アイツ等と何が違う?
昨日から発熱でぶっ倒れておりました_:(´ཀ`」 ∠):
ようやくバナナくらいは食べれます。
何か食べ物に当たったっぽい?重慶小麺か?あのモツが怪しかったから....。
皆さま中国ご旅行の際は、くれぐれも食べ物にご注意を!
「今、伊藤君が欧州へ視察に行ってるんである。」
大隈卿が言っているのは、伊藤博文の憲法調査団のことだ。
先日コワシさんも言っていた通り彼も一緒だし、多くの学者も同行している。
「我輩はイギリスが行う、いわゆる政党内閣が本筋であろうと思う。しかし今多くの元老は、ドイツの制度が我が国に向いていると言うんである。」
「日本は今上陛下がおられますからね。」
どちらも立憲君主制だ。ドイツの方が、より君主の権限が強い。
「だがな犬養君、考えてもみるんである。10年ほど前まで皇室には、何の権限もなかったんである。」
いやー、やっぱこの人枠に収まらんっつーか。
「閣下、他の場所でそのご発言は....。」
「勿論せんのである。だがあたかも大権がずっと存続して来たかのように、議論をすり替える奴らが我慢ならんのである!」
そうは言っても『不敬だ』なんて言われちゃう世の中ですから。
「イギリス型の場合は、多数派政党が内閣を作るでしょうが、ドイツ型だとどうなりますか?」
「決まってみないと分からんであるが....元老院が指名する総理大臣が、内閣を組閣するのが妥当じゃろう。」
なるほど、そうなって来ると.....。
「閣下がおっしゃるように、皇室が国体運営などできないのは明らかです。」
「ワシはそこまで言ってないんである。」
目をそらす元老。
「しかし一般市民の運営する政党は、さらに問題があるでしょう?愛国社系の人のように、口で負けたら腕力に訴える者も多い。彼らがすぐに国家を運営できるとは、俺にも到底思えません。」
うむむな元老。
「それは...まあ考えねばならぬ問題である。」
「俺もドイツ型が妥当と思います。将来変えていけば良いし、全部がドイツと同じようにすれば良いってもんでもない。日本に合わせた日本型の制度を、考えてもらいましょう。」
ここは結構大事なところだ。
コワシさんによれば、大隈卿は史実でこの政党内閣をゴリ押ししすぎ、伊藤卿との対立を招いている。
「それにもう一つ、閣下は政党を作った後、内閣に誘われたらどうされますか?」
「そりゃ断る理由はないんである。」
ダメだろ!この程度の認識だから後々揉め事多いんだよ。
「閣下よろしいですか?」
「うん?」
「例えば内閣が、予算審議しておるとします。ここで政党としては予算を減額し、国民へやった感を出したい。」
「出しゃええんである。」
「その時自分たちの首班が、内閣で大臣をやっていたらどうですか?」
「ううむ....そりゃあやり難いんである。」
少しは反省したか。
「このように、政党から人を内閣へ出すとなれば、その政党も内閣を支える体制を取らねばなりません。その旨くれぐれもお忘れないよう!」
「わ、分かったんである。」
この人はやるからなー。少し強く言っておかないと。
「ところでその政党ですが、具体的にお決めになられた事はありますか。」
大隈卿はニヤニヤと笑った。
「いや、具体的になどまだまだ!大体何人集めにゃならんじゃとか、資格者が何歳からとかそんな事も分っとらんのである。」
「ソレでも政党は作れましょう?設立目的や党綱領など、しっかりまとめて政策を語る場とすればいいのです。」
「うむ.....犬養君には何か考えが?」
「最初は小さい規模から始めましょう。」
俺は私案を口にする。
「事務所として一つ、何かあれば良いのです。そこで取締り対象にならない程度の、打ち合わせ程度の集会を定期的に開催致します。」
「ふむふむ。」
「そのうち憲法の内容も伝わってくるでしょう。そこに至るまでに、全国規模の組織を作らねばならず、既に先行している愛国社と違って、我々には何もありません。」
「うーむ。」
「私が得意な分野という事もありますが、新聞社を運営していくのが有効と思います。全国各地に新聞の需要はあるし、啓蒙手段としても丁度よろしい。」
「よろしい!ソレで行くんである!」
決めるの早すぎ。ホントに何も考えてなかったな?
