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Promise  作者: タカ
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15話

二階に上がった衛は優衣の部屋の前まで行くとドアをノックした。

が、返事がなかったのでもう一度ノックをしてみるがやはり返事はない。

数秒迷ったが衛はドアを開けた。

部屋の中は電気がついておらず真っ暗だったが壁によりかかりクッションを抱きかかえて座っている優衣の姿は分かった。

衛は一つため息をついて優衣の隣に腰を下ろす。

優衣は一瞬反応したがクッションをさらに強く抱きしめた。


「…何か用ですか?」

「何がそんなに気に入らないんだ?おばさんが退院できることが嬉しくないのか?」

「そんなことあるわけないじゃないですか!」

「なら何でだよ?」

「…何でもないです」

「俺は嬉しいけどなぁ。おばさんが退院するってことはお前もここを出て行くってことだろ?」


優衣はその一言にショックを受けた。

衛本人の口から優衣が出て行くことが嬉しいと言われたからだ。

ショックを受けた優衣は泣きそうになった。

衛はそれを見ると笑顔を浮かべた。


「ということは、やっとこういうことができるから」

「え?」


優衣は今の状況が掴めなかった。

確かにさっき衛は優衣が出て行くことが嬉しいと言った。

それは嫌われているからだと思っていた。

なのに…今衛に抱きしめられている。


「先輩!?」

「ん?」

「どうして…」

「どうしてってお前のことが好きだからに決まってるだろ」

「先輩私のこと嫌いじゃないんですか!?」

「はぁ?」


衛は優衣を抱きしめている腕の力を緩める。

そして、優衣の顔をジッと見詰める。


「俺そんなこと言ったっけ?」

「だって…私がここを出て行くことが嬉しいんでしょ?」

「あ~、悪い。意地悪な言い方をわざとしたから。俺が嬉しかったのはさっきも言ったとおりお前をこうして抱きしめれるからだ」

「どういうことですか?」

「お前がこの家に初めてきたときに母さんに言われたんだ。ここにいる間はお前に手は出すなって。最初は俺もそんなつもりはなかった。だって、いきなり知らない奴と一緒に暮らすのにそんなこと考えれるかってな。けど、一緒に暮らしていくうちに俺はお前のことが好きになった。だから、嬉しいんだよ。もう我慢しなくていいんだから」

「でも…」

「ん?まだ何かある?」

「私のこと妹のように扱ってなかったじゃないですか…」

「あぁ、そうしないと本当に手を出しそうだったから。ていうかなぁ、お前無防備すぎなんだよ!」

「え?そうですか?」


優衣は衛の言葉で自分の行動を思い返した。

だが、どこが無防備だったのか分からなかった。


「どこがですか?」

「…いや、いい。もう済んだ事だし。ま、やっぱり好きな奴と一緒にいて触れないっていうのはきつかったけどこれからは我慢しねぇから」


衛はそれだけ言って自分の顔を優衣の顔に近づける。

優衣は衛に何をされているのか分からなかった。

ただ、目の前に衛の顔があって、そして自分の唇と衛の唇が触れ合っていることだけが分かった。

衛は唇を離すと優衣に意地悪そうな笑顔を見せた。


「こういうときは目を瞑るものですよ?」


その言葉に優衣は顔を真っ赤にして衛の胸を強く押す。

だが、衛は笑いながら優衣をまた抱きしめた。

優衣は衛の胸の中で暴れるが、衛の力には適わない。


「ちょ、ちょっと!離してくださいよ!」

「嫌に決まってるだろう。やっと、こうやって優衣を抱きしめれるんだから」

「なっ!何で急に名前を呼ぶんですか!?今まで呼んだことないじゃないですか!」

「ん~?名前で呼ぶと俺の理性が抑えられないような気がするから、な」


衛はまた優衣に顔を近づけるが、今度は優衣が手で衛の顔を押さえる。

衛は優衣を睨んだ。


「この手邪魔なんだけど」

「だって!先輩、ちゃんと言ってくれないんだもん!」

「…何を?」

「何をって…」


優衣は恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯かせる。

衛は腕の中の優衣を見て何を言ってないのかを考える。

少し考えると一つの答えが思い浮かんだ。

衛は優衣を抱きしめている腕の力を緩めると優衣の顔を上げさせる。


「…伊藤優衣さん。好きです、俺と付き合ってください」

「…キスをする前に言ってくださいよ」

「悪い悪い。で?お前が言いたかったことはこれだったのか?」

「…はい」

「じゃあ、今度はお前の番な」

「え?」

「ほら、俺はお前のことが好きだって言った。でも、優衣が俺をどう思ってるのか聞いてないぞ」

「それぐらい察してください…」

「俺もお前の口からちゃんと言葉で聞きたいんだよ」

「…好きです」

「よくできました」


優衣の口から小さいが確かに好きだという言葉が聞こえた。

衛はまた優衣に顔を近づける。

優衣も目を瞑って衛が唇をくっつけるのを待つ。

数秒唇をつけ、顔を離すとまた優衣は顔を真っ赤にしている。

それを見て衛は笑顔になった。


「うわ。今時こんなに顔を真っ赤にする奴とかいるんだ」

「…いいじゃないですか」

「さて、後何回キスしたら赤くならなくて済むかなぁ」

「…先輩、昨日までと性格が変わってますよ」

「それは自覚してる。根本的に俺好きな奴はいじめるタイプだから覚悟して」

「え!?」

「これはお前のことが好きになって初めて気づいたんだよ」

「小さい頃からじゃないんですか?」

「いいや。俺小さい頃好きな子がいてもちょっかいかけたりしたことないぞ。陽子と付き合っててもそんなことはしなかった。けど、お前はいろんな表情を見せるからいろんなことがしたいんだ。だから、今みたいにお前が嫌なこともしていくから」

「…私好きになる人間違えたかなぁ」

「そんなこと言われてもお前のこと手放すつもりはないよ?これだけ面白い奴いないだろうし」

「私はおもちゃですか!?」

「いいや、俺の大事な彼女だよ。…大切にするから」

「…はい」


衛と優衣はもう一度暗闇の中で唇を合わせた。

ちなみに当時の会話はこんな感じです。

※3話で優衣の荷物を衛が運ぶ際


衛:母さん、あいつの荷物ってこれだろ?


 玄関に置いてある荷物に手をかけながら確認する衛


栄美:そうよ。…ねぇ、衛

衛:何その満面の笑み…

栄美:優衣ちゃんっていい子よね~

衛:いや、俺まだまともに話してないんだけど…

栄美:とりあえずとてもいい子なのよ!

衛:…そうですか。とりあえず上に持っていくよ

栄美:あんたいい?私と約束しなさい!

衛:…何を?

栄美:優衣ちゃんが家にいる間、絶対に変な真似しちゃ駄目よ!手を出したりしたら許さないからね

衛:出さん!



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