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ひたすら無双するだけの異世界転生物語  作者: スガ シュンジ
第二章 ノマイン男爵領
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第十八話 魔石加工無双

 順調に王都への旅程を消化しゆく男爵家一行。

 もちろん、俺を始めとした冒険者たちも護衛としての本分を全うしている。


 特に街道が森の中を通っている領域では魔物襲撃も多く、六日ほどの間に昼夜合わせて七回も戦闘があった。

 とはいえ、特段、強い魔物が現れたわけでもないので、問題なく撃退している。


 俺以外の冒険者たちも中級パーティだから、任せて安心だ。

 そんな中で、俺は一つ考えていることがあった。

 ――それは魔石の加工だ。


 これまで様々な物を地属性魔法で作ってきた。

 食器類からテーブルセット、野営用の竈や簡易的な防壁、ちょっと変わったところでは野外用のバスルームまで。


 要するに、地属性の魔法には一家言ある俺なのだが、これまで魔石はどうやっても加工できていないのだ。

 ということで、今夜も焚き火を前に頭を捻っている。


「ソーラ様、何をしてらっしゃるの?」


 考え込む俺に声をかけてきたのは、アウラお嬢様。

 お嬢様は旅に出て以降、徐々に夜更かしさんになっているようで、俺が夜番の時には度々、こうして雑談をしに来るのだ。


「実は――」


 他者の意見を聞くのも良いだろう、と俺は魔石加工が上手く出来ないことを話した。

 するとアウラお嬢様は、あっさりと答えを出してくれた。


 どういうことかというと、「魔石は魔力の塊であって石ではない」ということだ。

 つまり、どんなに頑張っても地属性では駄目だったということである。


 そうなると後は簡単。

 魔力自体を操るなら無属性、そして『魔力操作』だ。


「まあ……!」


 ゴブリンの黄色いっぽい魔石、フォレストウルフの緑色っぽい魔石、この二つを使って黄色いユリの花を模した細工物を二輪一組の形で作ってみた。


 どうせなら実用品にしようということで、更に手持ちの銅で安全ピンを作り、ユリのブローチに仕立て上げる。

 うむ、我ながら中々いい出来だ。


 これなら、ちょっとした小物として売れるかもしれない。

 が、まあ、この魔石細工第一号は――。


「アウラお嬢様、これを貰っていただけますか?」

「え?」


 ブレイクスルーをもたらし、作った物に感嘆のため息さえ漏らしてくれたお嬢様に差し上げたい。


「……よろしいのですか?」

「ええ、お嬢様に貰っていただきたいのです」


 俺の申し出に少しためらっていたアウラお嬢様だったが、しばらくして受け取ってくれた。

 その表情はふわりとした笑顔だ。


「ありがとうございます……大事にします」


 喜んでもらえたようで良かった。



 それから毎夜、夜番の度に俺は魔石を加工し続けた。

 草花、動物はもとより、ユニコーンやドラゴンなどの魔物、そして魔法の属性をイメージした小物を作る。


 食器類も作ってみようかとも思ったのだが……綺麗なのは良いけど、魔物の魔力の塊だから口をつける物に使うのはどうかなあ……と思ったのでやめておいた。


 そんな日々を過ごしていると、当然ほかの者の目にも入るわけで、男爵、セリオ、それからセネカ嬢に「作って欲しい」と頼まれることになった。


 まあ、練習にやっていることだし、安い魔石しか使っていないから良いかーと請け負うことにし、リクエストを聞いて作業に入ったのだが……つい興が乗って高い魔石も使ってしまった。


 男爵に頼まれた物は、ブラッドベアの真紅の魔石で鬣が炎になっている獅子の横顔を作って、その瞳の部分にはレイジアントロープの鮮やかな黄色の魔石をはめ込む。


 セリオに頼まれた物は、キラービーの黄緑色の魔石で風をまとった馬の横顔を作り、瞳にはやはりレイジアントロープの魔石を使う。

 この二人の物はブローチだ。


 セネカ嬢に頼まれた物はバングル。

 これはリング部分はレイジアントロープの魔石、飾り部分はピンクっぽいアタックラビットの魔石で鳥の翼を模した。


 それから頼まれてはいないが、アウラお嬢様にも新たに一つ。

 アタックラビットの魔石でピンクの花弁のユリを。

 これは最初に渡した黄色いユリのブローチと組み合わせる事もできるようにと作った。


 いやー中々いい訓練になったよ。

 年をとって冒険者を引退したら、魔石細工職人として食っていけそうな気がしてきた程だ。


「おお! これは勇壮な!」

「かっこいいです!」

「素敵……」

「……ありがとうございます」


 完成したものを渡したところ、四人ともいたく喜んでくれたので作った甲斐があった。

 それと、なんとなくだが、この魔石細工はまだ先がありそうな気がしている。


 それが何なのかはまだ思いつかないが、いずれはそこにたどり着けると良いなあ。



 後日、男爵から追加の作成依頼が入った。

 どうやら、夜会用の衣装に合わせてカフスや飾りボタンが欲しいらしい。


 これは家族全員分をとのことで、男爵の物は金の土台に赤い魔石、セリオの物とアウラお嬢様の物は銀の土台に黄色の魔石を使った。

 ちなみに土台に使った金と銀は、金貨と銀貨を地属性魔法で変形させたものだ。


 結構な量を使ってしまったが、王都に到着次第、冒険者ギルドで指名依頼を出して報酬をくれるそうなので、まあ、気にすることはないだろう。


 それと指名依頼での貢献ポイントに関してだが、入門だと一ポイントなのが初級だと十、中級だと百になるそうだ。

 今回の場合は、ブローチ、カフス、飾りボタンの三種類で三人分だから合計で九百ポイントだという。


 俺は冒険者ランクの昇級がどういう意味を持つのか今ひとつ解っていなかったが、適正な依頼を受ければ一ランクごとに貢献ポイントが十倍になるってことだったんだなあ。


 まあ、上級以上の依頼なんてそんなに頻繁には出ないだろうけど。

 だって上級相当なら、すごく強い魔物を相手にする必要があるってことだもんね。


 そんな魔物がポコポコ現れたら、周辺が魔境になっちゃうよ。

 そういう地域もあるのかもしれないけど、人間の生活圏の近くには無いんじゃないかな。


 ともあれ、護衛依頼をきちんと遂行しつつも新たな技術を得た。

 これもまた無双と言えるだろう。

 今回は、アウラお嬢様に感謝だけどね。


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