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ひたすら無双するだけの異世界転生物語  作者: スガ シュンジ
第二章 ノマイン男爵領
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第十三話 初依頼無双

 結局、その後の話し合いで、俺はセリオの主治医及び男爵家の人々の魔法先生をすることになった。

 とはいえ、冒険者になった途端、ギルドを通さない依頼に従事するのもどうか……ということもあり、男爵からの指名依頼という形で冒険者としての初仕事も兼ねることに。


 現在の俺は入門冒険者だが、これは依頼をこなして貢献ポイントを貯めることで上がってゆく。

 入門→初級→中級→上級→超上級→特級、というのが昇級の流れだ。


 なお貢献ポイントは依頼の内容で異なるが、昇級するためには各ランクごとに百、千、一万、十万、百万という膨大なポイントを蓄積する必要がある。


 入門冒険者が請けられる依頼は薬草類の採取や弱い魔物の討伐、そしていわゆるお手伝いくらいだが、どれも一回につき一ポイントという安さなので、地道に努力しなければそう簡単には昇級できない。


 これに対して今回の指名依頼は、一人あたり一日一ポイント得られる。

 もし十人に魔法を教えたら一日十ポイントで、それを一月続ければなんと三百ポイント!


 まあ、実際には依頼主の満足度によって変化があるので、まるまるポイントを得られるというものでもないらしい。

 そこが指名依頼と普通の依頼との違いであり、大きく稼げる可能性があるというメリットに対するデメリットでもあるわけだ。


 ところでセリオが「魔法を習いたい」と言いだした理由だが、俺が喘息への対処法を説明する一幕を見たことで、「自分でもできるようになりたい」と思ったのだそうだ。


 幼いのに敏いというか、健気というか……。

 雰囲気的には、家族に迷惑をかけ続けるのが嫌だった、というのもあるのかもしれない。


 まあ、なんにせよ仕事を請ける事は決まったわけで、俺は相手に満足してもらえるように頑張るだけだな。



「ちょっと待ってくれ」


 男爵からの指名依頼の受注書類にサインし、ギルドを出ようとした俺を呼び止める者がいた。

 その声に振り向いた俺の目に映ったのは、がっしりした体格の初老の男性。


「俺はギルドマスターのロゴンだ。お前さんに確認したいことがある」


 いきなりギルドマスターに呼ばれるとか、テンプレ的だなー……なんつってまあ、今回は俺が男爵に指名依頼を請けた経緯の確認とかだろうけど。


 ということで、俺はギルドマスターに促されて奥の個室へと移動した。



 案の定、確認したいことというのは男爵との関係についてだった。

 それに付随して、魔法の指導という部分も気になったらしい。

 まあ、普通に考えて、成人したばかりの駆け出し冒険者が、貴族の子女に指導できるほどの技術と知識を持っているのは妙だからね。


「うーん……そう言われても、単に昔から研究と訓練をし続けた結果、としか説明のしようがないんですが。ギルドマスターも、私が賊を捕らえた経緯はご存知なのでは?」


 実際、手品みたいな種があるわけじゃないし、ただの実力なのだ。

 子供が強いのはおかしいと言われても、納得させる方法なんてない。


 あ、いや一つだけあるか。


「……じゃあ、お前さんの実力を見せてくれないか?」


 まあ、そういうことだよねー。



 ギルドマスターの案内で向かったのは、冒険者ギルドの地下にある、かなり広い訓練場。

 いったいどうやって作ったのか解らないが、一キロ四方くらいはある。


 昼を回った時間帯のため、訓練場を使っている者は多くない。

 おそらく大半の冒険者は朝のうちに様々な依頼を請けて、今頃は町の外で頑張っているのだろう。


「それじゃあ、賊を捕らえたときの魔法を頼む」

「わかりました」


 ギルドマスターに促され、俺は『石槍』を誰も人がいない辺りに五十本ほど生やした。

 距離としては訓練場の端から端、まあ一キロほどだ。


「おっ……」


 次は空中に待機させた水の玉から圧縮した水流を放つ『水刃』だ。

 これは射程が短めなので、百メートルほど先までに生えている石の円錐を標的として切り裂く。


「なっ」


 次は火の玉を飛ばす『火弾』

 これは視界内が射程なので、『水刃』で攻撃しなかった石柱を狙い、二十発ほど炸裂させる。


 そしてその熱風が辺りに散らばらないように、『風結界』で『火弾』の着弾した周辺、直径二百メートル程を強い旋風で覆う。

 まあ、一般的な四属性であれば、こんな感じで納得してもらえるだろう。


「に……ぃ……」


 続けると卑猥な言葉になるような驚きかたをするギルドマスターが落ち着くのを待ちつつ、俺は『石槍』で荒れた訓練場の地面を平らに均した。


 いくつも円錐の柱が生えてると邪魔になっちゃうからね。


「おいおい……低位の魔法とはいえ、これだけ連発するには最低でも超上級くらいの実力がなきゃ無理だぞ……。しかもお前、まったく魔力が減ってないな?」


 そこに気づくとは、さすがギルドマスターだ。

 きっと数多の冒険者たちを見てきた経験から、相手にどの程度の実力や余裕があるかなどを見極める眼力を持っているのだろう。


「ええ、まあ……人よりだいぶ魔力が多いので。って……」


 数人しかいなかったはずの訓練場に、いつの間にか大量の人が現れていた。

 ……もしかして一階の飲食スペースにいた冒険者が、野次馬根性を発揮して集まったのか?


 ちなみに冒険者ギルドは、絵に描いたような構造をしている。

 つまり複数の受付カウンターと依頼を貼り付ける掲示板、そして併設された酒場のような飲食スペースだ。


 昼間だというのに多くの客がいるのも、お約束とでも言うべきか。

 まあ、命をかけて戦うのが冒険者なのだから、しっかりと休みを取るのもまた仕事ということだろう。


 それはさておき、ギルドマスターだけに見せるはずだった実力の一端は、多くの冒険者にまで見られてしまった。


「ソーラ、お前、ギルドでも魔法を教える仕事をしないか?」


 ――面倒事に発展しそうだ、と考えていた俺に、ギルドマスターは予想だにしない提案をしてきた。

 男爵に指名される実力に納得し、これを逃す手はないとでも思ったのだろうか……。


 まあ、魔法を使える冒険者が増えることは、ギルドにとって大きくプラスになるのは解る。

 なにしろ取れる手段が増えて、個々の安全も確実に高まるのだから。


 しかしまあ、いつのまにかテンプレ的な展開になったり、見せるつもりのなかった実力がバレたり……したくない無双というものもあるのだと知った一幕であった。


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