エピローグ
運命神さまの神殿を出ると、大理石の柱の陰にロブラリアが立っていました。
私に気づくと、カツカツと靴音を響かせながら近寄ってきます。
「運命神様から記憶を戻してもらえたのか、レナ」
私は首を振りました。
「今日はご挨拶に来ただけなのです。あの頃の記憶はぼんやりと夢のようで、気を抜いたら忘れてしまいそうなぐらいに曖昧なのです」
「……まあ、レナがそれでいいなら。それにしても、まさかあの四波がシバの生まれ変わりとはな」
私はにっこりと笑いました。
ロブラリアは咳払いをして目を逸らせます。
「また、あいつの所へ行くのか」
「うん」
黙ってロブラリアを見つめます。
ロブラリア。いつでも私を守ってくれる、優しい子。
「レナ……女神が人間に恋をしてもロクなことには、ひゅうあ!!」
抱き付いて耳元にフッと息を吹きかけました。
真っ赤になったロブラリアに笑顔で手を振りながら、私は次元の扉を開きました。
彼のもとへと。
いつものアパートの階段の下。
最初にここを訪れたのは、単なる偶然でした。
でも、偶然なんてないのです。
運命神さまの手にかかれば。
妖精さんが封印された壺を拾うことも。
あのペンダントを拾うことも。
彼のもとへ私が訪れることも。
留守だと思って引き返そうとしたら、缶が崩れる音がしたことも。
今日は、そのお礼に行ってきたのです。
運命神さまはトボケてましたけど。
「八重樫さん……」
次元の扉をくぐると、目の前で八重樫さんが壁によりかかって待ち構えていました。
あらら、ついに次元の扉をくぐる所を見られてしまいました。
「どうせこんなことじゃないかと思ってた」
バレてたみたいです。
「すみません。騙すつもりはなかったのです……」
「悪い、幽霊とかじゃないのよね」
「はい、女神です」
「――ッ!」
色々突っ込みたそうな顔をしています。
八重樫さん、わかりやすいです。
ですが……今度はキリッと、腕を組んで仁王立ちをしました。
「あたし、ずっと前から、四波君のこと好きだったんだから」
宣戦布告です。
「私も、400年も前から、シバさんのことが好きです」
「――ッ!」
受けて立ちました。
色々突っ込みたそうな顔をしています。
「負けないんだから!」
「はい」
笑顔で答えました。
そして、笑顔で八重樫さんの気が緩んだ隙に――彼女の脇をサッと通り過ぎ、ひとあし先に階段を駆け上がります。
「ああっ! レナ! ずるい!」
早い者勝ちです。
彼の部屋の前で、私は、深呼吸をしました。
ドアのむこうで、彼が私の気配に気づいたことに、私も気づきます。
この気持ちのつながりって、何か、魔法のようなものなのでしょうか。
今日は何か、良いことがおこる気がします。
私は、玄関チャイムのボタンに指をかけました――。
-end-
こんにちは。西れらにょむにょむです。
『異世界から来た女神さまが怪しすぎる!!』これにて完結となります。
雑で拙い拙作へのお付き合い、ありがとうございました。
また、数々のコメント、応援、とても励みになりました。この場を借りて御礼申し上げますm(__)m
第一章完了時にあれだけ反省&苦労をして修正をしたものの、まだまだまだまだまだ、及第点の文章を書けるようになるまでの道のりは遠そうです。今回も多分、思い入れが多いところほど筆が薄く、全然伝わっていないところばかりなのだろうなと、その点も含めて、相変わらず雑だなぁと言うのが書き終えた感想です。精進します。
ではでは。
また、ぜひ!!




