饒舌な盟友
少々まとめる時間をいただいてました。
ここから広げた物語をたたんでいくわけで.....( ;∀;) がんばりま〜す
文中の『ボンバーマン』は足軽大将さんがご感想で名付けてくれました。
気に入ったので使わせていただいてます。m(_ _)m
6月も半ばに差し掛かろうというのに、快晴が続いている。
今年は空梅雨かねえと年嵩な人は心配し、子供たちは早くも川泳ぎを楽しんでいる。
そんな隅田川のすぐ横に建つ郵便報知新聞社の一室で、俺は絶賛煮詰まり中だった。
大隈さんが主導する『改進党』準備委員会を開催しようと、各方面へ連絡しているのだが、思ったような反応が返ってこない。
ちゃんと矢野さんから引き継いだリスト通りに接触しているのだ。
なのに半分ほどの人たちが、あーだこーだ理由をつけて集まろうとしない。
いや、みんな東京にいるんですよ?変でしょそれ?
「いや、皆参加を希望しておったのだぞ、本当だ!」
何か別の用件で偶然部屋に入ってきた矢野さんは、俺の疑惑に必死のアピール。
「ナーンかあれじゃないっすか?大隈さんに良い事ばっか吹き込んだだけなんじゃ?」
「ちがーう!本当に皆参加すると言っておったんだって!」
「えーでも馬場辰猪さんとか大石正巳さんとか....明らかに立志社系の人っぽいし。」
彼らは慶應義塾でも指折りの急進派、馬場さんに至っては土佐出身だ。
俺の疑惑は晴れない。義兄は哀れっぽく訴える。
「もはや他人ではないというのに.....義弟にも信頼されておらぬとは。」
芝居くさく嘘泣きする義兄。
実はもうどーでも良いんだけどね。
党員として納得いかない人が多かったし。地方で活動してもらえる人もいなかった。
もう少し時間をかけて、
①政府与党を作るという我々の趣旨に賛同して貰える人材
②地方で新聞社を作り、勢力拡大を図れる人材
みたいな観点で人を選びなおすぞ。
特に民権運動はどうしても政府攻撃中心で進んでいたから、改進党の特色を出すにはソコから人を選ばない方がいい。やっぱり官僚系だよ、ウンウン。
生臭い話だが地域への利益誘導を考えれば、俺の話は乗るべきポイントが盛りだくさん。
地域の発展を考える人たちなら、必ず賛同して貰えるはずだ。
いじけていた義兄(郵便報知次期主筆)だったが、ようやく用件を思い出したようだ。
「そうそう福沢先生がオマエをお呼びだ。今ほど連絡があって、今日の夜に築地精養軒へ来いと。」
えー今日は綾さん手料理の日では......。
「私も一緒に行くから、5時ごろ此処を出ることとしよう。」
ものすごくイヤだが仕方ねー。先生の呼び出しなんてそんなにある事でもないし。
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そんな俺の取り掛かってる作業は....というと、人と沢山会うこと。
主に役所内でどんな人材がいてどこ出身か、そんな事を地道に聞き回っている。
一月ほどやってみて、めぼしい人達へアプローチを始めよう。
イヤーすっごい地味。
でも夏が終わる頃にはちょっとしたリストが出来上がるはず。
焦ってはいけない、ココが基礎を作る1番大事な作業なんだと自分に言い聞かせる。
ハチローさんや河野広中さんみたいな、派手な活動家がチョットうらやま。
今日もシコシコ資料をまとめてると、報知の事務方がやって来た。
「木堂先生、階下に頭山さんとおっしゃる目つきの悪い方がお見えで.....。」
第一印象は変えられないんだね。
福岡に戻ってた爆弾野郎が、ようやく東京へ出て来たようだ。
「こちらへご案内してもよろしいですか?」
お願いしますと言うと、事務さんはいそいそ階下へと降りていった。
長い時間待たせておくと、何をしだすか心配だったようだ。
程なくミツルは『改進党準備室』に入って来た。オマケに誰か連れて来ている。
「またヤッカイになるばい。」
ミツルはそう言ってボサリと荷物を置く。
そこそこな大きさの荷物は、このまま朝鮮へ乗り込もうという気合い十分。
連れの方はそれほどの荷を持ってない。
「こいつがツヨシに紹介ばしてほしい言うけん、しょうがないから連れて来たったい。ワシの盟友で平岡浩太郎ちゅう者じゃ!」
「平岡です。よろしくお願いします!」
ミツルとは打って変わって普通な人である。
