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盛り上がりなんだって

私の住む地域では、レストランの利用が解禁となりました。


まー長い自粛期間だった(-_-;)


知り合いの経営者は、あとひと月続けば破産すると嘆いていたところでした。


この後久々に表で食事してきます♪


今回は宮崎八郎視点です。

明治13年(1880年)4月12日


在阪の執行部メンバーが集まっての会議。


ここのところ福島に戻って対策に追われていたヒロやん、東京で何やら慶應の集まりに行っていたマサアキも戻っている。

地方の支部長クラスは不在にしているが、馬場辰猪や大石正巳は在阪だ。


「お帰りヒロやん、福島はもういいのか?」

オレは憔悴しきっているヒロやんへ少々ねぎらいの言葉をかける。

福島で起きた大量造反は腹立たしいが、コイツばかりの責任とも言えないだろ。カツどんの言う通り、ツヨシにまんまとやられちまった訳だから。


「ああ、長く不在にして申し訳なかった。今は愛沢が頑張ってくれてるから。」

やっぱり元気はない。責任感じてんだろうな。

福島事件でも腹心だった愛沢寧堅が、今は福島支部長として火消しに奔走している。


「謝る事が少し違やあせんかの?」

大石は治まりきらない感情を隠そうとしない。

デカい顔が迫力満点の大石正巳。バンカラな壮士スタイルがメチャ似合っている。


「福島で起きた大量造反は、誰がどう責任取るっちゅうの!問題はそこじゃろう!」

「大石さんの言われるのはもっともじゃ。」

同じ土佐出身の馬場も賛同する。

見た目は細面の総髪優男だが、愛国社系の男達ってのはどうも血の気が多くて困る。


俺も人のコタあ言えた義理じゃないが。


福島の愛沢も東北人らしからぬ熱血派だし、同じようなヤツらが集まっちゃうって事か。

改進党は理論派が集まった感があるし。


どうせこんな奴らの集まりだ。ここは1つ理屈を超えて収めるしかねえ。


「大石!馬場!テメエらツマンネエこと言ってんじゃねえ!」


先ずは声で負けるな!やっぱこれだな。黙った。


オレが一緒になってヒロやんを攻撃するもんだと思ってやがったな?


「よーく考えろ。確かに利益誘導の政治圧力で会津の連中は流れちまった。ほかの東北勢も劣勢だ。」

「だから責任取れっちゆうのよ!」

「宮崎さん!アンタがこういう時にしっかりせんと!」


オレがしっかり仲間割れ扇動しろって?土佐者はほんっと仲間割れが好きだな!


「そうじゃねえ!ここで起きたことは他でも起こる可能性があるって事だ。物事の本質を見るんだ。」

オレはきっぱり言い切る。


どーだ責任論を超える屁理屈ってのはこういうもんだ。


「ほかの場所で同じことが起きたら、また誰ぞに責任を取らせんのか?しまいにゃ執行部が誰もいなくなるぞ?」


2人はとりあえず黙りこんだ。まあ屁理屈だから納得はしないだろうな。


「この経験を基に改進党への対策を立てるんだ。今回の危機を糧にしなけりゃあ、国会設立まで自由党はもたねえぞ。」


マサアキとカツどんががうんうん頷いている。


「くっ、そんな屁理屈並べたところで....じゃあ具体的に何の対策立てるっちゅうのよ?」


大石は引き下がらない。


「大石よ、お前さんは見た目の通り不屈の男だ。しかしもっと違う場面でその精神は発揮しろや。」


オレの言葉に実直な馬場もヒロやんも思わず吹き出す。

場が少し和んだ。


「大石、馬場、オマエらの言う通り、今度の造反騒ぎは私の不始末だ。この通り、幾重にも詫びる。」


河野広中が頭を下げる。騒いでいた2人の頭が冷えていく様が見て取れた。

よしよし、党首ともなればこんぐらいの芝居はできなきゃな。


「大体さ、造反造反と言うがよ、これあ詰まるところ金持ち旦那連中が、もっと金儲けしたいがための浅ましい行為だろ?民権運動の旗印たるオレ達が、こんな事を許しちゃあおけまい?」


オレが珍しく道理を口にするので、カツどんが驚いて口を開けている。覚えとけよテメエ。


「俺たちの支持者は生活に困る底辺の人々だ。改進党の浅ましい戦略のお陰で、貧乏人の味方は俺たちだけだったことがハッキリしたんだ。むしろコレあ歓迎すべき事なんじゃねえか?」


