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第三十二話 続・古代遺跡無双

 第四十二区画で始まった瘴気感知の訓練は、現在地の第四十八区画で一応の終わりを見た。

 もしかして瘴気って無限なのでは? という懸念は、最初の一区画目で払拭された。


 ドッカンドッカン広範囲攻撃を使っていた悪魔も、三十分もすると何もできなくなったのだ。

 そこで、俺は悪魔を片付けて次の区画に移動し、また『空間障壁』に籠もって観察する……ということを、ここまで続けていたというわけ。


 同じ能力を持った者は続けては現れない状況であるため、いちいち違う能力を相手に確認する作業は、かなりの難行だったが――その甲斐あって、朧気ながら瘴気の動きを感じられるようになったのだ。


【名前:ソーラ 種族:人族 レベル:97

 所持スキル:魔力操作10 魔力感知10 七属性魔法10 空間属性魔法10 魔力増大10 魔力回復10 回復魔法10 調合10 木工10 投擲10 弓術8 皮加工9 気配察知10 隠身10 剣術10 体術10 金属加工4 刀術7 時間属性魔法2 瘴気感知1

 転生特典:万事習得】


 ご覧の通り、スキルにもそれが現れた。

 いやー、なかなか大変だったよ……。

 深層をメインに活動している冒険者パーティには、もしかしたら『瘴気感知』スキルを持った人がいるのかもしれないなあ、と思ったりもした。


「……とりあえず、帰るか!」


 今日はもう疲れたよ。

 ということで、コソッと『転移』で遺跡から出たら、もう日が変わる寸前だった。


 適宜、休憩を取りながらではあったが、実に十六時間近くも潜っていたらしい。

 そりゃ疲れるわ。


 さっさと宿に戻って寝ようっと。

 もう、戦利品の精算は明日でいいよね……。



 翌日は昼まで寝て、昼食後また寝て、夕方に起きて夕食後また寝た。

 結局、スッキリ起きたのは翌々朝。


 精算は明日とは一体何だったのか、という状態だが、まあ、疲れを残したまま行動するよりは良いだろう。

 ということで、ゆっくりと朝食を味わってから冒険者ギルドへ向かった。


「すみません、解体場を借りたいんですけど」


 一昨日は『空間収納』に放り込むだけ放り込んで、まったく解体していなかったので、今日はまるまる解体デーだ。

 ついでに、どの悪魔の、どの部分が素材として買い取ってもらえるのかも聞いておきたい。


「承知しました、こちらへどうぞ」


 先日と同じ受付のお兄さんに案内され、解体場へと向かう。

 ギルドの裏手にあるそこは、深層になると大物が多い傾向にある悪魔に対応するためか、相当広い。


 軽く、サッカーグラウンド三面分くらいはあるかな?