「木堂先生のご評判は遠く博多の田舎まで鳴り響いておりますから、我が向陽社の頭山満が親しく交わらせていただいていると聞き、これは如何にも羨ましく、いても立っても居れず、たまさか福岡に戻って来たを幸いこれをひっ捕らえ、如何にかして木堂先生へご紹介してくんろと三日三晩訴え続けて、ようやく同意をさせた次第。イヤーようやくご本人にお会いできて、まさに恐悦至極にございます!」
......全然普通の人じゃなかった。よく喋るねえ。
「平浩はウンザリするほどよう喋りおるヤツじゃが、鉱山経営でしこたま儲けてワシらの活動ば支えてくれちょる。」
ナニ儲けてる?それはスバラシイ。
「最近ナニを食ったか知らんが、突然国会議員になりたい言いよるけん、ツヨシに面倒ばみてもらおう思って連れてきたばい。」
ミツルは身も蓋もない紹介を終える。お前ゼッタイ人の紹介とか向いてないぞ。
でも俺的には大歓迎だ。
九州での活動が、金銭的に保証できる人の参加は心強い。
「それはようこそ、まあおかけください。」
俺は古いドッシリしたソファーへ2人を腰掛けさせる。
「そんじゃあ平岡さんはミツルと一緒に朝鮮には行かず.....。」
「勿論行きません!コイツらの酔狂に付き合っては居れません。私は国会議員を目指したいのです!」
うーん、手段が目標になっちゃうタイプの人?
まあ下手に強固なポリシー持っている人より良いかもしれないし。人間はなるべく良いとこをみようよ!
そんな諺もあったろ?ないか?
「先ずは我々の改進党にご興味持っていただき、誠にありがとうございます。」
我ながら新興宗教の勧誘みたい。
「改進党は大隈重信卿を中心に、その理想を実現しようと賛同する人たちの集まりです。大隈卿の政策主張については、お聞きになったことはありますか?」
勿論ないよな?うん知ってたよ。
「大隈卿は現政府の推進者でもあります。当然ながら板垣退助とは違い、政府与党をお作りになるわけです。ムロン政府が我々の主義から大きく離れた場合、批判もするし糾弾もするのは当たり前の事ですが。」
「ほ?政府に味方するとおっしゃるか?そんな政党は何のために存在するので?」
今の民権運動の常識では、この反応こそが普通だ。
ほとんどの人々は、反政府・反薩長こそが民権運動と信じている。板垣さんの影響力はスゴイナー。
そこに政府与党と言われても、存在意義が分からんというのが正直なところだろう。
「平岡さんは何のために議員を志します?」
「無論未来の日本国のためです!今の薩長に任せていては....。」
いやチョット、そこで飛躍しないで。
「おっしゃる通り、未来を考えるとやらねばならぬ事が山積みです。」
俺は申し訳ないけど平岡さんのお喋りをぶった切る。
「列強は巨大、さらに我等より遥か先の技術を持っています。今それを学ばなければ、永遠に彼らには追いつけません。つまり日本人はもう身内で争うのをやめ、前に進まなきゃならんのです。」
「はあ。」
反応が弱いが気にすんな。意味は通じているみたいだ。
「我々には『官民協力』という理念があります。もはや争いを続ける時代は終わり、この後は日本の発展のための競争が始まります。企業の競争、国家間の競争、そして地域間の競争です。」
「地域間の?」
「そうです。平岡さんも経営者ならお分かりと思いますが、今後政府の予算は地方の発展において、どうしても必要になるものです。地域の発展のため、改進党は政府予算を引き出し地元経済へ貢献する政党になる。」
「おお、なるほど!」
「そのためには政府との良好な関係が前提となります。人々の生活を守るために政府からも条件を引き出す、一方で政府へ協力する事もあるでしょう。」
「ふむー。」
ミツルも俺の話をジッと聞いている。
「ツヨシの言っとることはよう分かった。ばってんそんな政党ができよったら、汚職塗れの政治家が必ず出よう?今の薩長出身者どもが、豪商に金で使われておるように。」
「その可能性は否定しない。当然その問題は最優先で取り締まる。さらに政府に対しても味方であればこそ、取り締まれる事もあるだろ?」
金に汚くなってはいかん。キレイ事だがそれは重要だ。
「私は気に入りました。」
平岡さんはあっさりと言う。
「さすがは木堂先生!正直わたしゃ薩長なんぞどうだって構わない、というより難しい理屈はよう分からん。今の先生のお話の分かりやすさはどうじゃ!議員は地域を代表して、地域の利益にも貢献できる!それが地域間の競争となり、日本の発展にもつながるんじゃ。」
さっき薩長がどうたら言いそうになってましたよね?ウソですか?
