その党名、パクリにつき
いつもご感想ありがとうございます。
私より明らかに事情通の皆さま、岡山県関係の皆さまから寄せられる、
色々な情報.御要望は本当に読んでて楽しく、勉強になります。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
誤字情報も助かってます。ご協力頂きありがとうございます!
「そりゃあまた突拍子もねえ.....事もねえか。」
ハチローさんはどこか腑に落ちた顔をしている。
「死んでランダムに過去に転生!ってよりしっくり来るかもな。」
「うーん、でもソレはそれで怖いですけど。」
ロビー横のラウンジには、俺たち以外の人影はない。
造りが全体的に小ぶりではあるが、落ち着いたクラシックな雰囲気のある場所だ。
オイルランプの灯りが俺たちの顔を照らし、マフィア映画の一場面のようだ。着物着てるけどね。
「そうか?怖いってのは運命の抗えない力みたいなものがか?」
ハチローさんは笑いながらいう。
「そーいうんじゃなく、コレが大きな業を背負ってるから起こる事ならば、その『業』を解決するまで永遠にループしなきゃなんない、とかだと嫌じゃないですか?」
「オマエって何でそんなにネガティブな事思いつけるの?」
ハチローさんの笑いが消える。
「あくまでも仮説でして。」
ハチローさんは頭を抱え込んでいる。
「おかしーと思ったんだよ。俺みたいな半グレが何で民権運動なんかやってんのかさー。きっとこの人生で達成できなかった事が、業となって俺を追い回しているんだ。」
「それが民権運動だと?」
「いや、水呑み百姓たちを解放する事だよ。」
ハチローさんはキッパリという。
「俺が取り憑かれているのはその事だ。朝から晩まで頭から離れねえ。それが前回は西南戦争で死んじまってるから、またやり直しって訳だ。」
ふーん、そういう風に考えるんですね。
「それじゃハチローさんは、コレが無限ループだと思います?」
「いや、そんな事は分かんねえけどもよ。」
空になったグラスを見つめながら、ハチローさんは呟くように言う。
「誰にでも起こる事じゃねえ、コレってやり直しのチャンスじゃねえか。罰ゲームみたいに考えんのはやめようや。」
俺はハチローさんのこの言葉がすんなり腹に落ちた。
以前マサアキさんがハチローさんを評して、人を奮い立たせる言葉を吐くって言ってたが、この人のポジティブさはこの後も多くの人を救っていくんだろうな。
「ハチローさん、ありがとうございます。なんか俺、話してスッキリしました。」
「ナニ、いいってことよ。この人生の原因がどこにあれ、俺たち意外と上手くやってるような気がするな。」
それは俺も思ってました。
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翌日、俺たちは再び集合。
今度は自由日報社で打ち合わせだ。
「愛国社非土佐派は、5月25日に結党集会を行う。場所は大阪自由日報本社ビル。」
マサアキさんが今後の予定を読み上げる。
「随分と忙しないのう。」
ミツルが感想を漏らす。
「なあに、仲間内じゃあ先月末には周知している事よ。」
ハチローさんは自信満々だ。
「そう、これは土佐立志社宛に送る案内状だ。参加したければ来いという内容さ。」
マサアキさんまで上から目線である。
「ここで参加しなけりゃあ奴らもジリ貧ですからね。」
勝人までどっから目線....もうこれフラグ立ってんじゃね?大丈夫?
