飛び蛙
今日は旧暦の大晦日でございます。
明日から中国人が襲って来ると思っている皆様。
中国は今日から休みなのよ!^_−☆
もう来てるって!
6月の俺はナカナカよくやったと褒めてもらっていい。
せっせこ作り上げた官僚の政治家転向リスト、更に地方議会への政党設立の通知により、接触してきてくれた人達と会いまくっていた。
遠くは秋田・宮城から遥々来ていただいた方々、新潟・北陸の立志社系の方々、何と福島県議会議長までやって来た。
え....河野広中さんのお知り合いですよね?良いんすか?
どうやら福島県は自由党が割れているようだ。
何でも河野さんが増長して、英雄気取りで何たらかんたら。良く分からんが寝返りそうな手応え。
寝返り...イイ言葉だよね、心が躍るぜ。
東北・北陸は自由党の本丸と思って、重視してなかったのにこの手応え。
そーだよ、やっぱり人間寝返るもんだよヘッヘッへ。
いや違う、選択肢ってのが必要だということだ。キレイに言えばな。
予想外の好発進に調子に乗った俺はどんどん行った。
北関東の抑えは田中正造さん。コチラは栃木新聞の主筆で、郵便報知との提携も含めて話を決める。
東京は当然我らが藤田茂吉先生。
神奈川・千葉でも拠点の目処はつき、結構良い線来てるんじゃない?と思った。
ミツルの友人である平岡浩太郎さんは、福岡日日新聞立ち上げのため人材を寄越せという。
困っていたがそこに救世主。
リストの中から大蔵省の田口卯吉くんが改進党へ参加してくれた。
「私が行きましょう!九州はぜひ行ってみたかった。」
オマケに連れて来てくれたのはなんか見たことある人.....末広重恭(鉄腸)さん?
「大阪で聞いた君の説教が腹に染みてな、一緒にやらして貰えないか。」
俺そんなイイハナシしましたっけ?良く覚えてないんだけど....。
「ご参加いただけるのは大歓迎です。でも末広さんは御立場上ご参加は問題ありませんか?」
一応聞いとかないとね。だってこの人確か朝野新聞の主筆だったはず。
「問題などあろうはずがない。もし改進党に不都合があるなら新聞社は辞めても構わない。」
まったくソレには及びません。
「イヤしかし先ほどの新聞社立ち上げなどは興味があるぞ!なんならワシが行っても良いんだが...。」
「イヤ末広さん、もう私が行くことでご了解いただいたわけで。」
「そういうな、なんなら2人で行っても....。」
人が増えると揉め事も増える。
何にしても着実に人が増えて来てるのは素晴らしい。見たか後藤象二郎!
そう言えばドンインが、この人は力を貸してくれるって言ってたな。
「末広さんは俺と一緒に岡山へ行って貰えますか?」
「岡山へ?そりゃ構わんが?」
「岡山でもすでに出資者の決まった新聞社の話があります。コレを大規模に広げていきたい。出来れば山陰・瀬戸内に影響力を持つ組織が作りたいんです。」
末広さんの目の色が変わる。
「デカい話はいいね!ワシ好みよ!」
こんな感じで人が集まってくる。大隈卿の紹介では大物も参加。
「河野敏鎌?土佐の人じゃありません?」
「我輩とは長い付き合いである。次期文部卿が内定してるんである!」
チョット大物すぎます。
「前島密!内務省駅逓総監じゃないですか!」
「我輩とは古い付き合いで.....。」
もう結構です。つまりアレだ、大隈派ってやつな訳だ。
明治14年政変があったらこの人たちは下野してたんだろうね。詳しくは知らんが。
この辺りの人は党幹部になってもらわないとな。
ついでに大隈卿へ人集めの経過報告。
「順調で何よりである。保守勢力の結集という視点が良かったんであるな。」
「はい。特に地方では急進的民権運動に隠れて見えませんでしたが、一定の漸進派勢力が存在しました。また自由党も一枚岩では無いようです。」
今の政界では、急進派イコール自由党、漸進派イコール我々って感じだ。
立志社は過激派かな?
フムと頷く大隈卿。
「まあ仲間割れに乗じるようでいい気はせんであるが、コレも政治の常というもんである。」
あまい。そんな事で負い目を感じる必要性ゼロなんである。
「やはり犬養くんはこの辺の策謀に向いてるんである。実に頼もしいんである!」
褒めてるんすよね?
「後藤くんの件は影響あったであるか?」
「はい、やはり当初お約束いただいてた方の半数は、立志社へ流れてしまったようです。」
そーだよウチだってやられてる訳ですよ。数にして30名ほど。
でも正直、保守勢力とは到底言えない人達が去った、というだけの事だ。
数の上では影響はあったが、ダメージがあったという気はしない。むしろ彼らがいれば党運営が難しくなっただけだろう。
大隈卿はムーと息を吐き出し呟く。
「後藤くんは商売が上手くいかんかったんである。彼が我輩を誘いに来たとき、全力で止めたんであるが。」
「後藤さんがお誘いに?」
「フム、コレからは事業じゃ商売じゃと言って来たんである。我輩を誘えば信用が大きくなるからと言っておったんであるが、武士の商法など通用するもんで無いと断ったんである。」
後藤さんと大隈卿がそれほど親しかったなど、あまり聞いた事が無かったが。
「非薩長として我々は親近感を持っておった。オマケに福沢さんや岩崎を通して、顔は良く合わせていたんである。」
三菱繋がりって訳ですか。黒いですねー。
「後藤さんの事業が失敗したというのは?」
「岩崎がこの間言っておったんである。莫大な借金を肩代わりしたと。」
むかし福沢先生のところで聞いた話じゃ、炭鉱やら貿易やらを手掛けていたはずだ。
「後藤さんはその商売で稼いだ後、征韓論運動の資金にするつもりだったと言われてましたが。」
すると大隈卿はガッハッハと高笑いする。
「そりゃあり得んのである。あの男は征韓論に敗れた後、つくづく政治の世界に愛想が尽きたと言っとった。」
そーなの?大分話が違いますよ?征韓論に執念燃やしてって......。
まあ『大風呂敷』の後藤さんの事だから、多少の食い違いは誤差のうちか。
それにしても大隈卿まで巻き込もうとしてたのか?
