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日本国の頭脳

誤字脱字修正、毎度毎度ありがとうございます!


どーしてこんな間違いしてるの?っていうのが多いですね.....


お見苦しくて申し訳ありませんm(_ _)m

福沢先生がお戻りになったと、福沢ガールズが知らせにきてくれた。


「ツヨシ〜、キャ〜!」

「ツヨぽん!久しぶりなの〜!」

おさんちゃんとおふさちゃんが、俺の背中へタックルかます。


「ツヨぽんもっとウチに来なきゃダメ〜。」

お俊ちゃんも俺の袖をひっぱる。

相変わらずカワイイね。


「皆さん学舎の方には来ちゃダメですよ。奥様に怒られる。」


俺は一人ひとり頭を撫でてやりながら小言を言うが、顔は超笑顔だ。


「おかかさまがツヨシ呼んできてって言ったの!」

「ゆったの!」


「ああ、もう先生がお帰りになったんですね。」

俺は尾崎も一緒に来るかとその方を見るが、奴は慌てて首を振る。

用がなければ会いたくないんだろう。


「じゃあ一緒に母屋へ戻りましょう。」

「もどりましょー!」

「しょー!!」


お嬢さんたちはご機嫌で抱きついてくる。お俊ちゃんはいつものように抱っこをねだる。


先生にお会いするまでの、ちょっとした癒しタイム。

本人に会えば巨大なプレッシャーに襲われるのだ。このくらいの癒しは必要だろう。


先生は居間で寛ぎ茶を飲んでいた。


「帰ったか。」

結構厳しい顔をしている。コレは....要注意だ。


「昨日戻りました。朝鮮の件では先生にご尽力いただいたの事、誠にありがとうございました。」


先生はフンと頷く。

「俺がやったことといえば、井上さんに旅券を急ぎで作らせた事くらいよ。礼には及ばん。」

いやそれ十分普通じゃないっす。


「朝鮮はどうだった。」


来たよ。そりゃ来るわな。


「はい、現地独立党の首領2名と話す機会がありました。しかしどうにも....花房さんとも長い時間お話ししてきましたが、彼らの動きには焦りが感じられます。」


「独立党は旗色が悪いか。」


「国王は比較的独立党へ期待しているようです。それは閔氏主導の政治の中で、自身の閉塞した状態を打破するため、独立党と日本に武力を求めているようです。」


アイツらそんな事言ってるか、と福沢先生は考え込む。


「その認識はどうだろうな?国王自身がハッキリそう言ったならともかく、アイツら焦って自分たちの願望を言ってるだけじゃねえか?」


へ?うーんつまり?


「朝鮮がもっとも悩んでいるのは、深刻な経済不振と国防問題だ。清国と付き合いを深めてコレが解決できるのか、あるいは他の国に頼るべきかが、今開化派の中で起きている対立だろう。」


はいそうですね。


「だとすりゃあ日本と接触する理由が、武力で現状を打破するなんてブッソウな事か?単に清国と日本を天秤にかけてる、そう考えた方が自然だろ?」


なるほど、国王は閔氏に反発しているわけじゃなく、普通に国体をなんとかしようとしているだけだと。


「独立党も花房もそこんとこを見誤ってないか?焦って革命蜂起(クーデター)でもおっ始めそうじゃねえか?今は焦らず時間をかけて、日本と組む事に利益があるんだと知らしめにゃいかんだろ。」


メッチャ正論だ。だが果たしてそんな事が朝鮮に期待できるだろうか?

21世紀を見てる俺からすれば、それは起こらない理想の未来としか思えない。


「花房公使はこの機会を利用し、釜山に日本軍を駐留させたいとお考えです。」


俺は花房さんの秘中の策を先生にぶつけてみる。


「フン、大分焦ってきているな。清国派にもそんな動きがあるか。」


まるっとお見通しですね。


「日本国が朝鮮に軍隊を駐留させる.....自国民保護のためとか理由はいくらもつけれるだろうが、そうなりゃ清国も同じようにするだろう。結果として朝鮮半島内で、清国と日本国の開戦の危機が強まる。」


その通りです。


「伊藤博文が憲法調査で欧州に行っている現状、元老院がそんな判断を下すはずは無い。征韓論の二の舞いだろうよ。清国だって列強の相手で手一杯だ。いま日本国とコトを構えようと思うはずがない。」


まあ....そうなりますよね。


「ここは要請のあった通り、指導教官の派遣だけにとどめておくべきだ。今は朝鮮側が何処と組むのが最善なのかを判断してる時期だろう。精々日本陸軍の強度を見せてやりゃあいいんだ。」


先生のご判断でもこーなる。花房さんやっぱダメっすわ。


そーなってくると壬午軍乱はヤッパリ清国に持ってかれちゃうんだよね。

ここはもう一押し....。


「先生実はですね。」

「うん?」

「花房公使から伺ったのですが、前支配者の大院君が復権目指してナニやら企んでいるようなのです。」

「おお、ありそうな話じゃねえか。」


よし、掴みはオッケー。


「もし大院君による革命蜂起(クーデター)が起きたとして、それを鎮圧するのに朝鮮政府は清国にすがる可能性があります。」


「大いにあるな。」


「そうなれば、彼らは鎮圧後も軍を駐留させる事が可能です。そうとなっては日本国の、ひいては花房公使のご努力が水の泡となります。」


日本から軍を出すより、清国は圧倒的に速く効率よく軍を派遣できる。


「そのためにも花房公使は何とか軍を駐留させようと....。」


「バカめ、お前の頭は空洞か?」


あれ?俺間違えちゃいました?