なるほどなるほどと馬場が頷く。大石もすっかり大人しくなった。


「それでも宮崎さん、貧乏人は恐らく選挙権がもらえんちゃ。どんだけ人気モンになっても、選挙で勝てにゃあ議員にゃなれんぜよ。」

大石はもっともな事を言う。


「それでもオレたちゃあ貧乏人を見捨てねえ。そうだろ?」

オレの言葉に馬場は頷いて賛同する。

「2つの党がハッキリとその旗幟を鮮明にしたという事です。これで戦いやすうなった。宮崎さんの言われる事は正しい。」


「改進党を『金持ち政党』と攻撃するのはたやすいな。」

ヒロやんが理解を示した。そーいうこったよ。


「大石の不安も最もだが、旦那連中にも道理のわかる奴はいる。使用人たちの人気取りをしたいヤツらもいるだろう。オレたちゃあこの線で戦っていくしかない。」


部屋の全員が大きく頷いた。やれやれ、オレの仕事はこれで終わりだ。

あとは任せたぞマサアキ。


その後はマサアキが音頭を取って、改進党への対抗策を皆から募る。

しかしどれもパッとしねえ。


私擬憲法の提案だとか、改進党の金権ぶりを新聞記事にするとか。

まあそんなところで地味にやっていくしかねえか。オレはすっかり興味なくなったけど。


<<<<<<<<<<<<<<<


夕方まで皆であーでもねえこーでもねえをやって、すっかり疲れちまった俺たちは茶屋に繰り出した。

昔は金欠でピーピー言ってたオレ達も、今や大阪自由日報は発行部数日本一。


たまにはキレイどころを呼んだりすることも出来ちゃう。


まあ褒められた事じゃないが、バンカラ壮士には似合いの息抜きだろ。


すっかり暖かくなった夜の空気に誘われ、南地は結構な人出だった。

なじみの『芳柳亭』の座敷に入ると、何だか見たことのない若者が畏まっている。


「何だコイツは?」

頭を上げない若者を見て、ヒロやんも訝しそうにしている。


「彼は川上音吉っていってね。今回東京で福沢先生にお会いしたとき、いい若者だから預かってくれと言われてさ。」

マサアキは何でもない事のようにサラッと言った。


「かっ、川上!おときちでございます!何卒よろしゅう!おねがいいたします!」


なんだか随分と緊張していやがる。

「自由党で働きてえのか?」

オレが尋ねると何度も頭を畳に擦りつけた。


「へい!へい!福島義挙の皆様のご活躍を...ご活躍ぶりを新聞で読みやして!かっ、感動いたしましてございます!」


おかしなヤツが来ちまった。ヒロやんも半笑いだ。


「ずっとこんな調子でね。仕方ないから宮崎の付き人にでもしようかと思って。」


「み、宮崎八郎先生の付き人!アッシゃあ頑張らせていただきやす!」


勝手に決めんなよ。


だがミンナおーそりゃいいそりゃいいと決めちまった。

茶屋で遊ぶのに付き人もねえもんだ。男なんか側にいたってうっとおしいだけだろ。


「ああ、分かった分かった。とりあえず今は邪魔すんな。その辺に控えてろや。」

オレは座敷の後ろを指さす。

音吉はへい!と嬉しそうに叫んで、言われた通りのところにちょこんと座った。


その様子に皆面白がって、芸妓そっちのけで話を振る。

オイ音吉、オメエ生まれはどこだい?とか今年いくつになんだい?とか。


音吉もリラックスしたのかペラペラと良く喋る。

「へえ、11の歳に家出しまして、吉原で呼び込み、幇間、何でもやっておりやした!」


何とも、見た目よりよっぽど苦労してやがる。

ソンだけ苦労してこれほど明るいってのは、根がまっすぐな奴なんだろう。


「面白いやつだ。なんぞ流行り唄でもできるのかい?」

ヒロやんがいうのを嬉しそうに受けて、音吉は弾むように答える。


「へい!アッシゃあ面白れえ政治小唄が得意でして。皆様から大評判を頂戴しておりやした。」


おもしれえ、やってみせろと大石もカツどんも興に乗ってくる。


あっという間に芸妓の三味線を借り受けると、音吉はすっかり中心に座って芸人ぶりを見せつける。


「お言葉に甘えまして、拙い小唄でございますが...。」


テンツクテン♪テンツクテンとやりだした。

皆大喜びで手拍子を始める。


「エ~米価(べいか)騰貴(とうき)の今日に♪細民(さいみん)困窮みかえらず、目深にかぶった高帽子、金の指輪に金時計♪権門(けんもん)貴顕(きけん)にヒザを曲げ、芸者幇間(たいこ)に金を撒き、ウチには米を倉に積み♪......。」


始まったその唄に皆ちょっとばかり驚いた。

楽しい。こりゃあイイ!芸妓までノリノリで手拍子だ。


いや待てよ、コイツは確か....。


「地獄で閻魔に面会し♪ワイロ遣うて極楽へ♪ア、行けるかえ?いけねえよ!オッペケペ、オッペケペッポーペッポッポオオイ!」


コレだあああ!これだよ!!!


「マサアキでかした!コイツはひろいモンだあ!!」


みな驚いてオレの顔を見ている。


大石も馬場もイカツイ面で口を開け、茫然と俺を見る。


芸妓も手拍子の姿勢のまま、固まって白い顔をこっちに向けている。


「これをやるぞ!自由党の看板になる!!」


音吉も小唄をやめて唖然としている。


オレはただ1人茶屋の座敷に突っ立って、まだ見ぬ勝利を確信していた。


川上音二郎のおっぺけペー節、12年ほど早まって登場です。


少々無理がありますが(´∀`)


慶應で勉強していた、自由党に入党した、は史実通りです。


1時は玄洋社に入っていたこともあり、イロイロ繋がってんなーと思う筆者です。

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