最強の敵
ラグビー決勝が気になりますね (°▽°)
観戦後はこちらもよろしくお願いします。
俺たち2人は、ずいぶん長い間口を開かずにいたと思う。
コワシさんとの協力体制が破綻した事は、計画の全見直しを迫られる事だ。
(この先どうする?コワシさんと敵対....って訳でもないんだろうけど、協力せずに計画を進めていくのか?それとも....。)
それ以前に、俺たち2人はどうするっていう問題もあるじゃんか。
「ツヨシ、まあなんだ。」
ハチローさんが先に口を開いた。
「俺はこのまま仲間と行動を共にする。それはコワシさんと全面対決する事につながるかもしれん。」
ハチローさんのように国会開設推進の立場からすれば、コワシさんと敵対するのは間違いないですね。
敵に回したくない男No.1、歴史マニアの井上毅を相手にしなきゃいけない。
どれだけ不利な戦いになるかは想像がつく。
だがそれでも逃げない、とこのヒトは言う。
「だがオマエはまだ軌道修正すれば良い。大隈参議の右腕として行動していけるだろ?コワシさんとオマエで協力して、ある程度は歴史を変える事だってできる。」
それはさっき考えたが、『それは無いわ』というのが結論である。
「いや、その考え方は無理がありますよ。」
俺は即座に否定した。
「俺は既に軍の動きを作っちゃってます。今更見捨てられない人が多すぎる。今回の計画を止めるつもりはありません。」
俺はなんの迷いもなかった。
どうせコワシさんの言う通り、元々歴史の知識もそれほど無い。だったら今正しいと思うことを進めるべきだろ。
「.....そうか、そんじゃあまあ暫くは一緒に行動だな。」
さすがに嬉しそうに、ハチローさんがポツっと言った。
俺はつまりコワシさんよりハチローさん側に付いたことになるのか。それは予想外ね。
「やりましょう。俺たち別に間違った事してるわけじゃ無いし。」
若干自分を励まし気味に俺は言う。
「ただよ、あの人が邪魔してくる事がどんな手なのか、そこは予測しておかないと後手に回っちまう。オマエ頭良いんだから、ちっと考えてみろや。」
うーんやっぱりコワシさんと協力した方がいいだろーか?
この人の行動力は並外れているが、作戦全振りしてくるとか不安しかない。
「まあやってみましょうか。」
俺は立ち上がって一つ伸びをした。
「取り敢えずメシ食いましょう。腹が減っちゃあモノも考えられない。」
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宿場町には歓楽街がつきものだ。
色街は町の外れに、その手前には飲み屋が軒を連ねて、食欲性欲を消費する歓楽街を構成する。
近年急速に拡大しているこの町は、食べる飲むのお店に事欠かなかった。
俺たちは宿から程近い、比較的静かなお店を選ぶ。
幸いにも青梅村からここまで、監視の目を向けられている兆候は無い。
割とマジで、東京にいると尾行とかされる事もあるんだよね。
ジャーナリストと民権団体は特に危険視されている。
今後はコワシさんの組織にも注意が必要だが、今日の今日で何をされるわけでもないだろう。
という訳で、今日は監視の目を気にせず、美味しそうなとこを探せ!で店を決めた。
俺たちは竹の子の煮物とテンプラを堪能し、多摩の地酒を....俺は舐める程度で楽しみ、熱い蕎麦を啜った。
どれも東京で食べる味と変わらない。いやすごく旨い。
「こりゃあ美味いな。所詮田舎町と思って侮っていたが、九州の山猿にはもったいねえ味だ。」
「そんなに卑下する事ないでしょ。九州にも美味いものは沢山ある。」
どうやら俺たちは調子が出てきた。
やっぱり腹が減っちゃあいかんのです。前向きな事が考えられんのですよ。
「さて、コワシ対策だ。」
一息ついたところでハチローさんが言った。
「ヤツはどう出る?ホンで俺らはどーする?」
早速全振りいただきました。
「まず...すぐやりそうな事と言えば....警察の取り締まりですよ。」
内務省はかなり管轄が広いが、何といっても治安維持である。
こんな時代だから勝敗を決める決定的な力を持っている。
「いま民権運動勢力はハチローさんのおかげで、集会の参加者が暴れまわらなくなり逮捕者が激減しました。結果として民権団体はその影響力を削減されずにいます。」
「イヤ、逆に勢力は伸びてきてると思う。」
ハチローさんは誇らしげに言う。
「コワシさんはそこを狙ってくるでしょう。法律を強化して、集会参加者も根こそぎ逮捕すると思います。」
「なあ!?それは...そうか、やられたら一番イヤだ。絶対そうするよな。」
集会条例とかいうヤツ?
