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転生者たち③

ふっ・・・・やはり3話じゃ無理だぜ(/ _ ; )

まだまだ続くぜ!コリャ思ったより大変だ!

ところで作中の紅葉館は実在の料亭ですが、この年にはまだ出来てません。

実際には4年後くらいに開業する事になりますが、お話と思って見逃して下さい。

開け放たれた部屋の中は爽やかな秋の風が吹き込み、肌寒さは感じない。

庭と自然と月を楽しむために作られた、簡素だけれど贅沢な一室で、俺達の作戦会議は続けられた。


「私たちの中で、確実に昭和まで生き残るのはツヨシくんですよね。私は史実では50歳前後で鬼籍に入ります。もちろん健康には注意しますけど。」


「命は大事にね。」

戦場を逃げ出したハチローさんは笑う。


「生き残っても暗殺されるのはイヤですよね。」

俺は自分の命に関しては、どうしてもネガティブに考えてしまう。


「ともあれ、当面最大の目標は太平洋戦争を起こさない事、ですかね?」

おや、と俺は不思議に思う。他の多くの戦争についてはどうなんだろう?


「でもコワシさん、日清戦争とか日露戦争とか、第1次大戦とかは考えなくていいんですか?」


「勿論考えます。でも慎重にいきましょう。」

コワシさんは厳しい表情でそう言った。


「国内・国際関係を全て考え、一つの戦争を阻止する事が、別の侵略を生み出すような事態は避けなければなりません。戦争を憎む気持ちはどの戦争に対しても同じですが、最大の目標は太平洋戦争です。そこを中心に、何を潰していくべきなのか一つ一つ逆算して考えましょう。」


「先ずコワシさんの考えを聞こうや。」

ハチローさんはノンビリと言った。大物ですよねあなた。


「よく言われるように、関東軍の暴走が日本を太平洋戦争へ突き進ませた一つの原因です。これには

①距離的に離れ過ぎてしまった関東軍を、日本の参謀本部がコントロール出来なかったこと

②統帥権の独立問題

③民衆が領土拡張策を支持していたこと

なんかが原因としてよく挙げられますね。」


歴史の授業のようだ。しかしそうなると......。

「関東軍の存在自体がヤバいって事ですか。」

俺が口を挟む。


「ヤバいですね。結局領土の拡張経営は、出費ばかりが嵩んで成果が乏しかったのです。オマケに軍事的に暴走して行くんだから、その他の場所はともかく満洲経営は手を出さない方が無難でしょう。」


ここでハチローさんも口を出す。

「という事はだよ、日露戦争ってかなり無駄だったんじゃないの?」


「まあ確かにそういう見方もあります。満韓交換って言う交渉もロシアとは進行していたし、当時陸軍であまりに多くの被害者を出した事が、『同胞の血で贖いし満洲』って言う執念のようなものを陸軍に植え付けちゃったとも言いますね」


「ロシア革命があるから、ロシアはほっといても滅んだって言う話もあるでしょ。」

「そんな話もありますね。でも日露戦争の敗北がなければ、ソビエトは出現しないかもしれませんよ。」


「そんなことありえる〜?」

ハチローさんは疑わしげだ。俺もちょっとそれは考えられないと思うが。


「とにかく満洲経営には手を出さない。って事は日露戦争も極力避ける。この線はアリだな。」

ハチローさんが賛意を示す。


「俺も異論ありません。でもさっきの2番目にあった統帥権問題って、ほっておけば別の形でまた出てくるんじゃないですか?」


俺が言うと、ニヤリとしたコワシさんが俺に告げる。

「これって実はツヨシくんが関わってます。っていうか君のせい。」

「俺のせい?!」


「あーあ、ツヨシ責任取れ。」

「いや、意味わかんないし!どーゆー事ですかそれは!」


笑う2人を怒鳴りつける。何なんだよそれは!


「実は昭和に入ってから、ロンドン海軍軍縮条約って言う国際条約が結ばれるんですけど、その時に統帥権干犯っていう問題を国会で追及し、浜口雄幸を追い詰めるのがツヨシくんなんです。」


「へ.......?」

「やっぱりツヨシのせいじゃん。」


そういう事っすか。いやまだ分かりませんよ!


「それって結局何が問題なんです?今の話だけじゃよくわかんないっす。」

「俺も勿論わからないぜ!」

ハチローさんは黙っててください。


「すっごく簡単に言いますよ?明治憲法下では、軍の統帥権つまり指揮権は天皇にあって、大臣はその補佐をしないと()()()決まっていたんです。陸軍大臣・海軍大臣は軍政、つまり編成上の権限しかありませんでした。指揮権は事実上参謀本部が握ってたんです。」


ほうほうそーですか。

既に理解がアヤシイところまで来てますが。


「ロンドン海軍軍縮条約では、軍令部が日本の海軍縮小幅を、対欧米7割に止めると決めていたのに対し、濱口内閣がそれ以下で決めてしまった。軍編成に関わることだから、問題ないように見えますね?ところがそれは軍令部の決定を覆す『統帥権への侵害だ』と政友会のキミが追及しちゃうんです。」


ワタシガデスカ?

