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Promise  作者: タカ
14/17

13話

次の日。

優衣が学校に着くとすでに美樹と真理、それに香が学校に来ていた。

優衣はカバンを机に置くと三人のところに向かう。


「おはよう」

「あ、おはよう」

「おはよう、優衣」

「…」


優衣が挨拶をすると美樹・真理は返してくれたが香は優衣の顔を見てどこかへ行ってしまった。

優衣は香の後姿を見ながら美樹達に話しかける。


「もしかして邪魔した?」

「え?ううん、普通の世間話してただけだよ。ねぇ、真理?」

「うん。香どうしたんだろ…」


香の態度に心当たりがない三人は不思議に思った。

それから優衣が香に話しかけても香は返事をしなかった。

昼休みに食事を取り終わるとどこかに行こうとした香に優衣は腕を掴んで話しかける。


「ねぇ!私何かした!?どうして無視するの!?」


香は優衣の腕を振り払って数歩歩くと振り返って一言だけ言葉にした。


「…裏切り者」


それだけ言うと香はどこかへ行ってしまった。

呆然と立っている優衣に美樹達が近づいてきて声をかける。


「優衣…?」

「香に何か言われたの?」

「…裏切り者だって言われた」

「裏切り者?」

「と、とりあえずどこかに行こう。ここでする話じゃなさそうだし」


真理の言葉に優衣と美樹は頷いた。

三人は特別教室に移動して話を続けた。


「香、昨日までは普通だったよね?」

「うん、私も話したもん」

「じゃあ…昨日の放課後から今日の朝にかけてよね」

「香にとって裏切りって…。あ!優衣、昨日加藤先輩と買い物に行ったんだよね?」

「え?う、うん」

「それを香見てたんじゃない?優衣と加藤先輩が二人で買い物してるのを見てたからあの態度じゃないのかな」

「でも裏切りってどういうこと?」

「それは分からないけど…」

「どうすればいいのかな…。あ、私今日先生に呼ばれてるんだった。ごめん、ちょっと行ってくるね」


優衣が立ち上がって教室を出て行くと美樹と真理は顔を見合わせて頷いた。

そして、二人も立ち上がって特別教室を出て行った。

その日の放課後。

優衣が帰り支度をしていると美樹が一人で近づいてきた。


「ゆ~い、今日って何かある?」

「え?特になにもないけどどうかしたの?」

「ちょっといい?」

「いいけどどこ行くの?」

「内緒」


美樹は優衣に笑みを浮かべるとどこかへ歩きだした。

慌てて優衣も美樹の後ろをついていく。

数分歩き、美樹がある特別教室の中に入っていくので優衣も中に入ると香と真理が立っていた。

香は優衣の顔を見ると顔をしかめ、優衣は状況が掴めず首をかしげた。


「美樹?」

「あともう一人来るからそれまで待ってて」


美樹の言葉に優衣は頷いた。

教室内に異様な空気が流れるがドアの音がそれを破り、ある男が入ってきた。


「悪い、遅れた」

「…衛先輩?」


特別教室に入ってきたのは衛だった。

衛は教室内の机に座ると優衣に顔を向ける。


「なんか大変なことになってるようだからちょっと弁護をしにきた」

「弁護…ですか?」

「そこの二人に聞いた。その子が俺とお前のことをなんか誤解してるみたいだって」


衛は香の顔を見て口を開く。


「俺とこいつは従兄妹だ。ただ、俺が学校の奴には言うなって口止めしてたんだ」

「え?」


優衣は衛の言葉に反応してしまった。

そんなことを言われた覚えはない…

美樹が優衣の隣に立って香にばれないように耳打ちをする。


「話をあわせて」


優衣も香にばれないように頷く。

二人をよそに衛と香の会話は続く。


「どういう事情かは分からないけど喧嘩してるらしくて、俺とそいつの関係を言えば大丈夫だってこの子達に聞いた」

「…だったらどうして美樹達は加藤先輩と優衣が従兄妹って知ってるんですか?」

「君と一緒で、町で二人で歩いてると会ったんだよ。直接聞かれたから仕方なく教えて口止めしてた」

「どうして口止めを…」

「あまり親戚が通ってるって言いたくなかっただけだ。別に特別な理由なんてない。…さて、他に聞くことは?」

「…ないです。じゃあ、先輩と優衣は付き合ってるわけじゃないんですよね?」

「あぁ、そういうわけじゃない」

「…優衣、ごめん。勝手に誤解して勝手に無視して…」

「ううん、大丈夫だよ。私のほうこそ香に黙っててゴメンね」

「で、そろそろ部活が始まるけど大丈夫なのか?全員帰宅部?」


衛の言葉に香と真理は反射的に時計に視線を向ける。


「あ~、大変!」

「すいません、私行きます!」

「あ、真理!私も…。優衣、また明日ね」

「うん、部活頑張ってね!」

「…うん」


香と真理が教室を走って出て行く。

二人が出て行ったのを確認して美樹が衛に声をかける。


「加藤先輩、ありがとうございました」

「いや、気にしなくていい。さて、俺は帰るか。じゃあな」


衛は教室を出るときに優衣に顔を向ける。

が、何も言わずにそのまま外に出て行く。

優衣は美樹に近づいて声をかける。


「美樹と真理が…?」

「うん。二人に仲直りしてもらいたくて。加藤先輩にお願いしたら放課後に優衣と香をここに連れて来いって言われた。それと、話をあわせるようにって」

「…ありがとう」

「いいよ。だって私達友達でしょ?」

「うん!」


優衣と美樹は顔を見合わせて笑みを浮かべた。

そして、二人で特別教室を出て行った。

その日の夜。

風呂から上がった優衣は少し悩んだ後衛の部屋のドアをノックする。


「はい?」

「優衣です」

「開いてるから入ってきていいよ」


優衣がドアを開けると衛はベッドに横になってマンガを読んでいた。

マンガから視線を外さずに衛は優衣に話しかける。


「どうした?」

「今日はありがとうございました」

「…あぁ、そんなの気にしなくていいよ。最初は驚いたけど」

「え?」


衛はマンガを読むのをやめ、体を起こす。

そして、優衣に顔を向ける。


「お前の友達が昼休みにいきなり俺の教室に来たんだよ。何事かとおもったけど、事情を聞いたらさすがに黙ってるわけにもいかないから放課後に二人を連れ出してくれって頼んだ」

「そうなんですか…」

「あぁ。…いい友達だな」

「はい…」


優衣は衛の言葉を聞くと、衛に向けて笑みを浮かべて頷いた。

衛はまた横になってマンガを読み始めた。

優衣は衛に頭を下げて部屋を出て行く。

ドアが閉まるのを確認して衛は一つため息をつき、呟いた。


「はぁ…、俺持つかな」


衛の呟きに答える人は誰もいなかった。

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