「日本国が協力して指導するその軍隊は?何のために存在するんだよ、このバカ助が。」


ええ....まあ...。


「そんな有事があれば、日本国の協力が最も効果あると分からせる、絶好の機会じゃねえか!そんな事も分かんねえのか!このヒョーロク玉が!なあんのために朝鮮くんだりまで行ってきやがった!」


うああ...ひっさびさにキッツイ....。


「オマケに誰が何やらかすかまで分かってんなら、いっくらでも対処の仕様があんだろう!すこしゃあテメエの頭使え!そんなコッタから官憲に尻尾掴まれて逃げ回る目に遭うんだ!」


「マコトニ申し訳ありません。オッシャル通りでゴザイマシタ。」


グーの音も出ません。その線で善処いたします。


「ヤレヤレお前までこんなに考え足りねえとは思わなかったぜ。大蔵省なんざ入ってヤキが回ったか?も一度俺んとこで修行が必要じゃねえか?」


ゼッタイいやです勘弁してください。

尾崎よすまん、お前の話などできる状況では無い。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


逃げるように三田を後にした俺は、その足で市ヶ谷へ。

おー怖かった。


マジで正論すぎて太刀打ちできん。

あの人を説得できるようになるには、どんな修行を積めばいいんだろうか?

禅寺でも行こうか....イヤそんなんじゃゼッタイ無理だな。


陸軍参謀本部の所在はよく知らないが、前回市ヶ谷で児玉さんと会ったから恐らく同じ建物の中だろう。


到着後、守衛さんへおたずねする。


「すいません、私犬養毅と申しますが、陸軍参謀本部の場所を.....え?」


守衛さんはナゼか2人とも後ろへ飛び下がり、守衛室の壁にぶつかって倒れる。


「だ、大丈夫っすか?」

ナンですかそのリアクション?


「いや、あの、犬養さん....とおっしゃいました.....?」

「はあ。」

「ちゅ、ちょ、ちょっとココでおまちゃちゃくだしゃしゃれ!」


ナゾの言葉を残して、守衛さんの1人は建物目指しダッシュ。

残された1人は床から壁伝いに立ち上がるが、俺を凝視したまま口をきかない。


「あのチョット....。」

「はああああああい!いや!ダメ!何も聞かないで!お答え出来ません!」


なんだこの人達は?俺が何をした?


キンチョーした対峙が10分ほど続き、俺がうんざりして帰ろうと思った頃、建物から児玉さんが笑顔で出てきた。

「犬養くん!久しぶりだ!」


ナンか笑顔っていうか、めちゃ笑ってますよね。


「イヤイヤ君の来訪がある度に、陸軍省(ウチ)の反応が凄くってね。敵が攻めてきたみたいな騒ぎになる。」


「非常に心外です。」

陸軍とはとても良い関係だと思うのだが?曽根さんに雇われていた事もあるんだから、身内と言っても良いと思うんだが?


怒る俺をまあまあとなだめる児玉さん。


「敵っていうのは冗談だよ。とにかく君は大物すぎて、突然来られると皆動揺するんだ。」


意味がわかりません。陸軍を動揺させるとかゴ◯ラじゃあるまいし。


俺は参謀本部の1室へと案内される。

もう民間人なんだし、アポ無しで来るとかよく考えたらマズいよな。


「そんな事を気にする必要はないよ。まあ....確かに事前に連絡くれれば、職員の動揺は緩和されるけどね。でも君が来るなんてよほど急ぎの事だろう?」


「急ぎっちゃ急ぎですが。」

俺は先程福沢先生に報告した話を、もう1度児玉さんに伝える。


「えっ!その件犬養くんが関わってるのかい?概要だけ曽根さんから聞いてるけど。」

児玉さんはチョット驚いた様子。

そういえば別に俺が関わんなきゃならない事ではない。


「何と申しますか、コレには福沢先生が絡んでおりまして.....。」

説明するのにも一苦労だ。

曽根さんが先生に協力を求めてきたところから、簡単に経緯を説明する。


「ああ、福沢先生にご協力いただいているのは聞いてるよ。そっか、犬養くんも振亜社に関わってくれてたもんね。」


ご納得いただいたところで、更に花房公使の策と先生の反応を伝える。


「んーなるほど。さすが日本国を代表する頭脳、福沢先生のご判断は間違い無いだろうね。いやあ恐れ入るなあ、参謀本部に来てくれないかなあ。」


本気で言ってます?ゼッタイ後悔しますよ?


「いやつまり軍事教官派遣の件は、中途半端な人材ではいかんということだな。短期間で徹底的に鍛え上げる、強靭な精神力と頭脳が必要だ。それに出来れば武器の提供もあった方がいい。」


そうですね。そんな人材都合よくいればの話ですけど。


「大変参考になった。この後曽根さんと本部長も交えて、この件は協議するよ。先生のご助言は必ず取り入れると思う。くれぐれもよろしくお伝えしてくれ。」


よろしくお願いします。アレ?本部長って空席じゃなかったですか?


「ああ、そうだ。まだ正式決定では無いんだけどね......。」


児玉さんがニヤニヤ笑う。


「鳥尾小弥太中将が、参謀本部長に内定したんだ。今月中に正式に決まると思うよ。」


おお!鳥尾さん復活ですか!おめでとうございます!!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 福沢先生、流石です! 若い頃メリケンから帰国した際に大老井伊直弼殺害を当ててみせた頭脳明晰さは伊達じゃないっすね……『日本政府は三田に在る』と囁かれたのも納得します。 でもそれ以上に、ツ…
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