今聞いた話だと、それはチョット無理筋だと思いマス。


「そうやって統帥権の範囲が広がってしまい、参謀本部は権限が拡大していくんですよ。」


「責任とれよツヨシ。」

「ハチローさんはちょっと黙っててください。」


議会ってこんな時代でも、足引っ張るためなら何だって言っちゃってたのね。

まあ俺が言ったワケだけど。なんかこの先が想いやられるわー。


「でも今の話だと明治憲法作成時に、コワシさんが条文なんとかしておけば済む話じゃないですか?」


「おお、そうじゃん!ツヨシ渾身の反撃!」

「あははー分かっちゃいました?でもそんな簡単じゃないんですよ。」

コワシさんはごまかすように乾いた笑いで逃げる。


「イヤイヤ逃げないでください!それさえ出来ていれば軍の暴走を抑えれるんでしょ?」

ここで逃すか!ちゃんと仕事して!


「勿論精一杯規制をかけるつもりです。そうは言っても薩長閥の偉人たちが相手だと、1人でできる事は限られてしまう。だから逃げの手で運用上の管理に任せちゃう事も多いんです。それに憲法って、細かい部分を詰め過ぎちゃうのも良くないものだし。」


ジトっと見つめる俺たちの視線に、コワシさんはこう言い切った。


「でもね、2人が手を貸してくれれば、かなりの制御が出来るようになります。議会が軍を押さえる事だって夢じゃない。その議会は()()()()()()()でコントロールできる。運用っていう搦手で藩閥と軍を縛り付ける必要があるんですよ。」


コワシさんはグッと拳を握る。

この人は今も一人で戦っている。藩閥と、軍と、元老たちと。

「俺もこの先、揚げ足を取られるような発言には、注意していかなければって事ですね。」


「そうだぞ。」

「ハチローさんは黙っててください!」


「話を戻すけど、関東軍の存在発生を食い止める。その為に日露戦争の開戦を防ぎ、ロシアとの関係性を重視する、となると続いて考えなきゃいけないのが朝鮮の問題です。」


「それなら俺も分かるぞ!朝鮮半島を争って、ロシアとも清とも戦争することになるんだよね!」

「ここでまた重要なのが、ツヨシくんです。」

「マタですか!今度は何でマズかったんですか!。」


何か俺が日本の舵取りを誤らせたような気分になってくる。

もう勘弁して下さい。


「いや悪くない。そうじゃなくって、君の師匠の福沢先生は、朝鮮の反政府勢力と懇意なんです。」


そーなの?!先生スゴイ。


「だけど彼らの決起計画って、失礼ながら穴だらけで雑なんです。コレを使えるものにして、親日本の政府が朝鮮で生まれれば、ややこしい問題がかなり防げる筈ですね。」


「いやそれはハードル高すぎじゃない?史実の日本もかなり頑張っだけど、結局朝鮮の方が日本を頼りにせず、失敗に終わってるっしょ?」

マタマタ懐疑的なハチローさん。


「でもそれについては考えてみます。どうせ俺は先生の秘書やってるから、遅かれ早かれ会うことになるんでしょ?」

「是非お願いします。ここで成功すれば、我々も大きく前進できます。」


「でもコワシさん、そこまで戦争を避けるにしても、軍備拡張はやらなければならないでしょう?」

「そこは勿論その通りです。」

コワシさんはキッと力を込めて言う。


「防衛力なくして対等な国際関係は結べません。平和主義者とは武装しない人のことを指すのではない。武力を持ちつつ交渉で物事を解決する姿勢こそ大事なんです。」


「日清戦争は避けようがないのかな?」

ハチローさんはもう一つの戦争を取り上げる。


「それに関してはとても難しいですね。現実に既に台湾出兵がありましたが、清国内ではこの時の消極的な交渉が、大いに問題となったようです。この後朝鮮では強気に出てくるのは間違いありません。」


ここでコワシさんはカツンとコップを置いて言った。

「直近問題になるのは、壬午軍乱への対応です。史実では1882年に勃発します。あと5年足らずですよ。」


「朝鮮の軍事事変ですね?」

「その通り。日本軍もかなり関わった問題です。私も今後軍との関係を増やして、コレに対応しようと思っているのですが・・・・。とりあえずツヨシくんに朝鮮改革派との接触からお願いしていきましょう。」


「その軍乱で清が関わってくるってこと?」

ハチローさんは念を押すように尋ねる。


「そう、この対応の不味さから、日本は朝鮮半島で劣勢に立たされるんです。」

「いっそ朝鮮半島は全部清に任せちゃっていいんじゃないの?」


「それは十分検討すべきです。でも清に任せれば、今度はロシアと清の争いになる。日本近海も安全とは言えなくなりますね。」


「結局はロシアの総取りになりそう、あんまりいい考えじゃ無いんじゃない?ハチローさん?」

「うーん、そうかねえ?朝鮮の経営だって、全然成功してないだろ?どうしても必要とは思えないよな。」


ハチローさんの意見も一理ある。


「朝鮮自身が自立できるよう、先ずは福沢先生と一緒に考えます。」

俺の言葉にコワシさんは頷く。


「そうですね。それがうまくいけば、福沢先生自身も大きな転換ができるでしょう。有名な『脱亜論』も生まれないかもしれません。」

いろんな変化が生まれる、かも知れない。


「さっきコワシさん言ってた軍関係者ですけど、俺今回の西南戦争取材で何人か知り合いできましたよ。」


「ああ、そうですよね!なるほど!それは有望だ。で、なんていう方と?」

「ええと、熊本鎮台の谷少将。それから第3旅団司令の三浦少将。あと仲良かったのは、児玉少佐っていう将校さんです。」


少しの沈黙があり、コワシさんの絶叫が紅葉山に響いた。


「何でそれを先に言わないんですかあああ!」




作中に出てくる宮崎八郎の登場する小説は、翔◯が◯くでした!

修正してお詫び申し上げます。m(_ _)m

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