犬養くん!わざわざ敵情視察ですか?」

中上川さんは先生と血が繋がってるとは思えん丸顔を綻ばせ、いつもの通りスーツをビシッとキメている。


「おお彦次郎!おぬしも大変だなあ、官庁暮らしの方が向いているんじゃないか?」

「本当ですよ....。僕は新婚だと言うのに、気紛れな伯父を持つと苦労が絶えません。」


中上川さんは心底迷惑そうに言う。

外務卿井上馨のお気に入りとして、秘書官を務めていたところを引き摺り出されたのだ。


「コレは犬養くんのせいでもある!本来なら君がこの仕事をすべきだったんだ!」


イヤイヤそれは御免被ります、あのプレッシャーは親族だから耐えられるんだと思われますよ。


「コレが表紙ですね....良いじゃないですか!」

俺はワザとらしく誤魔化す。今からでも....なんて話には絶対させん。


「『独立不羈・官民調和』ね。まさに我ら改進党の精神でもある。」

矢野さんはウンウン頷く。その通りだと俺も思う。


「何言ってやがる。ウチはオメエらのお抱えじゃねえぞ。」

福沢先生(ラスボス)登場。俺の頭に鳴り響くのはダースベイダーのアレだ。


「先生おめでとうございます!」

途中で購入した日本酒を贈呈。


「おお気が効くな、よし彦次郎!さっき頂いたスルメ炙ってこい。」

「もう飲むんですか?早すぎません?」


社主彦次郎は文句言いながら、スルメを炙りにパシっていった。

気の毒でならないが、俺が代わりを務めるのは絶対永遠に無理。


奥の部屋に案内され、茶碗で一杯。俺は相変わらずナメナメ。


「改進党は順調にいってるようで何よりだ。無事議員になったらオマエラ寄稿しろよ。」

我々はまるでカツアゲされてる高校生のよう。


「勿論です先生。ですが郵便報知が優先でお願いいたします。」

矢野さんは薄めヘッドを下げまくる。


先生は上機嫌で高笑い。つまり却下である。

「なんだ、矢野はもうスッカリ新聞屋だな!ケチくさいこと言うな!」


矢野さんはガックリ肩を落とす。

教え子の同業者としてその影響力を行使する偉人。恐ろしすぎる。


「先生、この時期新聞社をお作りになるという事は、憲法や国会運営についてご自分の意見をお出しになっていくという事ですか?」


俺の質問に先生は頷く。

「お前のやっていた社会扇動ってやつよ。アレは俺にとって勉強になった。」


社会扇動(アジテーター)いただきました。

.....せめてソフトに啓蒙活動とか言っていただけませんか?


