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第一話 赤ちゃん無双

お久しぶりの新作です。

よろしくおねがいします!


『第一章 プロローグ』七話分は、本日連続投稿します。

 ふと気づくと、俺は宇宙空間のように光がまたたく場所にいた。

 上下も左右もわからない状況で、なんとか自分の状態を把握しようと努めた俺が理解できたことは、自身が光の玉になっていること。


 そんな状態なのだから、声も出ず体の感覚も無いのは当然と言えた。

 しかし一体全体、なぜここにいるのかも思い出せないのは不安だ。


 懊悩する俺の気持ちを知ってか知らずか、遥か彼方から光の玉が近づいてきた。

 それは俺に比べるとずっと大きなもので、近づくに連れて強烈な圧迫感を覚える。


 なんというか、存在の次元が違う――そんな感覚に陥るのだ。


「おめでとー! あなたは異世界に転生する権利を得ましたー!」


 は? 何いきなり、この人。

 今までのシリアスな空気は何だったの?

 というか、光の玉の中に女性っぽい姿があるんだけど。


「私は、とある世界を管理する者たちの一人ですよー。実はですね――」


 俺の反応そっちのけで、女性は説明を始めた。

 曰く、地球の所属する世界は増えすぎた地球人のせいで壊れかけているとか。


 そこで、まだまだ余裕のある異世界に、転移・転生しても良い、あるいは積極的に転移・転生したいという地球人を選んで送り届けているのだという。


 ――つまり俺も、そういった人々の一人と判断されて異世界転生させてくれるということらしい。

 正直、嬉しい。


 現代日本人、それも十代から二十代、あるいは三十代から四十代であれば、割と誰でも異世界転移・転生にはあこがれるものだ。

 何しろ現在は景気も良くなくて、ストレス満載な社会だからな。


 現実逃避にファンタジーな世界は最適なのだ。


「ということでですねー、あなたには記憶を持ったままで、いわゆるスキル制の異世界に転生していただきます。言葉は自然に覚えますし、転生特典もお付けしますので、ご心配なくー」


 女性はそう言い終えると、おもむろに右掌を俺に向けて突き出した。

 すると掌の前に光る渦巻きが発生し、俺はものすごい勢いでそこに吸い寄せられる。


 え? これで説明終わり? 普通ここからスキル選択とかじゃないの!?


「そういうのはありませんよー。大丈夫です、ちゃーんと有用な特典を付与してありますからー」


 心を読むな! いや、俺はしゃべれないんだから仕方ないのか。

 にしても、おまかせ設定か、不安だ……俺に合った特典だと良いんだが。


 ――そこまで考えたところで俺は渦巻きに吸い込まれ、あっさりと意識を失った。





 次に意識を取り戻したとき、俺は赤ちゃんになっていた。

 まあ、目もはっきりとは見えないし、首も座ってなくて周囲を確認する術はほとんどないから、自分が赤ちゃんだろうというのは推測だが。


 とはいえ、体が自由にならないことと、かつて俺が住んでいたマンションとは違う天井であること、そして宇宙っぽい場所であの女性にされた説明からすれば転生したことは疑いない。


 となれば、まずやることはアレだよな!


「うえーあうおーう!」


 全然はっきり発声できなかったけど問題なかったようで、俺の目の前にはぼんやりと光を放つステータスウィンドウが開いた。


【名前:ソーラ 種族:人族 レベル:1

 所持スキル:なし

 転生特典:万事習得】


 赤ちゃんだからスキルがないのは、まあ納得だな。

 特典の万事習得ってのはどういう効果があるんだろう。

 語感からすると、なんでも覚えられるって印象だけど……。


 試しに何か、やってみればいいのかな?

 ならば定番の魔力を探るのをやってみよう!

 物語によって、魔力の発生源にはいくつかのパターンがあったよなぁ。


 心臓か、丹田か、それとも特別な魔力発生器官か……。

 お、一発目に試した心臓が当たりだったようだ。

 鼓動とは別にぼんやりとした何かが放射状に動いているのが感じられる。


 テンプレ的には、これをいろいろ動かしたり体中に行き渡らせたりするんだよね。

 ということでチャレンジー。


 むむむ……!

 ………………きた! 魔力がちょっと動いた感じあったよ!


〈ピロリン!〉

〈スキル『魔力操作』を習得しました〉


 おお! いきなり幸先いいね!

 ステータスを確認したら、しっかりスキルが増えていた。

 魔法に関してはちゃんとした知識がないと怖いから、赤ちゃんの間は『魔力操作』をどんどん伸ばしていこう。



 あれから一月ほどで色んなことが判った。

 俺の家は辺境の山中にある村にあり、農家を営んでいる。

 父の名はオルガ、母の名はユリア。


 父はそこそこがっしりしていて、こげ茶色の髪と瞳。

 母は痩せていて、金髪碧眼。

 二人ともそこそこ整った容姿だと思う。


 それと、言葉もだいぶ覚えてきた。

 自然と覚えると言われてはいたけど、ちょっと不安だったのだ。

 なにしろ、俺は英語すらまともに覚えられない程度の語学力しかないのだから。


 多分、赤ちゃんならではの柔らかい脳みそのおかげだろう。

 意識自体は大人のものでも、体は年齢相応の吸収力を持っているというのはとてもありがたい。


 そして、そうであるならば幼い時期になるべく色んな経験を積んでおくべきだろう。

 転生特典もあることだし、きっと様々なスキルを習得できるはずだ。


 どうやら母は魔法が使えるらしく、光球で室内に明かりを灯したりしているから、起きているタイミングで使っていたらじっくり観察して覚えようと画策している。


 それから赤ちゃんである俺の仕事だが……。


「おぎゃあ」


 とひと泣きすれば、母が母乳を飲ませてくれたり、汚れたオシメを交換してくれたりする。

 そして、それらのことが終わればぐっすり眠り、空腹や不快感で目が覚めたら泣き……というループを続けるのだ。


 世界は俺を中心に回っている。

 これは、まさしく無双と言えるであろう。


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