「ケンカ上手の戦い方じゃね。勢いある時に勝負に出るのはよか考えたい。」
そう?まあ俺以外全員賛成みたいだしいっか。どうせ俺ケンカとか分かんねーし。
「ツヨシは悪巧み専門だからな!こういう正攻法は俺に任しておけや!」
うーん、なんか釈然としませんハチローさん。
「それで...君たち2人はどうする?コレに参加していくかい?」
マサアキさんが俺とミツルに確認する。
そういや俺はともかくミツルは.....確かなんかの途中に福島の件に巻き込んじまったんだ。
「ワシャ政党にはどうやら向いちょらんけん、1度福岡ば戻ろうかいの。」
「そうなのか?結構向いてそうだけど。」
意外な事をミツルは言った。
「今度の事でよう分かったばい。ワシャ気持ち的には板垣さんらに近い。」
俺はなるほどと思った。皆も何となく頷いている。
コイツも萩の乱に参加しようとした不平士族の1人でもあるし、西郷隆盛を尊敬しているあたりも立志社系の人たちと同じだ。
気持ちとして俺たちと居たいと思っても、心情として立志社に同情してしまうだろう。
だからココで距離をおきたいとコイツは言ってるのだ。
「俺も東京へ帰ります。大蔵省で引き継ぎをして、新聞社つくって政党立ち上げないと。」
俺もそう言って不参加表明。
彼らに遅れを取る一方だ。急いで事を進めなければ。ああ、アレもあった。
「ミツルお前さ、朝鮮に興味あるか?」
ミツルは明後日方向からの質問に、目をパチクリさせている。
「朝鮮に.....興味あるってどういう意味っちゃ?あるに決まっとろう!西郷先生が志した征韓の夢ばい!」
絶対そうだと思っていたよ。
「今な、花房さんという朝鮮公使がおられてな.....。」
俺はこの場である程度ぶっちゃけた。
今後対立する予定の政党メンバーでありながら、俺の最も信頼できる友人たちだ。
実に奇妙な事だが、隠し事をする様な間柄ではない。口止めはするけどね。
「てな訳で、現地居住地区を守る警備隊が必要になっている。」
「その警備隊はいずれ....現地工作の実働部隊にもなり得るっちゅう事でよかと?」
うーん、俺の好みではないけど、花房さんの考え方からすればそうなって不思議はない。
「今後の状況にもよるけど、花房公使という人はかなり現場で判断する人だ。必要に応じてそうなるかもしれない。」
「よっしゃ、それで十分たい。ワシャ朝鮮ば行くことにしたけん。」
は、速い....判断早いヤツは身の回りに多いが、この場合速いと言うべきだろう。
「チョットちょっと!そっちの方が面白そーじゃねえか?」
「宮崎!お前が行く事は許さんぞ!」
「ツヨシ!お前ハチローさんがいるのにそんな話したらダメだろう!」
なんか怒られましたが....今後の話してるダケダロ!
「大丈夫ですよマサアキさん、まさかこの人が結党大会を無視して朝鮮になんか.....。」
来るかもしれない。そんな気もする。
「ハチローさんよ!まあここはワシに任せて、オンシは民権なんちゃらやっときゃえーのよ!」
ファッファッファと高笑いのミツル。
「なんかすげえ腹立ってきたぞオイ。」
「ヤメロ!宮崎!あんな簡単な挑発で煽られてる場合か!」
「結党大会っすよハチローさん!冗談じゃありませんよ!」
身を乗り出すハチローさんを取り押さえる2人。
俺も一言ミツルに釘をさす。
「オマエ調子に乗ってると行かせねえぞ....。」
「なーに言うチョルの!冗談じゃ!ワシ何でもしますけえ!」
ミツルは恐らく向陽社とかいう愚連隊も連れて行くつもりだろう。
段取りつくまで東京には戻れそうもない。早速花房公使へ連絡取らねば。
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そんなコンナで、あっという間に打合せは夜まで及んだ。
「もうよかろう!メシ行こうぜメシ!」
ハチローさんの今日の仕事量は、1日分の限界に達した様だ。
時間はかかったが、今後の俺たちの方向が共有できたのは良かった。
ここでの話し合いは他の奴らに聞かせられない。
近くのうどん屋に5人でなだれ込む。一品料理と酒も出すとのこと。
自由日報社の面々にはお馴染みのお店だそうだ。
ビールもあったので皆でカンパイ!
「そういえばさ、党名ってどうすんですか?」
俺はふと思いついて尋ねる。
大隈卿あたりだと、徹夜するほど盛り上がるネタだ。ここでもさぞかし....と思いきや。
「もう決まってるよ。」
とマサアキさんは涼しい顔をしている。
「んな事気にしてねえで食えよ!ほらココの厚揚げは美味えんだよ!」
なんか不自然ですねハチローさん?
アナタだってムショ出たばっかりだし、この店来たの初めてじゃないんすか?
「俺たちの党名は新聞と同じだよ。自由日報から生まれた自由党だ!」
勝人が誇らしげに宣言する。
「おお!よか名前ばい!こういうんは覚えやすか名前が1番たい!」
「でしょ?コレはいい名前でしょ?」
勝人ははしゃいでいる。しかしお前それは.....。
俺はハチローさんを見るが、そこには開き直った確信犯がいた。
「良いんだよ!こういうのは早いもんガチなんだよ!」
俺は良いですけどね、でもこんな簡単な事で歴史変えちゃうとかズルくないっすか?




