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重なる思惑

春節の中国はヤバイです....。


身動きできないほど酒飲まされました( ;∀;)


武漢は大騒ぎですねえ。


日本人も出国できないみたいでお気の毒です。


春節休みでこの後時間ができるので、数をまとめて投稿したいと思います!


サボってた訳じゃないんです!


ガンバって参ります!٩( ᐛ )و

「全く面倒な事になりましたな。」

秋田が地盤の柴田さんが、如何にもにも東北人らしく重苦しい雰囲気を醸す。


7月の暑さが来るたびに、思わずクーラーのリモコンを探しちまう。

三十歳を越えた今でもこのクセは治らない。


「まあまあ、奴らの動きが判明してひと月、今のところ影響は見られません。」

と言うのはヒロやんだ。

俺たちと一緒に出所してから、こいつは何だか軽くなった気がする。


結党後初めての支部長会議だ。党代表としてもうちっと雰囲気シメて欲しいもんだが。


「大同団結などと今更言って来たところで、立志社に大義などありません。我々との明確な違いも出せぬくせに、民権勢力を再編成しようなどとよくも言えたものです。」


「しかも奴ら、我々をニセモノ呼ばわりしております。」

マサアキも声を張り上げる。

「あのような無礼な奴ら、誰が相手にいたしましょう。」


「全くですな。少なくとも関東から北は、我等自由党が抑えたも同然ですわ。」

田代栄助さんは北関東支部の代表に就任してもらった。

俺たちの党幹部は皆、地元に大きな影響力を持つ者ばかりだ。だが....。


「ミンナ、ちょっと安心しすぎじゃねえか?」

俺は油断できねえと見ている。

皆の視線がコチラへ降りかかり、ヒロやんが少し顔を歪めた。


「四国・九州が奴らに手にある限り、奴らにもかなりの勢力が維持されたままだ。板垣と後藤には御一新を潜り抜けた凄みがある。それだけじゃねえ、林有造、片岡健吉、中島信行、全国にその名を知られた志士揃い。油断できる要素が何処にある?」


俺がこう言って、各代表が頷くのをマサアキはヒヤヒヤして見ている。

ここのところ俺が独断先行し過ぎだと、ヒロやんがしきりに苦情を持ってくるらしい。


例えば大隈の提案を、俺が勝手に断ったとかだ。


しかしあんなモンにむざむざ乗っかる馬鹿もねえだろう。

ヒロやんだって反対だったはずだ。

だが俺の意思で党全体の方向が決まっちまう、この状況が嫌なんだろう。


「宮崎さんの言わはる通りや、油断はあきまへんな。」

菊池寛二さんは近畿支部の代表をしてもらっている。商売人でもあり元々俺たちの支援者だったが、のめり込んでくれた結果、とうとう支部代表まで引き受けてくれた。


他に北陸代表の西潟さんと松田さんも、俺の個人的な支持者でもある。


ヒロやんにしてみりゃ『今大塩』とまで言われた英雄である自分が、党運営の中心でないのがイラつくのだろう。そりゃあ俺としてもコイツを立てていきたいと思ってる。


今は福島義士の人気に乗った方が楽だ。まあ俺らもそうなんだけど、表に出ているのは地元のヒロやんだし。

だから党代表には一も二もなくコイツを選出した。


「俺の言いたいのはさ、ヒロやん、関東から西は気をシメて行こうってことさ。」

言外にオマエのおかげで東北は大丈夫と花を持たせ、ヤツもウンウン頷く。


他のメンバーはホッとしたように緊張を解いた。


もう少し執行部がいい雰囲気じゃねえといけねえな。イカンイカン。


「立志社のこの動きを踏まえ、対策として皆様にまず地元の取りまとめをお願いしてきました。この点問題ありませんでしたか?」

カツどんが皆へ確認。スッカリ党の政調会長という雰囲気だ。


「東北は問題ありません。」

柴田さんが自信十分で返事する。

「北陸も大丈夫です。」

西潟さんも平然としていた。


「近畿はやはり多少の影響を受けますな。東海にも影響は小さくない。」

菊池さんは慎重な様子を崩さない。

「宮崎さんにはエライご苦労おかけしてますが。」

6月は近畿地方の支部大会や説明会で、スッカリ予定が潰れてしまった。


その感覚から言うと、東北が無風ってのは疑問が残る。

本当に大丈夫なんか?


