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第二話 畑無双

本日二話目です。

 あっさり三年の月日が流れ、俺は三歳になった。

 もちろん、この間なにもしなかったわけもなく、様々なことに手を出している。


 まずは安全な魔法。

 これは言葉が話せるようになった途端、母に頼み込んで教えてもらうことになった。


 それからまじない師の婆さまの所に行って、薬の調合を見学している。

 まじない師というのは、魔法が使える薬師といった感じの人を指す言葉で、婆さまはこの村で唯一のまじない師だ。


 その婆さまの作業を見学するということは、どこでどういう素材をどう処理して魔力をどこで使うか――という作業の手順を覚えられるということでもある。


 ごく簡単な調合であれば、自前で用意した薬研と薬草類でできるようになっているのだ。

 まあ、火は使わせてもらえないので、せいぜい塗り薬くらいだが。


 ということで、三歳の俺のステータスはこうなった。


【名前:ソーラ 種族:人族 レベル:1

 所持スキル:魔力操作10 魔力感知5 無属性魔法5 地属性魔法3 水属性魔法3 火属性魔法1 風属性魔法2 光属性魔法5 魔力増大5 魔力回復10 回復魔法1 調合1

 転生特典:万事習得】


 随分スキルが増えたよ!

 まあ、村の外に出ることもないから、魔物と遭うこともないからレベルは上がってないけど。


 とはいえ、三歳児でこれは中々のものではないだろうか?

 魔法に関連するスキルも、あといくつか覚えたら網羅できる気がする。


 ちなみに魔法で一番たいへんだったのは『回復魔法』だ。

 普通なら光とか聖とかの属性に含まれていそうなものだが、この世界では違っていたようだ。


 というのも、光属性はそのまま光を発生させる属性なので、一般的には光源としてしか使っていない。

 これは単純に光を光としか認識していないせいだと判明している。


 逆に言うと、知識さえあれば意図して様々な波長の光を出せるということでもあり、実際に俺は赤外線や紫外線を発生させることに成功した。


 赤外線は寒い日に暖を取れるし、紫外線はちょっとした殺菌に使える。

 まだ実験はできていないが、紫外線はアンデッドに効くかなーと期待していたり。


 話を戻して回復魔法だが、これは実のところ地水火風四属性の合成魔法だった。

 そもそもなぜ回復魔法がないのか? というところから探求が始まったのだが、意外なことに地水火風それぞれに『回復魔法のパーツ』とも言える効果を発揮する魔法があったことで答えにたどり着いた。


 地属性は肉体の損傷を補い、水属性は体液の不足を補い、火属性は体温を調整し、風属性は呼吸を助ける……というものだ。

 これらは低位の回復魔法と言っていいと思うが、村の人々にとって『回復魔法』は「教会の神官が使う神の奇跡」という認識で、普通の魔法使いに使えるようになるとは考えていないらしい。


 この辺は宗教が絡むため、おおっぴらに『回復魔法』を使うのはマズイと判断した。

 よっぽどのことがない限り、自分の怪我を治すくらいしか出来ないのは残念だが、まあ仕方がない。


 ちなみに、この世界には幾つも宗教があって、街ではともかく、小さな町村では、原始的な精霊信仰とでもいうべきものが根強く残っているらしい。


 精霊信仰における回復魔法は、効果自体は他の宗教と同じだが、神の奇跡とは考えられていない。

 どちらかというと自然の力を借りている、という意識だそうだ。


 魔法のことはさておき、三歳の俺の仕事だが……。


「ソーラ、水撒き頼む」

「はーい」


 父に指示され、畑に魔法で水を撒く俺。

 ということで水撒き、草引きなどの畑での軽作業がメイン――なのだが、俺の水属性と地属性が示す通り、畑を耕したり土に水分や栄養を含ませたりといった作業も行っている。


 さすがに土作りは経験が物を言うため俺一人ではできないので、父の指示通りに酸性・アルカリ性などの調整を行う。

 それとともに畝作りなどもした結果、雑草を排除しやすく作物の管理もしやすくなったため生産性が向上した。


 それと森から腐葉土を持ってきて使ってみた実験農場(狭い畑だけど)も一定の成果を上げているので、魔法を使えない人たちにも喜ばれている。


 また、まじない師の婆さまに分けてもらった傷薬用の薬草の繁殖にも成功したので、村の人達にも潤沢に行き渡るようになった。

 おかげで俺の株はうなぎのぼりだ。


 ちなみにまじない師の婆さまが使う薬草類は、森や山の中でしか育たないと考えられていた。

 というのも、これまで多くの人が試しては失敗していたからだ。


 そこで俺が考えたのは、「魔法みたいな回復効果を発揮するんだから魔力が必要なのでは?」ということ。

 実際、それは正解だった。


 とはいえ、こんな簡単な答えに先人がたどり着かないわけがないというのも道理で、婆さまも畑に植えた薬草に魔力を注いでみたりしたことがあるそうだ。


 で、なにが問題だったのか? ということになるわけだが……これは単純に「必要な量に全然足りていなかった」のだ。

 そんなことで先人全員が失敗するかー? と思うだろうが、本当にそうだったのだから仕方がない。


 ここで、その根本的な認識の齟齬が起きた理由を説明しよう。

 まず、人一人の魔力量からだが、これは平均的な大人の保有している量が、大体ソフトボールくらいの大きさに収まっている。


 俺が赤ちゃんの頃はピンポン玉くらいだったので、成長により多少は増えるのだろうが、普通に生きている限り、おおむねソフトボール大で止まってしまうようだ。


 それに気づいた俺は、なんとか魔力を増やせないものかと頭を捻った。

 その結果たどりついたのが、「外から魔力を吸収する」というもの。


 魔力はどこにでもあるし、吸っても吸っても減ったようには感じられない。

 ということで、二歳の頃から一年ほど全力で吸いまくったら……三歳になった俺の魔力量は、体感でなんと直径三メートルほどにまで増えていた。


 人体よりはるかに大きいサイズってなんだよ!? と思うかもしれないが、実際そう感じるのだから仕方がない。

 そして、この馬鹿げた魔力量こそが薬草を畑で育てることを可能としたのだ。


 つまり「畑で薬草を栽培するには、一般的な人族とは桁の違う魔力量が求められる」ということ。

 事実、俺が実験的に薬草を植えた範囲はせいぜい一メートル四方だったが、この範囲で必要とされる魔力でさえ十人分の量が必要だったのだからびっくりだ。


 この実験の副産物として、普通の植物でも魔力を与えると通常よりよく生育することも判明した。

 魔力便利すぎるだろ。


 三歳にして農作業に貢献しまくる。

 これもまた無双と言えるであろう。


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