「しかしコレを実行していくには、数十名の人間が、全国へ散らばっていく必要があります。先ずは我々の党に誰が参加して、何人が動けるのか。」
「後で矢野君に、まとめさせておくんである。おお!矢野君といえば!」
大隈卿はニカっと笑って言った。
「君の仲人の件であるが.....。」
全然ごまかせてませんでした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後30分ほど、仲人の件は福沢先生にお願いすることを、お詫びとともにご納得いただく。
「福沢君はソリャア君とは師弟関係であるし?矢野君もそうであるし?我輩はかまわんのであるよ?だがな!2人とも我輩が目をかけている、優秀な部下である事もまた事実である!この先付き合いの長いのは、間違いなく我輩なんであるよ?ん?」
うざったい.....。だがここで引いてはいけない。
「閣下、この件はもうその辺で......。政党の話をもう少し。」
「ん〜?そうであるか〜?我輩は構わんであるが?」
くっ...スネっぷりが、ちょっと可愛いじゃねえか元老。
「我々のとる方向性、党の方針というべきものをお伺いしたいんです。まあ先ほど申し上げた、党綱領に繋がるものとなるでしょうが。」
さすがに大隈卿は、真面目な顔で考え込んだ。
「それほど気をてらったものは無いんである。1つに皇室繁栄と国民の幸福、1つに産業振興、さらに...地方自治。」
「ふむふむ。」
「普通選挙実現、どうやら選挙資格はかなり制限あるようじゃ。更には不平等条約改正。もっというなら通貨制度の改善。そんなとこである。」
さすがにスラスラと5、6個出てくる。妥当だろうな。
「全く問題ないと思いますので、細かい文面を考えお持ちします。」
「うむ。しかしコレでは、どの党も同じようなものになるんである。」
そうだよなー。でもここでおかしな事も言えないし。
「犬養君に聞きたいのだが、我々と愛国社の違いとは、どこにおくべきであるか?」
「違いですか?」
「そうなんである。国民から見て、我々と愛国社との大きな違いが分からなければ、我々を積極的に支持する事が無さそうで、なんか不安なんである!」
まあその不安は分かるが。
「愛国社系はとにかく、急進的である事が特徴です。良くも悪くも物事を早く変化させようとします。また行動も過激であり、時には暴力も辞さずに押し込んできます。」
「そんなところが違うのは当たり前である。政党とは言論によって物事を解決するものである。」
「それで良いじゃありませんか?」
「うむ?」
「愛国社系との最も大きな違い、それは彼らが急進的で過激であるのに対し、我らが漸進的で言論のみに訴えかける事。まるで原始人と文明人の違いです。」
「なるほど、それは分かりやすい。」
ハッハッハッと大隈卿はご機嫌になった。
「ソリャア実に面白いんである!何処かで必ず文章にしておくべきじゃ!」
そんなんタダの悪口ですよねー。
「それから犬養君、コレは一つ聞いておきたい事であるが。」
「何でしょう?」
「君が先の福島県議会蜂起で、記事にした面々たち。彼らがもし愛国社で主流派になれなかったとする.....。と、その先どうするんであるか?」
うーん、それって色々聞いてみないと。
「閣下、私はコレまでの付き合いから、彼らの仲間たちにも知り合いがおります。今後時間をかけて調べてみようと思いますが。」
「そうであるか。ではその時に話題の一つとして聞いて欲しいんであるが。」
大隈卿は葉巻の残りを灰皿に押しつけ、組んでいた足を戻して俺に向き直った。
「我々と彼らが連携する.....もしくは、同じ政党を作るというのはどうであるかと。彼らにとっても悪い話じゃないと思うんである。」
なるほどそう来たか。
確かに河野広中と宮崎八郎が参加してくれるなら、愛国社非主流派が雪崩をうって合流するだろう。
「数合わせという面では申し分ないんである。後は我々自身の仲間が、コレを了承できるかどうかである。」
俺はこの後の行動を、頭の中で確認する。
「閣下、私はこれから少々、こちらの仕事に時間を割いても....?」
「構わんのである。君は私の秘書官である。」
大隈卿は、立ち上がって笑った。