「ありがとうございます。ソレでは今後の日程ですが、執行部で全国遊説を行なっていきたいと。」


「遊説日程はこの通り、ヤッパリ東北からだよな、ヒロやん!」

俺はわざとらしく声を張り上げる。


「そうしてもらえればありがたいな。」

ヒロやんは笑顔になる。故郷に錦だ。当たり前の話だ。


「九州は良いのか?宮崎さん?」

「俺は地元に借金多いからな。」

皆がドッと笑い声をあげる。俺の鉄板ネタで雰囲気は少し良くなった。


「それから北陸・北関東といこう。今年いっぱいはコレで終わりそうだ。」

「出来れば東京・神奈川に手を付けておきたい。」

ヒロやんが言うのは最もだし、皆頷いてるのは同じ思いがあるからだろう。


「手分けして進めるか?運動員がどうしても不足するが。」

俺はそう言ってマサアキの反応を見る。今や新聞事業はウチの資金源でもある。

マサアキはその他の後援者たちとも折衝をしており、すっかり自由党の幹事長だ。


運動員はこの時代ボランティアって訳にいかんからな。それどころか露骨な買収が横行することも予想される。


「新聞の稼ぎは全て注ぎ込んでも構わんが、ソレにしても資金は全く足りない。」

マサアキがそう言うなら多面作戦は無理だ。


「今年いっぱいは個別の開催で行こう。夏のうちに東北・北陸を済ませておけば、冬には神奈川・多摩に手を回せるかもしれない。」

俺はそう言って皆に了解を求める。


みんな資金が必要だし、コレに関しては大阪の俺たちが全体を養っている。

ヒロやんもコレには反対出来ない。


だからってあんまり俺たちが主導権を握ると、せっかく作った自由党が東西に分断しちまう危険性もある。

仲良く仲良く、マサアキが毎日にように俺に説教するのはコレが原因だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


党執行部は、そのまま後援会である大阪の寄合へ直行する。

加島屋を中心とした中堅どころの商会は、自由党の重要なスポンサーだ。


北浜の料亭で会合、まあ活動報告だね。


加島屋の大旦那、岸田さんはおっかない顔をしているが話の分かるおっさん。

その他の旦那衆をまとめて、俺たちを支援してくれている。

勿論見返りを期待してるだろう、でも先行投資ってのはお互い認め合わないと出来んもんだ。


現状説明と今後の方針を、カツどんとマサアキから説明。


「状況は良うわかりました、河野さん。」

岸田さんは顔に似合わん丁寧な口調でモノを言う。


「今の皆さんの人気からすれば、選挙なんて大した問題じゃあござんせんやろ。そいでもな。」

と話を切ってちろりとヒロやんを見る。

「第一回選挙は5年先や。今すぐやれば大勝利間違いなし、でも5年後は...と考えて気いつけておくれやす。」


「良く承知しております。」

ヒロやんは笑顔で頭を下げる。まあ分かっちゃいるんだろうがね。


堅い話はすぐに終わり、皆酒が入ってリラックスする。

俺は旦那衆へお酌回り。この辺が時代の差だろうか、他の奴はこういう事をしないので、旦那衆からは俺の人気が高い。


「いやいやハチローはん自らお酌頂けるなんて、まあ有り難いわ。」

「ハチローはんはこういう事できる人やさかい、人たらし言われるんやろなあ。」


たらしてないぞ、キモいからやめて欲しい。


岸田さんにもご挨拶だ。

「社長、いつもありがとうございます。」

「いやこりゃどうも......宮崎さん、さっきの後藤さんの話なあ。」


岸田さんは猪口を傾けながら、さり気なく報告にあったところを突いてくる。


「あん人はどエライ借金こさえて、岩崎さんに全部丸投げしよった。今はすっからかんの筈なのに、更に大同団結やらいう一大事業に取り組む。コレをどう思われはります?」


後藤の借金については、噂程度なら聞いている。確かイギリスの商会から借りたとか。


「そうですわ。旧幕時代からの付き合いで、グラバー言うイギリス人から借りてまんねん。コレが借りも借りたり100万円!」

「ひゃ?そ、そいつはまた....スゴイ金額だ。」

何の商売に手を出したか知らねえが、人間そこまで金貸すもんかね?


前世でいったら400億?500億?ハンパじゃねえな。


「その借金は結局20万に棒引き、蓬莱社は....後藤さんの会社は岩崎さんにその値段で払下げっちゅう事ですわ。」

何だソレ?そんな話あり得んのか?金が余ってんなら俺にくれや!


イギリス人ってのはボランティア精神が漲ってんのか?


「私はね、この絵描いたんは誰やろな思てまんねん。」

岸田さんはゆっくりとそう言った。俺にもピンと来るものがある。


まあ前世で取った杵柄だ。


「つまり後藤は...ハメられたって事ですか?そのイギリス人と岩崎に.....。」

「まあそう考えた方が普通でっしゃろ。商売も知らん殿様に100万も貸し付けて、8割棒引きとか有り得まへんがな。」


そうなると....ソイツらが後藤に大同団結をやらせた?


「そこがよう分かりまへんねん。一発逆転があるにしても、立志社が今から自由党を超えるやら難しいんちゃいますか?」

「そりゃまあ、そんな事はさせませんが。」

俺は考える。まあ人をハメるならこっちもプロだ。


「後藤に対して仕込みをする段階じゃあ、ここまで立志社の旗色が悪くなるとは思ってなかった。そうでしょう?」


後藤は明治6年の征韓論で下野してる。借金したならその頃のはず。


「そらそうでっけど、だったら今になって8割棒引きとかもあり得ませんやろ?」


まーね。そうだよね。


「後藤を駒にしようとしたのはイギリス人と岩崎の計略として、何に使おうとしてるのか.....?」


「宮崎さんにも分かりまへんか。」

「分かりませんね。まだ俺たちが知らない事があるんじゃないですか。」


大同団結ってのは、いかにも大風呂敷の後藤っぽい。とするとコレはイギリス人の描いた絵じゃない。

まあ政治家に戻ろうってゆー方便だろう。本人も出来ると思ってねえって事だ。


じゃあ一体何が狙いで?


うーん、こういう謀略ごとならアイツだよな。

チョット連絡しておこう.....東北行く前に寄ることにすっか?



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