 中では、そこここの解体台で大小様々な悪魔が解体されている。

 おそらくは解体の委託も受けているのだろう。


「この辺りでしたら、自由に使っていただいて構いません」

「解りました」


 人がいない辺りに案内され、職員さんは去っていった。

 さて、解体を始めるかー。



「おい、こいつはどこで狩ったんだ」


 一時間ほど黙々と小物を解体し続け、さてそろそろ大物を解体するかーと『空間収納』から次の悪魔を取り出すと、いきなり声をかけられた。


 顔をあげると、皺くちゃだけど体はムキムキな爺さんが立っている。


「これは、第四十三区画だったと思いますけど……それが何か?」


 俺が答えつつ「問題でもあるの?」と言外に問うと、爺さんはクワッと目を見開いて叫んだ。


「四十三!? 四十三と言ったのか!?」

「え、ええ。そうですけど」


 鼻がくっつく勢いで突っ込んでくる爺さんに面食らいながら、俺はイエスと答える。


「第四十二区画の悪魔は魔法使い型で、こいつは突破された記録がない! あれをどうやって倒した! いや、どうやって攻撃を防いだんだ!」


 いきなり、びっくりするほど早口になった爺さんに「それは秘密です」と答えた。

 だって、わざわざ自分の手札を晒す必要はないからね。


「……ああ、そうだな。スマン、第四十三区画は未到達の領域だったから、ついな……」

「えっ、そうなんですか?」


 冒険者に飯のタネを聞く愚を思い出したか、急に冷静になった爺さんにそう言われ、今度は俺が驚くことになった。

 すると爺さんは「知らなかったの?」と言わんばかりの表情を浮かべたあと、ニヤリと笑う。


「なるほどな……さすがはノマイン男爵に認められ、王子と王女の友人にまでなっただけのことはある」

「……なあ、爺さん。感心したのは解るけど、あんまり人のことをべらべら喋るのは良くないと思うぞ」


 余計な情報を口にした爺さんに釘を差し、彼の後ろを指し示してみせる。

 さっきの叫び声で、爺さんの後ろには大量の野次馬が集まっていたのだ。


「あ?……スマン……」


 当然、野次馬どもは情報を得ようと耳をそばだてているわけで、そこに俺の個人情報をバラまかれれば、いい気はしない。

 まあ、半分くらいは、もう知ってる人もいる情報だけど。


「解ってくれたなら良いよ。それで、あんたは誰なの?」

「おお、自己紹介がまだだったな。ワシはここのギルドマスターでアーヴスという」


 俺の言葉に答え、アーヴスは話し始めた。

 最近、いろいろと情報を聞いていた人物が遺跡の街に来たということで、どんな人格で、どの程度の実力を持っているのか確認しようと思ったそうだ。


 ……なんで、俺の個人情報が共有されてるの?

 上級とはいえ、まだ登録半年も経ってないヒヨッコ……あー、逆か。

 短期間に上級になって、王族や貴族と懇意にしている子供となると、変な憶測が立っても不思議はない。


 特に、国の最高権力に近い場所にいるとなれば、ロクデナシなら確実に面倒事の種というか爆弾みたいなもんだ。

 その上、もし本人の武力も高ければ、もう近づきたくないレベルだろう。


 アーヴスの態度からすれば、まあ、人格面についての心配はさほどされていなかったようだが、確認は必要というわけだ。

 わかってみれば、なるほど納得。


「納得してもらえたようだな」

「ええ、よく解りました」


 一人頷いていると、アーヴスにも俺の思考の流れが伝わったようだ。


「おや、言葉遣いが戻ったな?」

「謝罪も貰いましたし、認識の齟齬を正すきっかけも貰いましたからね。立場はわきまえないと」


 一転してからかうような口調になった爺さんに、俺は淡々と返す。

 気分が悪かったのは確かだが、謝罪されて許さないのも大人げない。


 まあ、話もまとまったし、さくさく解体しましょうかね。



 あの後、第四十二区画以降の悪魔を出す度にアーヴスに大騒ぎされながら解体をこなし、大物だけは全て片付け終えた俺は、爺さんとともにギルドマスター室に移動した。


 というのも、素材として使えるかどうかはアーヴスが四十年以上の現場経験から判断してくれたのだが、その価値・価格となると、今の段階では決めようがない。


 そのため、しっかりとした預かり書類を作っておくのだ。

 適正価格、あるいは競売などで得られた額がちゃんと俺に支払われるように準備しておくということだね。


 ちなみに、第四十二区画の悪魔は『デーモンメイジ』と呼ばれている。

 それ以降、第四十三区画が、触れた者の魔力を奪う能力を持つ黒いゾンビ『ソウルスティーラー』。


 第四十四区画が、黒い竜巻を起こすサソリと悪魔の合成獣『ストームブリンガー』。

 第四十五区画が、闇を操り、攻撃と移動に用いる無貌の悪魔『シャドウウォーカー』。


 第四十六区画が、騎士のような出で立ちで、剣と闇を操る『ダークナイト』。

 第四十七区画が、巨大な黒い天使『ブラックエンジェル』。


 そして第四十八区画が、黒い巨人『デーモンジャイアント』と名付けられた。


 一部の能力しか判っていないのは、相手が特殊攻撃を使いまくってガス欠になるまで『空間結界』の中で観察していたからだ。

 少々、申し訳ない気分にならないでもないが……相手は、こちらを全力で殺しに来ているのだから、気にするだけ無駄だよね。


「よし、これで書類の作成は完了だ」


 俺のサインを確認し、ギルドマスター・アーヴスがそう言う。


「これからも、ドンドン狩ってきてくれよ」

「はは……まあ、俺のペースで良ければ」


 期待の言葉に、微妙にずらした答えを返しながら、俺は苦笑いした。

 まあ、自身の力を高める修行も行いつつ、それなりに無双していくとしよう。


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