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記者兼秘書、そしてパシリ

いつもありがとうございますm(_ _)m

明日の更新は、体調とリアルがやや忙しい関係で、1回お休みさせていただきます。

明後日また更新いたします。すいません!

超有名偉人、福沢諭吉先生にご対面。開口一番怒鳴りつけられる。


「この命知らずの大馬鹿野郎が!!」


お怒りの原因は......まあ戦場記者になった事だろうが、それによって休学した事が気に入らないのか、それとも戦場に行った事自体がダメなのか?


福沢先生はおこ状態でジッと俺を睨んでいる。

11万円の人だ!と言いたい。でも言える雰囲気じゃない。

俺が身をすくめ黙り込んでいると、やがて先生は背もたれにドサッと身体を預け、俺に向けていた怒気を解いた。


「戦場はどうだった?」

「は?」

「休学してまで戦場へ行ったのだ。得るものはあったんだろう?」


はい学費をゲット......って言ったら退学させられんだろうな。

俺はその辺抜かりはない。何しろ戦場記者のプロなのだ。


「はい。同じ日本人が殺しあう内戦、悲惨これにまさるモノはありませんでした。九州には東京の文明開化の雰囲気は全く感じられず、日本国が今抱える二面性が顕著に現れた光景でした。」


ふむ、と先生は頷く。最初の関門はくぐれたようだ。

おお...緊張が解れて失禁してしまいそう。


「その通りだ。都会と田舎、市民と元武士、新政府と旧諸藩。あらゆる二面性が日本を分断した結果、西南戦争が起きてしまった。他には何か?」


「はい、陸軍の幹部と地元住民に、薩軍への同情を感じました。鎮圧までこれほど時間がかかったのは、この二者がサボタージュを働いたのが原因です。政府が改革を進めて行く上で、この二者は今後とも障害として残るでしょう。」


先生は今度は返事をせず、ジッと俺を見続けている。眼力(めぢから)がコワいんですが。

やがて小さくため息をつき、ボソリと呟いた。


「廃藩置県、地租改正、廃刀令、徴兵制度、これらが全てその二者に向けられたモノだ。そりゃあそうもなるさ。維新はまだまだ終わりじゃねえ。」


そう言って先生は窓の外を見る。俺も釣られてそちらに目をやる余裕が生まれた。

芝浦の海が目に入る。ここの景色は美しい。


「犬養、お前しばらく俺の側で仕事しろ。」


え?ナンスカ。


「俺は仕事柄、いろんな奴と会わなきゃならん。それは俺が選べるもんでもない。向こうが勝手にやってくるんだ。」


そらそうですね。


「中には何してるかも知らん奴、俺が全く知りもせん仕事をしている奴、そんな手合いも多い。アチラは福沢なら知らぬことなど無いと思いこんでいやがる。」


「私は先生のお調べごとを代行するので。」

「察しが早くて何よりだ。長い文章にするな、どうせ頭に入らん。」


福沢諭吉の秘書的なモノか......。これって結構凄いことなんじゃあ?先生おこじゃなかったの?

先生の来客対応ともなれば、天下の名士と知り合う機会となる。


貴重な勉強の機会ともなるだろう。そっか、俺ってきっとその辺りから政治家になる機会を掴むんだな。


「分かったか?」

「はい!分かりました!」

「具体的な仕事はその都度俺が頼む。いつまでに何を、ってようにな。」

「はい!」

「それ以外の時は、自分の勉強を続けろ。」

「はい!」

「この後早速来客がある。ちょっと酒屋に行って、ビール買ってきてくれ。」

「......ハイ。」


まさかのパシリ込みでした。


「早速先生のお使いか?ご苦労さん。」


矢野さんは薄めのヘッドをカキカキ、柔かな笑顔で労ってくれた。

「それでも先生の側で働けることは、大いに勉強になるよ。ここの学生なら、誰もがやりたがる仕事だ。」


そうですよね。なんで俺がそんな人気職をゲットできたんすか?


「ここだけの話、先生お前の連載記事を読んで、いつも感心しておられたんだ。こいつが帰ってきたら、新聞社作って任せるかとまでおっしゃっていた。」


「そんな......本当ですかあ?」


先生はそんなに単純な人では無いと思うが、俺の記事が気に入ってくれていたのは本当らしい。

じゃあ何で怒鳴られたんすかね?ツンデレですか?

まあ大いに頑張んなさい、と矢野さんは言ってくれた。


その後、綾さんを家に送って行く矢野さんは、彼女に俺と喋る機会を与えないよう慌ただしく出て行った。

犬養さま、また......という綾さんの可憐な声が、玄関に余韻を残している。


お兄さんって呼んでいいっすか?矢野さん?