何のためにそんな事を?より沢山の金を動かすためか?
「その商売は三菱と一緒にやってたんですか?」
「とんでも無いんである。岩崎はむしろ後藤くんにバカな真似は止めろと言っとった。最終的に後藤くんの尻拭いをするのが自分と、ハナっから分かっておったんである。」
ふーむ、三菱が絡まないのなら資金は誰が?そしてなぜ大隈卿を巻き込もうと?
「ところで後藤さんは何処から資金を得て事業を?」
「当初は鴻池組やらが大名への貸付金を後藤に回収してもらって、そのまま貸し付ける予定だったんである。それが踏み倒しになってイギリス人から借りるというんで、我輩の所にもやって来たんである。」
此処でイギリス登場かよ。そしてイギリスと言えば?
「グラバー商会?」
「おおそうそう、それなんである。」
また出たよジャーディン・マセソン。
「今回政治の世界へ戻られるにも、イギリスから金を出させてますかね?」
「いや、もうそれは無いんである。何せ100万ドルを使い果たして、回収できたのは岩崎が出した20万ドルだけ。常識で考えてこれ以上金など出せるはずは無いんである。」
ひゃ...すっげー。さすが維新のレジェンド借金まですげー。
でも今回の大同団結とジャーディン・マセソンは関係なさそうだなぁ。立志社に勝ち目がなさそうな事くらい、外国人から見ても分かるだろうし。
「恐らく後藤くんは焦っておるんである。事業に失敗し残ったのは借金、戻る場所といえば昔見捨てた立志社のみ。手土産一つもなく戻れんのである。」
「つまり後藤さんは事業に失敗後、政界へ戻ろうと立志社を頼った。手土産に思いついたのが大同団結運動で、困窮していた立志社もコレに飛びついたと。」
「うむ、無理のない解釈である。」
大隈卿は納得する。俺は何やら腑に落ちない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
午後は久々に京橋の曽根さんを訪ねた。
朝鮮では立見少佐が大活躍だという話が、風の噂で聞こえて来る。
「ウム、あの人は途方もない。」
曽根さんの顔はやや引きつっている。
「...上手くいってるんですよね?」
失敗したとは聞いていないが。
「上手くいっているとは思うのだが、何しろ未だ軍事訓練を始めておらんというのだ。」
「なんで?」
思わずタメ口きいてしまった。
「何でそうなるのかワシが知りたいわい。ともかく花房さんからの便りでは、一切軍事訓練をやらずひたすら走っておるという。しかし軍の規律は保たれており、士気も大いに高いっちゅうことじゃ。」
なるほど立見さんって人は、ただ近代的装備を渡すんじゃなく、軍隊そのものを近代化しようって腹なんですね。武器からじゃなく、体力と規律から入ってるって事だ。
「現地語で鬼立見と呼ばれとるそうじゃ。それでも兵士たちが少佐を慕うこと父の如しという。」
いやー、前世の軍隊でもそういうのは沢山いましたよ。
俺的には苦手だけど、軍隊としては理想の形じゃないっすか。
「犬養君にも手紙が来とった。頭山くんからじゃ。」
そう言って曽根さんは薄っぺらい手紙俺に渡す。
この程度の情報量なら、何も手紙書くことないじゃん。
義理堅いっていうのかな。まあアイツらしいと言うべきか。
中に書いてあるのは、たった今曽根さんに聞いた立見少佐の事と、自分たちも漢城府の公使館で居住しているという事、そして少佐の訓練に参加し、鍛えているって事だった。
釜山は大丈夫かな?まあ暴動起こるとすれば先ずソウルか。
末尾に下手な絵でカエルが描いてある。
「何だコレ?」
その脇には俳句のような一文。
『飛び蛙 且つ死にヤルあ 左様にならば』
頭ぶつけたか?
何の意味あんのコレ。訓練厳しすぎて死ぬって意味っすかね?
俺が不思議そうな顔をしていたので曽根さんも俺の手元を覗き込むが、下手な絵と句じゃと言って笑っただけだった。
イヤ下手って言うより意味不明.....おや?
飛び蛙、とびかえる......飛んで戻ると.....ばなうさあやしか。
は な ふ さ あ や し か 、こうっすか?
最後の文が分かりにくくてすいません。
飛び蛙はいわゆる暗号の鍵で、『文章を後ろから一つ飛ばしで戻る』の意味です。
ばらなにふよさ あるやにしつか
を飛ばすと「ば な ふ さ あ や し か」となるという......
まあコナン君みたいにはキレイにできませんね。
公使館→振亜社経由の手紙なので、人目につくことを考えてのミツルの知恵でございました。