「ソレでは先生ご自身で記事をお書きになる?」

俺の言う横で、矢野さんがガバッと顔を上げる。


「たまに社説書く程度かな。記名記事にはせんと思うが。」

ふぃーと安堵の息を吐く矢野さん。

先生がそれ程頻繁には記事を書かないと見て、若干安心したようだ。


「むろん憲法・国会運営・外交すべて重要だが、ウチで取扱うのは主に経済だ。」

ヤッパリそこは先生の本領発揮ですね。

「この分野で財界人を支援する。時事新報はそのように有る新聞だ。」


矢野さんは今や完全に蘇生したように見える。

明らかに血色が良くなった。そんなに心配だったんすね....。


「ところで花房は何か言ってきたか?後藤さんの件で。」


先生は先日の、後藤象二郎朝鮮派遣計画(笑)を気にするように言った。


「一昨日曽根さんと打合わせて参りました。花房公使は基本的にご賛成ですが、朝鮮政府内の調整にはかなり時間がかかると。」

「それはそうだろう。急ぐ必要もない。」

「.....ですね。そしてまた出来れば軍の駐留を、とおっしゃってます。政治顧問を派遣するのに、武力による裏付けは是非必要だと。」


曽根さんのところで花房さんの手紙も拝読してきた。

花房公使は相変わらず、陸軍の駐留を諦めていない。


俺はまた先生にメチャ怒られるかと緊張したが、先生は大きくため息をついたのみだった。

「分かってねえな....清国とコトを構えるつもりか?」


俺はミツルの手紙が気にかかっていたので、ココで少し質問。


「花房さんの事を良くは存じ上げませんが、お話ししたところ冷静な方のように思います。先生は花房公使をどう見ておられますか?」


ウームと先生は唸る。

そして少しの沈黙の後、静かに口を開く。


「アイツは慶應義塾で学んだのではない。俺が奴を知っているのは、大阪の適塾出身だからだ。」


あら?そーだったんですか?


「適塾は言うまでもなく緒方洪庵先生がお作りになった、当時最高の教育機関だった。まあ今は俺の慶應義塾が最高だがな。」


ソウデスネそーゆーの要りませんが。


「俺と花房は歳も違うし、適塾でも会ってはいない。まあ俺は優秀だったから塾頭も務め、期間も長くいたわけだが、それでも会うことはなかった。」


チョイチョイ要らない情報が入ってますが、それで?


「アイツがアメリカへ遊学するという時に、同門を頼って俺に会いに来たのだ。色々と助言が欲しいと言ってな。勿論色々と教えてやった。それ以来俺のところへ出入りするようになった。」


先生はスルメを割いて小さくしているが、随分と固かったようで歯で食いちぎる。

モグモグやって日本酒を一口。


「一言で言えば、アイツは良家のお坊ちゃんだ。適塾はいい教育をしたが社会の(じつ)を教える場所じゃねえ。俺の慶應義塾のようにな。」


まだ言うかこの人。


「しかしアイツには坊ちゃんに似つかわしくない度胸もある。つまり頭は良いが世間を知らず、度胸はあるが実を学んでねえ。それが1度に発現しちまうと、とてつも無く大胆な事をやる。例えば江華島事件の際に、軍艦を呼び寄せちまったみたいな事をな。」


そのお話は聴きました。でも結局成功だったのでは?


「成功失敗は紙一重だ。だがアレは無謀というべき手だよ。あの時清国は結局派兵しなかったが、来ないという確信があったわけじゃない。」


またスルメを一口引きちぎる。


「この手の成功は人の判断を鈍らせる。ネコが魚屋で魚かっぱらって、上手くいったらもう一度同じ魚屋に行くみたいなもんだ。」


それは正しい比喩だろうか?だが俺と矢野さんに反論権はない。


「味をしめた花房は、2度目も大丈夫だと思ってねえだろうか?清国は前回も来なかった、だから今回も大丈夫だと。2度目は魚屋も気を付けてるもんだ、ネコは大層危険じゃねえか?」


ナルホドー。言われてみれば、あまり清国について懸念されてはおられなかったような。


「今はイギリスに大分やられちまったとはいえ、清国はアメリカ・イギリス・ロシアに比肩し得る大国だ。日本国に清国へ対抗する準備は出来てんのか?それが無ければ、今清国に挑むのは自殺行為だ。」


俺もスルメを噛み噛みしながら、ジッと先生の話を反芻する。

大蔵省在籍時に陸海軍とした話を思い起こす。


んーあと5年、まだ無理だ。


「今回の政府顧問派遣は、難しいとは思うが向こうの独立党と時間をかけて進めるのが上策だ。軍を駐留させて武力で進めるのは下だ。」


ミツルの手紙は....花房公使が軍事手段に出る裏工作をしてるって事か?

でも陸軍がコレに協力しなければ、絶対に起こり得ない。

協力しなければ、あの人はどう出る?



「それで大隈さんは?結党は何時ごろを予定してるんだ?」


先生は突然話を打ち切り、唐突にそんな事を言い出した。

もう花房の話は終わり、そんな気持ちが伝わってくる。


「準備委員会を秋には動かします。結党は....来年ですかね。」


「そんじゃツヨシ、お前、祝言あげろや。」


は?なんです突然?横で義兄がアップ始めたじゃないすか!


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