そう言えば郵便報知にも案内してもらおうと思ってたんだが、明日以降にするしか無いな。


取り急ぎ奥様に代金をいただき、酒屋にビールを買いに行く。


「貴方が犬養さんね?まあ、思ったよりずっとお若いのね!」


そうですか?フケ面だと思いますけど?


「先生は貴方の記事を大層お気に召してたから。きっと長い時間お話ししたくて側に置くことにしたのね。」

「そんな事はおっしゃられておりませんでしたが?」

「あら、照れくさいだけよ!頑張って頂戴ね!」


やはりツンデレでしたか。


近所の酒屋に行きました。ビール重い......。

帰って報告すると、今日はもう用はないから部屋に戻れというお話し。


オウ俺の部屋!矢野さんに聞き忘れた!


しかし愕然としていると、続けて奥様が言った。


「犬養さんは先生のお仕事がありますから、お部屋を母屋に移していただくことになります。今から学生さん達と、お引越しして頂戴。」


おおそうなんですね!それならみんなについて行けば、部屋にたどり着けますね?


俺の期待通り、若い学生達がゾロゾロやってきて、いぬかいさーんやっとお帰りですか?とか記事読んでましたよーとか言ってきてくれる。5名ほどに手伝ってもらい、お部屋には無事たどり着けました。

引っ越しも滞りなく進行。みんなにお礼として、蕎麦でも食ってこいと駄賃を渡す。


「そうそう犬養さん、これご不在の間の文やら何やらです。」


出たよソーロー文!物凄い厚みだぜ!これに目を通して返事出すの?

一晩じゃあ終わんねえな。


荷物片付けてから取り掛かるか。

そう思いながら一通り差出人に目を通すと、ふと名前の書いてない手紙に目が止まった。



何だこれ?

しかも宛名の文字が何となく.....この時代の筆跡と思えない。丸っこいよ!


筆書きのマル文字、新しい。


イヤそうじゃねえよ!!マル文字書いてるってことは、こいつも俺と同じ時代から来た人?


慌てて封を開こうとして、ふと手を止める。

誰が何故、どうやってこんなモノを出してきたんだ?


可能性として俺と同じ転生者が、俺の前世とかなり近い時代から明治に転生したのはあり得る。

だが.....俺が転生者だとなぜ分かった?

これ危ない話なんじゃないの?


可能性① こいつは同じ転生者。しかも何らかの方法で、誰がいつ転生してくるか分かる。


可能性② こいつは転生の原因となった何者か。自分が原因だから当然俺が転生者と知っている。


可能性③ 何も関係ない、ただマル文字みたいに書いちゃって、名前書き忘れた人。


いや一人ツッコミも何だが、③はないだろ。絶対ありえん。


他にもいくつか考えられるけど、中見てみれば分かる話だ。


再びいそいそと手紙の封を開ける。

そこにはマル文字でない普通の楷書で、口語の文章が書かれていた。


“初めまして、訳あって名前は名乗りませんが、私がどのような背景を持っているのか、この文章を読めば貴方にはおわかりのことと思います。


私はこの時代に生を受け三十余年、ひたすらに自己研鑽に励み、日本の将来を輝かしいものに改変しようと努力を続けて参りました。

しかし一人で出来ることなどたかが知れており、常々行き詰まりを感じておりました。


ところが最近になってひょんな事から、もう一人私と同じ境遇の方を見つけたのです。


私たちは肩を抱き合って喜びました。

我々の喜びがいかに大きかったか、貴方にはお分かりになるでしょう。


この経験から同じ境遇の人が存在することが分かり、我々二人は更に仲間を増やすべく調査を始めたのです。

その結果、貴方に可能性があると感じました。


詳しくはお会いしてお話しさせていただきます。


もしこの文が何をお伝えしているかご理解いただけましたら、新暦10月末日の夜6時、芝増上寺傍の紅葉山にある、『紅葉館』までお越し下さい。


合言葉を決めさせていただきます。

この場所は戦後有名な電波塔が建てられた場所です。当日はその名前を入り口でお伝えください。

東京〇〇〇です。

お会いできる日を心待ちにしております。“


①だと結論づけるのはまだ早いか?

何かの罠で、これが世界征服を企む②である様な可能性は.....。

イヤ、やめとくか。とにかく同じ境遇にある人がいたんだっていう、ポジティブな話だ。

まだ時間はある。ジックリ考えよう。


しかしベタなクイズまがいの合言葉。

東京バナナ?

いや冗談だよジョウダン。





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