でもこんな普通の人の方が話はしやすい。
民権論者は理屈を語りすぎるが、利益で語れば政治は分かりやすくなる。
「木堂先生!ゼヒこの平浩めを改進党の末席にお加えください!九州での改進党発展のため、及ばずながら誠心誠意....。」
はい合格合格。もー喋んなくて良いから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後俺たちは京橋の曽根さんのところへ。
ミツルを引き合わせ、今後の朝鮮での話をするためだ。
そんな用事ができたので、築地精養軒へは京橋から直接向かう事に。
折よく曽根さんは京橋の振亜社におり、ミツル達居留地警護隊の身分保証と給与について、既に決定していることを説明してくれる。
「こりゃありがたか!タダ飯食って暴れて、おまけに給料ば貰えよるたら、天国ばい!」
そこまで本性ぶっちゃけんな。いくら曽根さんでも疑問に思うかもしれんぞ。
ミツル達の移動は加賀屋さんが請け負ってくれるので、他の仲間は大阪で待機している。
本人はこれから取って返して大阪で仲間と合流後、朝鮮へ出発。
平岡さんは明日も事務所で、俺と今後の打ち合わせをする事になった。
皆と別れてすぐさま築地精養軒へダッシュ!
先生をお待たせするとかあり得ない。
オメーも偉くなったな!とか言われて一晩中イビられる。
現場に到着すると、先生と矢野さんは既にご到着、茶を喫しながら談笑中だった。
「お待たせして申し訳ありません!」
「おおツヨシ!早かったな、まあ座れ。」
セーフか?ご機嫌は悪くないな?
俺は空気を確認しつつ、テーブルの一角を占める。
「朝鮮がらみの件で、曽根さんの所へ伺ってました。」
「ご苦労だった、今日呼び立てたのもその件についてだ。」
おや、朝鮮がらみですか。それにしちゃあ矢野さんと俺って、メンバーおかしいですよね?
「そろそろ後藤さんも到着される頃だ。」
あー、後藤先生ですか。ハイハイ。
福沢先生は後藤象二郎さんへの評価がもんのすごい高い。
前世でそれほどこの人について知らない俺は、この高評価がいまいち理解できん。
矢野さんに聞いてみた事があったが、逆にナニいってんだお前的な反応をされた。
『大政奉還という古今類を見ぬ大方策を実行された、正に維新の大英雄の1人だろうが?おまけに江戸徳川家に仕えたことを忘れぬ先生からすれば、徳川を救った人でもある。』
てー事でした。まあそう言えばそうか。
戦争嫌いな先生からすれば、無血革命を成し遂げた天才政治家って事なんだろうね。
「俺が朝鮮の件でお会いしたいと申し上げたら、後藤さんがお前らに会いたいとおっしゃって来たのだ。」
へー後藤先生が?俺は秘書仕事をしてた時に1度お会いした事があるだけだ。
何の御用でしょう?
と言うか福沢先生は後藤さんを、朝鮮の件に絡ませようって腹ですか?