性格悪い人間には、人の痛みが分かってしまうのですよ。
「そしたら今後はどうすれば良いんだ?」
たまには自分で考えましょう。
「集会は地下活動に限定して下さい。素早くね。口コミだけ・小規模の活動に切り替えないと、必ず狙われます。」
ウンウン頷くハチローさん。アナタの長所は素直なところですよ。
「他になんかあるか?」
短所は何も考えないところです。
「以前コワシさんも言ってましたけど、この後国会規制同盟は、板垣退助に振り回されますよね。」
「そうだなあ。あれだけ言ってきかせたし、もう大丈夫とは思うんだけど。」
それは甘い。とんでもなく甘い。
維新の仲間と寄せ集めの浪人、どっちがより付き合いたい相手かと言えば、彼にとってどっちでしょう?
この後も板垣退助は、必ず政府側になびいてしまうだろう。権力を求めるのが政治家という生き物だ。
「だから『ダメもと』でハチローさんがなるべく組織固めをしてください。」
「『ダメもと』って言ったな。」
「土佐立志社がいつまでも主導権握っているから、愛国社系組織はダメなんだと思います。非土佐系が集まって、別勢力にするくらいで丁度いい。今そんな状況に近付いてるじゃないですか。」
ハチローさんはグイッと盃をあおる。
「熊本共同体主導で組織を作る、くらいの気持ちが必要って事だな。」
「その通りです。」
またウンウン。偉いねハチローくん。
「でもそれコワシ対策じゃねえぞ。」
「いえ、板垣退助を揺さぶってくるのは間違い無くコワシさんですから。」
十分これも対策のうちだ。
「最後に...コワシさんが山県卿封印を諦め、竹橋事件を起こさなくする可能性ですね。」
「そう来るかあ?アイツ相当山県を嫌がってたろ?」
「と言いますか、山県卿が軍組織に残す参謀本部の強化を嫌がってました。大久保卿が生き延び、山県卿の勢力拡大が無ければ、無理に封じ込める必要なしと判断する可能性はあります。」
もともと、将来戦争を起こさないための山県卿封じだからな。
「そうなると山県卿封じに協力してくれている、3人の将軍たちが潰される危険が出てきます。これは俺が対応します。」
「ガンバレよ。」
いちいちムッとくるし。
だがこの人がどれだけ頑張ってるかわかった今、俺は広い心で聞き流す。
「とにかくハチローさんは取締りに注意です。必ず規制が強化されるし、ワザと暴発が起こるように挑発される可能性もあります。今後も組織を抑える役目を、熊本派は担っていかないと。」
ここで情けない顔になるハチロー。
「俺たちゃあ武闘派なんだぜ。なんで押さえに回るんだ?」
また顔が曲がっちまうとブツブツ言うハチローさん。
いや説得で顔は曲がりませんふつう。
「今の勢いを保てれば、夏が来る前に勝負に出れるでしょう?もう少しの辛抱です。」
俺はハチローさんを励ました。
「ここで辛抱できないと、必ず負けますよ。コワシさんを甘く見ない方がいいです。」
ハチローさんは、目を覚ましたように顔つきを変えた。
「そうだな。あの歴史マニア野郎が相手だ。」
ハチローさんは更に盃をあおって言った。
「よし、このまま東京に入ろうと思ってたが、やっぱり大阪へ帰ろう。」
「それがいいかもしれません。」
「ああ、大阪は多少規制が緩いし、今や活動家のメインは大阪に集まっている。東京で新聞作る話を進めようと思ったが、今行けば『飛んで火に入る....』だ。コレは夏以降だな。」
ヤッパリこの人は飲み込みが早い。
「そーですね。コレから地下に潜った活動が増えますから、媒体で出来ることはかなり減るでしょう。」
「わかった。じゃあツヨシとは、今回ここでお別れだ。」
俺たちは盃で乾杯した。
俺は中味は干さないけどね。
「この後の連絡はどうやって取ろうか?」
「大阪の住所だけ教えておいて下さい。方法は後から考えましょう。」
改めて、ツヨシ-ハチロー協定の締結だ。
この後どれだけ勢力に厚みを作れるか、半年の動きにかかってくる。
歴史の知識では敵わないが、無知が武器になることもあるんじゃないか?
俺はあの人の余裕を思い出す。まだ何か隠し玉があるのだろうか。
国会を作らせない一手?そんなんありますか?
チョット考えてみなければ。
明日から日本へ帰って予定が詰まってます。
更新も若干滞る可能性があります。
ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。




