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Promise  作者: タカ
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2話

栄美の車に乗り込んだ二人は優衣の住んでるマンションに向かった。

優衣は家から教科書や体操服などの学校で使用するもの、そして私服をダンボールに積めた。

ダンボール二箱に荷物を積め、二人はマンションを後にした。

栄美の家は優衣のマンションから車で30分の距離にあった。

栄美の家は一軒家で駐車場と庭付きだった。

玄関に入る前に優衣が表札を見ると『加藤』と書いてある。

恐らくこれが栄美の苗字だろう。

優衣と栄美はそれぞれダンボールを一つずつ持って玄関に上がる。


「おじゃまします」

「違うわよ」

「え?」

「今度からはただいまね」

「…はい!」


優衣が玄関に上がると栄美が笑顔で声をかけてきた。


「荷物はとりあえず玄関に置いておきましょう。後で部屋に運ぶから」

「あ、はい。分かりました」


優衣のマンションから運び出した荷物をとりあえず玄関に置いて優衣と栄美はリビングに座った。

二人の前には栄美が入れたコーヒーが置かれている。


「そういえば優衣ちゃん高校はどこに行ってるの?」

「南です」

「あら。私の息子もそこに通ってるのよ」

「…息子さんがいらっしゃるんですか?」

「そういえば言ってなかったわね。一人息子がいるの。今高校三年生だから優衣ちゃんの二つ上ね」

「…すいません。加藤先輩は知らないです」

「気にしなくていいわよ。まだ入学して間もないんだから」


それからリビングで話をしていると玄関のほうから音が聞こえた。

どうやら栄美の息子が帰ってきたようだ。

その証拠に玄関から男の声が聞こえる。


「ただいま~。母さん、腹減った。あれ?誰か来てんの?」


男がこちらに歩いてくる音が聞こえる。

優衣がリビングの入り口に顔を向けると同時に男が入ってきた。

男は優衣の姿を見ると驚いた顔をして栄美に顔を向けた。


「…母さん、この子誰?」

「まぁ紹介は後でするからここに座りなさい。優衣ちゃん、この子が息子の衛よ」

「は、はじめまして。伊藤優衣です」

「はじめまして、衛だ。で、この子は?」


衛は座ると事情を説明するように栄美に促した。

栄美は笑顔で衛に答える。


「あなたの従姉妹よ」

「…はいはい。俺に従姉妹なんかいないだろうが」

「それがいたのよ」

「悪い。意味が分からないから一から説明してくれるか?」


衛はまだ事情がつかめていないようだ。

確かにいきなり従姉妹がいると言われて『はい、そうですか』と納得できるわけがない。

栄美は頷いてから口を開いた。


「衛には言ってないけど私には妹がいるの。あなたが生まれてすぐ妹は家を出たわ」

「家を出たって何で?祖父ちゃんと喧嘩でもしたのか?」

「それに近いわ。妹が高校生のときに赤ちゃんができたの」

「それがこの子って訳?」

「ええ。お祖父ちゃんは反対してね、それで妹は相手と駆け落ちしたの」

「…ふぅ~ん。あまり信じれないけど分かった。で、その駆け落ちした妹さんとどこで会ったわけ?」

「病院よ」

「病院?」

「ええ。知り合いが入院してる病院に外来で来てたの」

「それにしてもよく分かったね。だって俺が生まれたときってことは約18年間会ってないってことだろ?」

「う~ん、直感っていう奴?」

「…それで人違いだったら笑い者だけどな」


衛はそういって意地悪な笑みを浮かべ立ち上がった。

栄美が衛に話しかける。


「どこ行くの?」

「自分の部屋。二人でごゆっくりどうぞ」

「なら優衣ちゃんを部屋に案内してあげて」

「…部屋?」

「そう。あなたの隣の部屋片付けてあるから」

「意味が分からん。何で部屋に案内しないといけないわけ?」

「ここで暮らすからよ」

「…さてと、俺は一眠りするかな」


衛はそれだけ言って歩き出そうとした。

が、栄美が衛の腕を掴んで引き止めた。


「だから、案内しなさいって言ってるでしょ」

「何で暮らすことになったのか説明してくれるよな?」

「優衣ちゃんのお母さんが入院してるの。さっき言ったでしょ。外来で来てたって」

「…そんなに悪いの?」

「ううん。少しだけ入院したら大丈夫だって言ってたわ」

「おじさんは?」

「…今海外出張に行ってます」


衛と栄美の会話に優衣が申し訳なさそうに口を開いた。

衛は優衣に視線を向ける。


「自分の妻が入院してるのに?」

「お母さんが入院したのはお父さんが海外出張に行った後なんです」

「にしても連絡したら帰ってくるだろ」

「連絡してないんです…」

「連絡してない?なんで?」

「私は連絡しようとしたんですけどお母さんが止めたんです。今お父さんは大事な仕事に携わってるんで邪魔をしたくないって言って…」


優衣は顔を俯かせた。

数秒沈黙があった後、衛のため息が聞こえて歩き出したのだろう足音が聞こえる。

やはり反対なのだろうかと優衣が思っていると、そこに衛が声をかけてきた。


「何してんの?」

「…え?」

「行くよ」


衛は入り口に立って優衣に手招きをしている。

優衣が戸惑って栄美のほうを向くと栄美は笑みを浮かべて頷いている。

優衣はゆっくりと衛に近づく。


「そこがトイレ。で、そっちが洗面所な。まぁ、後で家の中見て。部屋は上になるから」


衛は見える範囲だけ指を差しながら説明して階段のほうに歩き出した。

優衣も衛の後ろについて歩く。

二階にはドアが四つあって、一つはトイレということを衛が説明してくれた。


「これはトイレ。で、ここがあんたの部屋になるから」


衛は真ん中の部屋に通じるドアを開け中に入った。

優衣も衛に続けて部屋に入る。

部屋の中には小さな衣装ダンスが置いてあり、中央には布団が畳んである。


「右隣は父さんと母さんの寝室で逆が俺の部屋になってる。何かあったら声かけて」

「あ、はい」


衛の言葉に優衣が頷いたのを確認して衛は着替えるために部屋を出た。

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