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異世界から来た女神さまが怪しすぎる!!  作者: 西れらにょむにょむ
異世界から来た壺ちゃんが危なすぎる!!
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びっしゃびしゃだよ女神さま

 三森と知り合ったのはこの部屋へ引っ越してきた日のことだった。たまたま同じ日に三森も隣の部屋へと引っ越して来たのだ。引っ越し作業の最中、どちらからともなく声をかけ、すぐに打ち解け合った。気がつけばその日の夜には互いの引っ越しを祝って三森の部屋で乾杯をしていた。


 学年は1つ下だ。詳しいことは聞いていないのだが幾つかのバイトをかけ持ちしており、そのせいか生活は不規則で顔を合わせる機会は少ない。だが、稀にタイミングが合えばどちらかの部屋で酒を酌み交わし、遅くまでくだらない話をしている。そんな仲だった。


【青の妖精】が泣いていた件は壺ちゃんと喧嘩したと言うことで、すぐに誤解は解けた。


 さてと。次は、そもそも壺ちゃんをはじめ彼女たちは何処の誰なのか、と言う話になるのだが……。とりあえず三森なら『コスプレ』とでも言っておけば八重樫のように騙されてくれるだろう。


「コスプレ!?」

「……声が大きいよ」

「いやいやいや、四波さん。そんな嘘で騙されるワケないじゃないスか」


 通らない!

 いつもニヤケ気味の三森が真顔になっていた。


 しまった。これ以上の言い訳は考えていない。冷や汗が流れた。壺ちゃんやロブラリア、レナさんの正体は絶対に明かしたくない。万がいちにも(おおやけ)になってしまえば好奇の目に晒され、研究の対象とされ、二度とレナさんに会えなくなってしまうかも知れないのだ。


「この髪とか……目の色と言い……」


 壺ちゃんが真っ赤な瞳の視線を逸らせた。ロブラリアや【青の妖精】はともかく、この色だけは言い逃れできない。部屋の空気が固まる。


「……」

「……外人さんでしょ?」

「そーなんだよぉ、三森ぃ! 流石に見る目が違うわぁ。三人とも外人さんなんだよぉ。外人の、コスプレイャーさんなんだよぉ」

「へへへ。四波さん、俺の目は誤魔化せないっスよ」


 三森がドヤ顔をした。

 コイツがバカで良かった。


「で、そこの美人さんは……」

「ロブラリアだ」


 おぉう。三森がロブラリアに食いついたか。まぁ無理もない。ロブラリアも一応は美人だからな。一応。


「俺、三森です。あの、俺の冷蔵庫に冷えた缶ビールがあるんで、よかったら一杯やりませんか? お近づきのしるしに」

「すまぬが今は勤務中なのだ。ミツモリ」

「勤務中!?」


(おま! ロブラリア! 俺を呼ぶときは『人間』だったじゃねーかよ! なーんで三森だけ最初からミツモリなんだよ!)

(そっちか! それよりも顔を近づけるな!)

(俺なんか世界1つ滅ぼしてやっと『人間』から『シバ』に昇格したんだぞ!? 絶対納得いかねー!)

(この状況でなにを子供みたいなことを気にしている! こら! 耳に息を吹きかけるな!)


「あの、二人って……付き合ってるスか?」


 いつの間にかロブラリアを押し倒していた俺を見て三森がつぶやいた。


「「それは、ない!」」


 ロブラリアと声が揃った。


「そうスか。なんか、温泉旅行まで計画しているみたいなんでてっきり……」


 三森はテーブルに広げられていた女性誌の温泉特集を見てそう言った。八重樫が置いていった雑誌だ。いくつかの宿が付箋でマークされていた。昼間に八重樫が貼り付けたものだ。その中の1枚の付箋が俺の目を引いた。


経木知田(へきちだ)温泉。安い! 車じゃないといけない(泣』


 車……。そう言えば!


「三森、話は変わるが引っ越しの時にデカい車を運転してたよな。あれって……」

「実家の車スけど……」

「お前、温泉行きたくないか?」

「ひょっとして温泉旅行混ぜてくれるんスか? なら車出します!」

「おぉ!」


 いたじゃないか、車を出せる奴が! 正直、レナさんと壺ちゃんの宿代や往復の電車賃まで負担するのは痛いと思っていたところだ。車の方が安上がりだ。


「へへへ。それで、ロブラリアさんも行くんスよね、温泉」

「……」


 三森の期待の眼差し。ロブラリアは怪訝な顔をしていた。くそう、ロブラリアのやつ、いまにも『いや、私は行かないのだ、ミツモリ』とでも言いそうな気配だ。空気読めこの異世界人め。


「いや、私は……ふわぁッ!」


(たのむ! ロブラリア! お前がこないと三森が……)

(ばか! だから、顔が近い!)

(この前の貸し、ここで返せ、な? お前だって温泉嫌いじゃないだろ?)

(私はお前になど借りてなどいない! むしろお前こそ……)


「あー! 鬱陶しいっチャケ!」


 もつれ合う俺とロブラリアに【青の妖精】の水鉄砲が放たれた。冷たくて気持ちいい。着ていたシャツがびっしょり濡れて肌に貼り付いた。乾きはじめていたロブラリアのシャツも再び濡れて下着が透ける。おぉ、近くで見るとなかなか可愛いデザインじゃないか、と、じっくりと観察していたらロブラリアに殴られた。


「ふん、バカみたい」


 壺ちゃんが蔑んだ目で呟く。



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