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Promise  作者: タカ
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3話

優衣は窓を開けて部屋の中に風を入れる。

数分ベランダから見える景色を楽しんでいるとドアがノックされた。


「はい?」

「衛だけど入っていい?」

「大丈夫です」


優衣が断った後、衛が顔を覗かせた。

が、顔だけ見せて中に入ろうとしない。

優衣が首を傾げると衛は口を開いた。


「家で勉強する?」

「え?宿題ぐらいはしますけど」

「じゃあ、これ使って」


衛は顔を引っ込めた後、簡易テーブルを優衣の部屋に入れて布団の隣に置いた。


「これ俺が使ってたもので悪いけどまだ使えるから」

「あ、ありがとうございます」

「いや。実は俺の部屋にあっても邪魔なだけだから使ってもらえると俺もありがたい」


衛は笑みを浮かべ机を運んだ裏事情を語ってくれた。

それを聞いて優衣も笑みを浮かべる。

そこに階下から栄美の声が聞こえる。


「衛~」

「何~?」


衛は優衣の部屋を出て階段の最上段に腰掛けた。


「悪いけど優衣ちゃんの荷物運んでもらえる?」

「あぁ。荷物多い?」

「自分で運びますよ?」


衛が階段を降りてると優衣が部屋から出てきて衛に話しかけた。

衛は首を振って優衣を制した。


「いや。俺が運ぶからあんたは上で待ってな」

「でも…」

「力仕事は俺のほうが適してるだろ。ほら、さっさと戻る」


衛はそれだけ言って階段を降りていった。

優衣はとりあえず部屋に戻って衛が上がってくるのを待っていた。

ドアを開けっ放しにしてるので下から会話の内容までは聞こえないが話し声が聞こえる。


「出さん!」


急に衛の声が大きくなって階段を歩く音が聞こえた。

優衣の部屋に入ると荷物を入り口近くに置いた。


「ここに置いとくから」

「は、はい。あの…加藤先輩」

「先輩?」

「あ、私も南高なんです」

「へぇ~。見たことないけど何組?」

「一年五組です」

「なんだ、一年か。そりゃ見たことないか。で、何?」

「…何か怒ってます?大声が聞こえたんですけど…」

「あぁ、気にしなくていいよ。母さんが変なこと言っただけだから。それと俺のことは衛でいい。当然家族皆『加藤』だから衛の方が分かりやすい」


衛はそれだけ言うと残りの荷物を取りにまた部屋を出て行った。

優衣は衛が怒ってないことに安堵の表情を浮かべ荷物の整理を始めた。

すぐ衛が残りの荷物を運んできてくれた。


「ありがとうございます、衛先輩」

「いや。何か手伝えることあるか?」

「少ししか無いんで大丈夫です」

「分かった。じゃあ、俺部屋にいるから」

「はい」


衛が部屋を出て行った後優衣はまた荷物の整理を続けた。

部屋に置かれていたタンスに私服や体操服を入れ、本棚がないので教科書はとりあえず衛が持ってきた机の上に置いた。

優衣は一息ついた後、階段を降りて台所に向かった。


「何か手伝うことありますか?」


優衣は夕ご飯の支度をしていた栄美に声をかけた。

栄美は手を止めて優衣のほうを笑顔で振り返った。


「もう部屋の片付けはすんだ?」

「はい。荷物も少なかったのですぐに終わりました」

「そう。じゃあ、お皿出してくれる?そろそろお父さんも帰ってくるから」

「分かりました。…えっと、これでいいですか?」


優衣は食器棚からお皿を取り出して栄美に見せた。

栄美は優衣が持っていたお皿を見て頷いた。


「うん。それでいいわ。後…悪いけど衛呼んでくれる?」

「どうしてですか?」

「高いところにあるお皿を取りたいんだけど私達だと届かないから取ってもらいたいの」

「椅子に登れば大丈夫です。どれですか?」

「あ、優衣ちゃん。危ないわよ?」

「大丈夫ですよ」


優衣は椅子に登り腕を伸ばした。

が、それでも届かなかったから椅子の上で背伸びをした。

お皿には手が届いたが優衣はバランスを崩してしまった。

優衣は倒れる衝撃に備えて目を閉じた。

目を閉じるとすぐに何かにぶつかった。が、痛くは無かった。

優衣が恐る恐る目を開けるとすぐ目の前に衛の呆れた顔が見えた。


「はぁ~…。お前はバカか」

「なっ!」

「ったく。とりあえず立てるか?」


衛に言われて初めて優衣は衛の腕の中にいるってことに気づいた。

優衣は急いで衛の腕の中から立ち上がった。

自分の顔が赤いことに優衣は気づいたが、衛は気づいてないのかゆっくりと立ち上がった。


「もう一度言うぞ。お前はバカか」

「何でですか!」

「何無理してるんだ。俺を呼べばいいだろうが」

「届くと思ったから取ろうと思ったんです!」

「それで怪我したらどうすんだ。今入院しているおばさんに心配かけるつもりか?」

「そ、それは…」


優衣は衛の言葉に詰まった。

確かに怪我をしたら亜由美に心配をかけてしまうだろう。

優衣が黙っていると衛はため息をついて優衣の頭の上に手を置いた。


「無理に気張る必要はない。お前らしくいればいい」


それだけ言うと衛は優衣の頭の上から手を除けて栄美に向かって歩き出した。

そして、優衣を助けると同時に手に取ったお皿を栄美に渡した。


「はい。他何か取るものある?」

「じゃあ、お父さんに後何分で帰ってくるかメールで聞いてくれる?」

「了解」


衛はリビングのほうに向かった。

立ち尽くしている優衣に栄美が声をかける。


「優衣ちゃん、手伝ってくれる?」

「あ、はい!」


優衣は栄美の隣に立って手伝いを続けた。

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